第2節 都市防災拠点としての港湾の整備 |
このため、今回の震災においても、港湾は、陸上交通手段が麻痺した被災地おける海側の交通路として大いに活用され、また、被災地域への緊急・援助物資の保管・供給基地、火災の延焼防護地、付近住民の避難用地、被災者用の仮設住宅の建設用地、瓦礫等の処分地等として機能し、都市の防災拠点として大きな役割を果たした。
したがって、都市の防災性を高めるうえでは、こうした港湾のもつ特性を活かして、震災直後の災害応急対策、さらには、被災した市民生活や経済社会活動の復旧・復興にあたっても幅広く貢献できるよう、岸壁だけではなく背後用地等ともー体となった空間として機能する防災拠点等を新たに計画し、整備を図ることが有効である〔1−2−7図〕。
この防災拠点は、所在地域が被災した場合だけでなく、他の地域が被災した場合には、他の被災地向けの緊急物資の集配、仕分け、搬出等を行う支援拠点としての役割も果たせるものと考えられる。
阪神・淡路大震災による港湾被害の甚大さにかんがみ、前述の 「地震に強い港湾のあり方に関する検討調査委員会」 により、個々の港湾施設の耐震性だけではなく、港湾全体としての地震への対応のあり方に関しても、大規模な震災時にも地域経済活動等を維持できる港湾の整備、港湾全体のシステムとしての防災性の向上など、幅広く「地震に強い港湾」の整備について検討が行われた。運輸省では、これを踏まえ、重要港湾等において、震災時に防火等の機能を合わせ持つように植栽等の選定・配置に配慮した避難地としての緑地(避難緑地)を整備していくこととし、さらに概ね拠点港においては、避難緑地等から構成される多目的に利用可能なオープンスぺース、これに隣接若しくは近接する耐震強化岸壁及び背後地域との輸送ルートを確保するとともに、併せて緊急物資の保管施設、通信施設等を必要に応じて備えた防災拠点を整備していくこととしている〔1−2−8図〕。