平成7年度 運輸白書

第2章 震災対策の強化
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第4節 震災時の体制の強化 |
1 防災計画の見直し
2 情報の収集及び連絡
3 被災者の救援活動及び緊急輸送
4 代替輸送
- 1 防災計画の見直し
- 今回の震災を踏まえ、都市型災害への対応、高齢者・障害者等災害弱者への配慮、情報通信ネットワークの耐災害性の向上を含めた防災対策のより一層の充実・強化を図るため、7月18日に、災害対策基本法に基づく防災基本計画が改訂された。これを踏まえて、運輸省においては、今回の震災における経験を活かし、ハード・ソフト両面で災害に強い交通システムの整備、運輸分野での災害応急対策や交通関連施設の復旧の迅速な実施を図る観点から、防災業務計画の改訂を行う。また、自治体においても、今回の震災を踏まえて地域防災計画の改訂が進められているが、改訂にあたっては、国と十分な意思疎通を図り、被災者、災害対策要員、緊急物資、復旧物資等の輸送を迅速かつ確実に行うことができるものとすることが重要で、この点について運輸省としてできる限りの協力を行っていく。
- 2 情報の収集及び連絡
- 震災対策を講ずるうえで、発生した地震の震源地、震度、余震の有無、あるいは津波についての予警報などの情報を迅速に国民や関係行政機関等に伝達・連絡することの重要性は今回の震災においても強く認識された。気象庁では、観測、予報・警報等の発表のため常時1日24時間の勤務体制をとっており、大きな地震が発生した場合においては、職員の非常参集を行い、迅速かつ正確な情報の連絡を行える体制をとっている。また、マスメディアに協力を求めて、入手した情報を直ちに発表するとともに、全国の気象官署から予警報一斉伝達装置〔1−2−12図〕を通じて国や地方公共団体等の防災関係機関に提供しているが、今回の震災を踏まえ、震度5以上の地震、津波警報などの重大な災害情報について、官邸等に直接速報を行えるよう連絡体制の強化を図った〔1−2−13図〕。
また、海上保安庁では、地震、津波等による災害が発生した場合、指令により直ちに巡視船艇・航空機を活用して被害状況の調査や情報の収集を行う体制をとっているが、今回の震災を踏まえ、震度5以上の地震及び津波警報発令時においては、巡視船艇、航空機による情報収集を自動的に行う体制の整備を図った。
加えて、今回の震災では、画像による被災現場の情報の伝達が、被害状況を的確に把握し、救援活動や二次災害の防止策を実施する上で有効であることが認識された。そのため、海上保安庁では、災害現場の状況を官邸等に早期に伝達し、適切な対応が行えるよう 7年度第1次補正予算により衛星を利用したヘリコプター撮影画像伝送システムの整備を行うこととしている〔1−2−14図〕。
さらに、今回の震災において、政府内における円滑な意思疎通と省庁間にまたがる防災体制の有機的連携を図ることの重要性が認識されたことにかんがみ、今後、大地震の発生に際して、海上保安庁及び気象庁の幹部は、その他の震災に関係の深い省庁等の幹部とともに緊急に官邸に参集し、内閣としての初動措置を始動するため、情報の集約を行うこととしている。
- 3 被災者の救援活動及び緊急輸送
- (1) 災害への迅速な対応が可能な巡視船等の建造
- 海上保安庁では、災害発生時に備え、24時間の当直体制をとり、常時緊急対応ができるよう巡視船艇・航空機を全国的に配備している。なお、東海地震等の大規模地震の発生を念頭に置いた職員の非常参集、災害対策本部の設置、船艇・航空機の動員等の具体的な応急対策の計画の作成を行っている。
大規模な災害においては、数多くの負傷者や住居を失った被災者が発生することにかんがみ、海上保安庁においては被災者救援のための物資の保管や提供、応急医療の実施や宿泊を可能とする設備を有し、また、災害に的確に対応するための情報処理、指揮機能や災害対策本部設営機能等を備えた大型巡視船(災害対応型)を1隻配備(9年度)するとともに〔1−2−15図〕、消防機能、物資輸送機能を強化し、夜間や水中における調査や捜索を可能とする赤外線捜索監視装置や海中捜索装置等を備えた大型巡視艇を6隻配備(7年度)し、さらに救援物資の輸送、被災状況の調査等の体制の強化にも資する大型巡視艇1隻(8年度)、小型巡視艇等16隻(7年度〜8年度)を配備する。
また、負傷者の緊急輸送及び緊急援助物資の迅速な輸送に対応可能な中型ヘリコプターを2機配備(9年度)するとともに、救援物資の輸送能力等に優れた中型飛行機を1機(9年度)、機動性及び操縦性に優れ早期調査能力を有する小型ヘリコプターについては3機配備(7年度)することとしている。
なお、地震予知調査、海底火山噴火予知調査等の体制を強化するため、大型測量船を1隻配備(9年度)することとしている。
- (2) ヘリコプターによる緊急輸送の確保
- 鉄道、港湾、道路等が被災し、被災地の交通手段が麻痺した場合、医療品、食料品等の緊急物資の輸送や負傷者の搬送手段として、ヘリコプターの活用が有効であり、今回の震災においても、その重要性が改めて認識された。このため、自治体が災害時における臨時へリポ一トの候補地をあらかじめ指定する際には、運輸省として専門的なアドバイスを行うなど積極的に協力を行っていく。
- 4 代替輸送
- 大規模災害の発生時において、運輸関連施設の損壊による人流・物流の途絶は、被災地域における救援・復旧活動のみならず我が国全体の国民生活や産業活動に大きな影響を与えるおそれがある。このため、運輸省では、今回の阪神・淡路大震災による交通機関への影響及び旅客・貨物代替輸送対策の状況などについての問題点を整理するとともに、今後大規模災害が発生した場合を想定し、既存の幹線交通網の活用方策、バス輸送と鉄道輸送、トラック輸送と海上輸送等の輸送モード間の連携方策等について、多重性の確保という観点から検討を行うこととしている。
特に、海上輸送は、陸上輸送機関が機能を喪失したときの代替輸送機関として有効であることから、陸上輸送と海上輸送間の接続性の向上を図るため、フェリーターミナルについて、各種のフェリー(自動車輸送の代替輸送手段の中心となる。)が共通して利用できるよう、着岸構造と乗降形式の汎用性の向上を図るための検討を行うこととしている。

平成7年度

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