平成7年度 運輸白書

第1章 平成6年度の運輸の概況と最近の動向
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第1章 平成6年度の運輸の概況と最近の動向 |
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第1節 一般経済の動向と運輸活動 |
1 旅客輸送の動向
2 貨物輸送の動向
3 輸送指数の動向
4 最近の輸送動向(7年4月〜8月の実績)
5 施設整備の動向
- 1 旅客輸送の動向
- (1) 国内輸送
- (ア) 概況
- (景気の緩やかな回復により国内旅客輸送も回復)
平成6年度の我が国経済は、個人消費の緩やかな回復や住宅建設の増加などはあったものの、民間設備投資は減少し、急激な円高や阪神・淡路大震災などの影響もあり、実質経済成長率はGDP(国内総生産)で0.5%(5年度は0.2%)となった。
旅客輸送の動向に影響が大きいとされる民間最終消費支出は1.5%増(5年度は1.7%増)と回復基調にある。家計支出をみると、交通費(公共輸送機関関係)は2.5%減(5年度は2.8%減)と減少が続き、自動車等関係費(自家用車関係)は3.1%増(5年度は3.4
%増)と伸び続けている〔2−1−1図〕。
このように個人消費が回復基調となる中で、6年度の国内旅客輸送も緩やかな回復を示し、総輸送人員が832億人、対前年度比(以下同じ。)1.1%増、総輸送人キロが1兆3,674億人キロ、0.9%増となった(阪神・淡路大震災の影響により、自動車輸送統計の調査結果は平成7年1月〜3月の兵庫県の数値(営業用バス等を除く。)を除いたものとなっているため、ここでは除かれた部分を含めて推計した全国値を使用した。以下同じ。)〔2−1−2表〕。
輸送量分担率は、航空、自家用乗用車、軽自動車等が拡大し、この他は縮小または横ばいとなった。営業用輸送機関のシェアは40.4%、0.7ポイント減となり、低下傾向が続いた〔2−1−3図〕。
- (イ) 輸送機関別の輸送動向
- (鉄道は震災の影響が大きく、JRは12年ぶりの減少)
JR(旅客会社)は、震災の影響などにより、輸送人員0.3%減、輸送人キロ2.3%減(5年度はそれぞれ1.0%増、0.2%増)となり、両者ともに昭和57年(当時は国鉄)以来12年ぶりの減少となった。特に、東海道・山陽新幹線の一部の区間が地震直後不通となったことなどにより、輸送人キロの減少が大きかった。
定期旅客についてみると、新幹線定期旅客の輸送人キロが震災にもかかわらず8.1%増と増加が続いており、JR全体でも輸送人員0.3%増、輸送人キロ0.8%増、平均輸送距離も0.6%長くなり、通勤通学の長距離化傾向は続いている。一方、定期外旅客は、震災の影響などが大きく、輸送人員1.1%減、輸送人キロ4.6%減となり、平均輸送距離は3.5%短くなった〔2−1−4図〕。
民鉄(JR(旅客会社)を除く。)も、震災の影響などにより、輸送人員1.0%減、輸送人キロ0.5%減となった。このうち、定期旅客は、輸送人員1.7%減、輸送人キロ1.1%減、定期外旅客は、輸送人員0.1%増、輸送人キロ0.6%増となり、前年度と同様に、定期が減少し、定期外が増加する傾向が続いた。業態別でみると、大手民鉄(15社)は輸送人員1.1%減、輸送人キロ0.7%減と減少を続け、地下鉄は輸送人員0.8%減、輸送人キロ横ばい、地方中小民鉄も輸送人員1.2%減、輸送人キロ横ばい、各業態とも輸送人員が減少となった。
(自動車輸送は引き続き営業用が減少、自家用が増加)
自動車のうち営業用自動車(バス、ハイヤー・タクシー)は、輸送人員3.6%減、輸送人キロ2.4%減と減少が続き、自家用自動車は、輸送人員2.9%増、輸送人キロ2.0%増と増加を続けた。
(減少を続けるバス輸送)
営業用バスは輸送人員4.0%減、輸送人キロ1.9%減、自家用バスは輸送人員6.8%減、輸送人キロ5.7%減となり、ともに減少が続いた。
営業用バスのうち、乗合バスは、輸送人員4.2%減、輸送人キロ3.7%減と減少が続いた〔2−1−5図〕。貸切バスは、震災による代替輸送などもあったが、輸送人員0.2%増、輸送人キロ0.5%減と低調であった。
(ハイヤー・タクシーも減少続く)
営業用乗用車(ハイヤー・タクシー)も減少を続け、輸送人員2.9%減、輸送人キロ5.0%減となった。実働率(実働延日車/実在延日車×100)は横ばいであったが、実車率(実車キロ/走行キロ×100)は旅客需要の減少が止まらないため低下傾向が続いた〔2−1−6図〕。
(自家用乗用車は好調に増加)
自家用乗用車は、猛暑の夏場に伸びが大きかったことなどにより、輸送人員3.5%増、輸送人キロ2.4%増と好調に増加した。保有車両数は3.4%増(5年度は3.6%増)と伸び率が少しづつ低下を続けているものの、稼働状況を表す実働率は70.0%(5年度は69.8%)と僅かながら上昇した〔2−1−7図〕。
(関西国際空港開港などにより、航空は大幅に増加)
航空は、輸送人員7.1%増(幹線4.9%増、ローカル線8.4%増)、輸送人キロ7.3%増(幹線5.1%増、ローカル線9.0%増)となり、関西国際空港の開港や震災による臨時便運行などにより大幅に伸びた。幹線は、輸送人員、輸送人キロとも前年度の減少から増加に転じ、ローカル線も、前年度までの伸び率の低下傾向が止まり、大きく増加した。ただし、幹線、ローカル線とも輸送量の伸びが輸送力の伸びを下回っているために座席利用率の低下が続いており、6年度は61.2%(5年度は61.7%)と0.5ポイント低下した〔2−1−8図〕。
(旅客船は事業者数が減少)
旅客船(一般旅客定期航路、特定旅客定期航路及び旅客不定期航路の合計)は、増加が続いていた事業者数、航路数がともに減少したことに加え、震災の影響もあり、 輸送人員4.1%減、輸送人キロ1.9%減となった。
- (2) 国際輸送
- (海外旅行者数は大幅に伸び、1,300万人を突破)
平成6年(暦年)における出国日本人数は、対前年比(以下同じ。)13.8%増(5年は1.2%増)の1,358万人と大幅に伸びて、3年連続で史上最高を更新した。景気の緩やかな回復や円高による海外滞在費等の低下などのため、5年7月以降は毎月、対前年での増加を続けており、6年9月の関西国際空港開港も影響して好調な推移となった。
出国日本人の旅行目的別シェアをみると、観光が全体の83.2%を占め、前年(83.4%)とほぼ同じであった。
男女別では、男性は11.7%増、女性は16.5%増となっており、男女別シェアは、男性が55.6%、女性が44.4%(5年は、それぞれ56.6%43.4%)と女性のシェアの拡大傾向が続いている〔2−1−9図〕。
主要旅行先別では、アジア州が623万人で全体の45.9%(0.5ポイント増)を占め、次いで北アメリカ州が432万人で31.8%(0.2ポイント減)、ヨーロッパ州が166万人で12.3%(0.3ポイント増)の順となり、近年では、ヨーロッパ州はシェア拡大傾向、北アメリカ州は縮小頃向にある〔2−1−10図〕。個々の国・地域のシェアは、アメリカ合衆国の29.6%を筆頭に韓国11.4%、香港7.1%、以下、中国、台湾、シンガポール、オーストラリアの順となった。
(外国人観光客の減少続く)
6年の入国外客数は、上半期は1.3%減となったが、下半期は関西国際空港の開港などにより4.6%増となり、年間で1.7%増の347万人となった。前年(4.8%減)に比べると増加に転じたものの、3年以降は一進一退の低調な推移となっている。このうち、観光客は全体の55.2%の192万人で、円高の影響もあり0.5%減(5年は8.5%減)と減少が続いた。
州別にみると、アジア州が214万人で全体の61.7%を占め、次いで北アメリカ州が62万人で17.8%、ヨーロッパ州が53万人で15.2%の順となった〔2−1−11図〕。国籍別では、入国外客が最も多いのは韓国で92万人、そのうち観光客が最も多いのは台湾で56万人なっている。
- 2 貨物輸送の動向
- (1) 国内輸送
- (ア) 概況
- (トン数、トンキロとも3年ぶりに増加した国内貨物輸送)
6年度の実質GDP(0.5%増)を構成する経済指標のうち貨物輸送の動向に影響の大きな指標についてみると、民間企業設備投資は3.5%減(5年度は10.5%減)と下げ幅は減少し、民間最終消費支出は1.5%増(5年度は1.7%増)、公的固定資本形成は1.0%減(5年度は12.6%増)となった。
このような状況のなかで、6年度の国内貨物輸送は、総輸送トン数で65億70万トン、対前年度比(以下同じ。)1.1%増(5年度は4.4%減)、総輸送トンキロで5,475億トンキロ、2.2%増(5年度は3.8%減)とトン数、トンキロとも3年ぶりに増加に転じた(阪神・淡路大震災の影響により、自動車輸送統計の調査結果は平成7年1月〜3月の兵庫県の数値を除いたものとなっているため、ここでは除かれた部分を含めて推計した全国値を使用した。以下同じ。)〔2−1−12図〕。
輸送機関別でみると、航空(輸送トン数で6.0%増、輸送トンキロで6.5%増、以下同じ。)が2年連続して増加した。自動車は、営業用自動車(2.0%増、3.5%増)は増加に転じたが、自家用自動車(0.2%減、0.7%増)はほぼ横ばいであった。内航海運(5.1%増、2.1%増)は3年ぶりに増加した。鉄道(0.4%減、3.7%減)は4年連続の減少となった〔2−1−13表〕。この結果、6年度の輸送トンキロでみた各輸送機関の分担率は、鉄道4.5%、営業用自動車38.6%、自家用自動車13.1%、内航海運43.6%、航空0.2%となった〔2−1−14図〕。
(実質GDPの成長率を上回った貨物輸送量)
貨物輸送量の動きとGDPに対する部門別寄与度の推移を見ると、〔2−1−15図〕のように、平成4年度までの5年間、国内需要の動きに概ね呼応してきたトンキロベースでの輸送量は、5年度は、上昇に転じた国内需要に反して減少を続け、GDPの成長率を大きく下回ったが、6年度は、緩やかな回復を続ける国内需要を上回る率で増加に転じ、GDPの成長率を上回った。
これは、5年度が、冷夏、長雨で、夏場の季節商品や発電用重油の需要低下が輸送量の減少に大きく影響した一方、6年度は一転して猛暑、渇水となり、これに伴う輸送需要の増加がプラス要因として働き、輸送量の伸び率を通常の経済的要因による伸び率以上に増幅させたためと考えられる。
- (イ) 輸送機関別輸送動向
- (4年連続の減少となった鉄道貨物)
鉄道による貨物輸送は、輸送量の大半を占める生産関連貨物、建設関連貨物の殆どの品目で伸び悩みを続けた上に、震災による運休が大きく影響し、夏場の猛暑特需の効果も通年では顕在化しなかった。このため6年度の輸送量はトン数で0.4%減、トンキロで3.7%減と、ともに4年連続の減少となった。このうちコンテナ貨物は、夏場は猛暑、渇水の影響により酒・ビール、清涼飲料水等の食料工業品が大変好調であったが、通年では震災の影響もあり、トン数で0.6%減、トンキロで2.5%減となった。車扱貨物は、震災の影響や化学工業品等のコンテナ列車へのシフトに加え、ピギーバックも土日曜の運休や返り荷確保の困難から減少を続けたこともあり、トン数で0.9%減、トンキロで7.4%減となった〔2−1−16図〕〔2−1−17図〕。
(営業用は増加に転じ、自家用はほぼ横ばいの自動車貨物)
自動車による貨物輸送は、6年度は、国内需要の持ち直しに加え、猛暑、震災による特需もあり、輸送量は2年振りに増加となり、トン数で0.7%増、トンキロで2.8%増となった〔2−1−18図〕。
営業用・自家用別にみると、営業用自動車の輸送量は、夏場の水もの(酒・ビール、清涼飲料水等)、白もの(冷蔵庫、エアコン等)の好調に加え、宅配便貨物も堅調であった上に、震災による救援、代替輸送需要もあり、トン数では2.0%増、トンキロでは3.5%増といずれも増加に転じた。これに対し、自家用自動車の輸送料は、民間企業設備投資の伸び悩み等のため、大きな割合を占める建設関連貨物が低迷を続けたことなどにより、トン数で0.2%減、トンキロで0.7%増となり、概ね横ばいとなった。
(3年振りに増加した内航海運貨物)
内航海運の貨物輸送量は、トン数では5.1%増、トンキロでは2.1%増と3年振りに増加となった。これを貨物船、油送船別にみると、貨物船は、震災後の廃材輸送等による建設関連貨物が好調であったことに加え、同じく震災後の輸出入海運貨物の国内転送もあり輸送量は増加した。油送船は、夏場は猛暑による冷房用の電力需要の増大に加えて渇水による水力発電の不振もあり火力発電用の重油輸送が急激に増大したが、後半は工業用電力需要の低下もあり、輸送量は低調であった。
内航海運の輸送品は、61年度以降の景気拡大により、公共事業等の建設工事に伴う建設関連貨物の増加等もあり大幅に増加してきたが、平成3年度以降は、景気減速が顕著になり、伸びは鈍化し、4年度には減少に転じ、5年度はさらに大幅な減少を続けたが、6年度には建設関連貨物にも持ち直しがみられたことなどにより増加に転じた〔2−1−19図〕。
(2年連続増加で好調な国内航空貨物)
6年度の国内航空貨物輸送量は、民間消費が緩やかな回復傾向にあるなかで、生鮮貨物、航空宅配貨物等が好調に推移したことに加え、震災後の代替輸送、あるいは快調な航空輸入貨物の国内転送が増加したこと等にも支えられ、トン数で6.0%増(5年度は0.6%増)、トンキロで6.5%増(5年度は1.7%増)となり、ともに2年連続で増加し快調な伸びを示した〔2−1−20図〕。
- (2) 国際輸送
- (ア) 世界の海上輸送活動
- (堅調な世界の海上荷動き量)
OECD諸国の経済が欧米を中心として回復を見せるとともに、アジア諸国の経済が好調を持続していることなどから、平成6年の世界の海上荷動き量の合計は、トンベースで44億8,000万トン、対前年比(以下同じ。)3.1%増、トン・マイルベースで19兆5,300億トン・マイル、2.8%増となり、いずれも過去最高となっている。なお、世界の海上荷動き量に占める我が国輸出入貨物の割合はトンベースで18.5%、トン・マイルベースで21.4%(5年は各々18.4%、21.6%)となり、ほぼ横ばいであった〔2−1−21図〕。
- (イ) 我が国の海上貿易量の動向
- (輸出入ともに増加)
6年の我が国の海上貿易量(トンベース)は、輸出入合計で、4.1%増(5年は1.3%増)の8億2,844万トンとなり、増加を続けた。
輸出は、4.8%増(5年は6.3%増)の9,535万トンと4年連続の増加となったが、伸び率は鈍化した。これを品目別にみると、鉄鋼、セメント、機械類が、それぞれ1.8%増、12.0%増、3.0%増となったが、乗用車、電気製品は、それぞれ12.8%減、4.4%減となった。輸入については、昭和62年以来、5年間増加を続けた後、4年は減少したものの、平成5年(0.7%増)に続いて、6年も4.0%増の7億3,309万トンと再び増加を続けた。輸入貨物を品目別でみると、石炭(2.8%増)、鉄鉱石(1.4%増)等が増加したことにより乾貨物計では2.7%増(5年は1.5%増)と増加を続けた。また、液体貨物計は、シェアの大きな原油が増加(5.9%増)したことなどにより、5.7%増(5年は0.3%減)と増加に転じた〔2−1−22表〕。
- (ウ) 我が国商船隊による海上輸送活動
- (輸出、輸入は増加、三国間は減少)
6年の我が国商船隊による海上輸送量は、全体で6億6,692万トンで0.4%の増加となった。このうち輸出は、4,050万トンで4.2%増、輸入は、5億1,340万トンで1.4%増となった。一方、三国間輸送は、5.3%減の1億1,530万トンとなった〔2−1−23表〕。
- (エ) 国際航空による貨物輸送
- (増加傾向にある国際航空貨物)
6年度の国際航空貨物輸送量(継越貨物を除く。)は、輸出、輸入ともに順調な伸びとなっており、輸出は円高傾向の中にあるにもかかわらず、アジア地域との取扱いが増えたこと等により、トンベースで対前年度比(以下同じ。)23.4%増の61万トン、輸入は円高の影響などにより、生鮮食料品等が好調で23.4%増の99万トンとなった。
なお、9月より関西国際空港が供用開始したことにより関西圏での輸出入の伸びが顕著であった。
我が国の航空企業による輸送量(トンベース、継越貨物を含む。)をみると、輸出は15.1%増、輸入は14.8%増であり、積取比率は5年度に比べ、輸出は0.2ポイント増の39.3%、輸入は0.9ポイント減の38.8%となった〔2−1−24表〕。
- 3 輸送指数の動向
- (輸送指数は輸送業総合、輸送活動総合ともプラスに転じた)
我が国経済の緩やかな回復基調に伴い、6年度の輸送業総合の輸送指数は105.0、対前年度比(以下同じ)1.1%増(5年度は0.6%減)とプラスに転じた。
自家輸送を含む輸送活動総合の輸送指数は、マイカ−による輸送活動の伸びが大きかったために、105.2、1.7%増(5年度は0.3%減)となり、輸送業総合の輸送指数の伸びを上回った〔2−1−25図〕。
(旅客は自家用、貨物は営業用の寄与が大)
国内旅客輸送活動の輸送指数は、最近10年をみると概ね堅調に伸び続けている。この増減率に対する営業用・自家用別寄与度の推移をみると、営業用輸送機関は、3年度まではプラスに寄与してきたが、4年度以降はマイナスの寄与が続いている。自家用輸送機関(マイカ−、自家用バス等)は、元年度までは寄与が大きく、2年度以降は小さいが、各年度とも営業用の寄与を上回って全体の伸びに大きく貢献している。
国内貨物輸送活動の輸送指数は、最近10年では4〜5年度に増減率がマイナスとなった他は増加している。寄与度の推移をみると、営業用輸送機関は、3年度まで大きく寄与していたが、4年度は減少し、5年度はマイナスとなった。自家用輸送機関(自家用トラック)は、小さなプラスの寄与、またはゼロに近い寄与が続いていたが、4〜5年度は大きなマイナスの寄与となった。6年度は、営業用、自家用ともにプラスの寄与に転じた。旅客とは逆に、各年度とも営業用の寄与が自家用の寄与を大きく上回っている〔2−1−26図〕。
<輸送指数とは>
輸送指数とは、我が国の国内旅客・貨物輸送活動及び我が国企業による国際輸送活動を総合的にとらえ、指数化したものである。具体的には、各輸送機関別の旅客・貨物輸送量(原則として旅客は人キロ、貨物はトンキロ)を、それぞれの輸送機関の創出した粗付加価値額(雇用者所得・営業余剰等)をウェイトとして、基準時加重相対法(ラスパイレス方式)により総合化している。
従って、人や人キロまたはトンやトンキロを単位とするそれぞれの輸送量に対して、輸送活動を経済的側面からとらえた総合的な指数であり、国内総生産(GDP)や鉱工業生産指数等と対比してとらえられることができるものである。
この指数の系列のうち、輸送業総合は、営業輸送だけからなるもので、輸送活動総合は、自家輸送を含んだすべての輸送からなるものである。
- 4 最近の輸送動向(7年4月〜8月の実績)
- (1) 国内旅客輸送の動向
- (JRは増加、民鉄は減少)
JR(旅客会社)6社合計の7年4月〜8月の輸送人員は、震災により不通となっていた区間が4月頭に全線開通し、対前年度同期比(以下同じ。)0.4%増となった。このうち、定期旅客は0.5%増、定期外旅客は0.1%増と、いずれも微増となっている。
民鉄は、震災による不通が長引いた事業者もあり、定期旅客1.2%減、定期外旅客0.2%増で、全体では0.6%減となっている。
(東京のバス、タクシーはともに減少)
東京のバスは1.8%減、タクシーは2.4%減と、ともに減少となった。
(航宅は増加傾向が続く)
航空は、幹線4.9%増、ローカル線10.8%増となり、全体では8.5%増と好調な推移が続いている〔2−1−27表〕。
- (2) 国内貨物輸送の動向
- (JR(貨物会社)は減少を続ける)
鉄道(JR)による貨物輸送は、集中豪雨等による運休などのため、8.0%減と減少を続けた。このうち、コンテナは前年度に輸入米の輸送が増加した反動などもあり4.9%減と減少、車扱はセメントを含めた素材関連貨物の減少もあり10.0%減となった。
(特別積合せトラックは増加傾向を示す)
特別積合せトラックは、宅配便、通信販売関連貨物等の増加もあって、全体で1.4%増となっている。
(内航海運は油送船が大幅減少)
貨物船は0.8%増となり、油送船は、前年早々からの猛暑、渇水による火力発電の電力需要増から重油が急増した反動もあり、9.9%減と大幅に減り、内航海運全体では4.5%減となっている。
(航空は増加)
航空は、生鮮貨物、航空宅配貨物などが好調なこともあり、全体では7.7%増となっている〔2−1−28表〕。
- (3) 国際輸送の動向
- (国際航空旅客は好調)
我が国企業による国際航空旅客は、11.3%増と大幅な伸びを示した。これは、円高による海外旅行の割安感による需要増が続いているものと考えられる。
(外航海運貨物は大幅増加)
我が国企業による外航海運貨物(7年4月〜6月の実績)は、輸出が15.7%増、輸入が15.3%増、三国間19.1%増となっており、全体で16.2%増となっている。
(国際航空貨物は輸出、輸入ともに増加)
我が国企業による国際航空貨物は、輸出、輸入ともに増加し、輸出入計で11.2%増となっている〔2−1−29表〕。
- 5 施設整備の動向
- (1) 平成6年度における公共投資の動向
- (交通関係公共投資はわずかに減少)
平成6年度の交通関係公共投資は、〔2−1−30表〕のとおりであり、総額16兆2,213億円、対前年度比(以下同じ)0.6%減となっている。
個別部門についてみると次のとおりである。
- (ア) 鉄道
- 鉄道全体では、6,145億円、7.4%減となった。
内訳を見ると、日本鉄道建設公団(貸付線)では、前年度に引き続き、北陸新幹線(高崎・長野間、糸魚川・魚津間、石動・金沢間)、東北新幹線(盛岡・青森間)、九州新幹線(八代・西鹿児島間)などの整備新幹線や地方鉄道新線の工事が進捗したことにより、1,977億円、0.4%増となった。公営地下鉄では、京都市及び大阪市の工事が進捗しているものの名古屋市の3号線及び6号線が5年度に開業したこと等により、2,877億円、11.6%減となった。営団地下鉄は、1,208億円、8.1%減となった。公営ニュータウン鉄道では、神戸市営西神延伸線の工事費減少により83億円、14.4%減となった。
- (イ) 港湾
- 港湾全体では、1兆1,230億円、12.2%減となった。
内訳をみると、港湾整備事業では、神戸湾、博多湾等18港における国際会場コンテナターミナルの整備、北九州港、鹿島港等19港における複合一貫輸送に対応したターミナルの整備、長崎港、那覇港等38港における港湾の再開発、四日市港、広島港等36港と大阪湾における廃棄物海面処分場等の整備を重点課題として事業を推進しておる一方で、地方港湾や防波堤等の工事費減少のために、総額では7,058億円、20.7%減となった。海岸事業では、東京港、新潟港、津田港等269港で海岸保全施設等の整備、神戸湾、博多湾等113港で海岸環境の整備が進められ、815億円、2.1%増となった。
- (ウ) 空港
- 空港全体では、4,150億円、対前年度比23.6%減となった。
第6次空港整備五箇年計画に従い、5年度に引き続き三大空港プロジェクトを最優先課題として空港整備を推進している。内訳をみると、空港整備では、新東京国際空港の第2旅客ターミナルビルの整備がほぼ完了したこと、5年度に比べ東京国際空港の沖合展開用地買収費が大幅に減少したこと等により、2,883億円、31.9%減となった。航空保安施設では、6年度から航空衛星システムの整備に着手したことから、771億円、8.6%増となった。
- (2) 民間設備投資の動向
- (ア) 民間設備投資の動向
- 6年度の民間設備投資は、大蔵省「法人企業統計年報」によれば、総額42兆3,810億円、対前年度比8.7%減となった。業種別にみると、製造業では、電気機械などでプラスとなったものの、多くの業種で減少となっており、製造業全体では13.0%減となった。また、非製造業では、運輸・通信業(5.0%減)を含むほとんどの業種で減少となっており、非製造業全体では6.7%減となった。
- (イ) 運輸関連民間設備投資の動向
- (6年度の運輸関連民間設備投資実績は前年度実績より減少)
「運輸関連企業設備投資動向調査」(原則として資本金1億円以上の3,311社調査)によると、6年度の運輸関連民間設備投資の実績額は、工事ベースで総額2兆8,622億円、前年度実績の(以下同じ。)18.3%減となった〔2−1−31表〕。
部門別にみると、「運送業部門」全体では8.6%減で、鉄道業とハイヤー・タクシー業を除く全ての業種が減少となった。「製造業部門」全体では16.8%減で、造船業、舶用エ業、鉄道車両製造業の3業種全てが減少となった。「その他部門」全体では51.2%減で、自動車道業以外は全て大幅に減少した。
(登録ホテル業、空港関連施設業が大幅減少)
主な業種ごとの設備投資動向をみると、登録ホテル業では、前年度と比べ、建物新築への投資を中心に52.9%の減、空港関連施設業では、空港施設への投資を中心に51.1%の滅となるなど、全20業種中17業種で投資額が減少した。
(研究開発、サービス改善、安全対策のための投資が増加)
6年度設備投資実績(工事ベース)を投資目的別にみると〔2−1−32表〕、「研究開発のための投資」、「サービス改善のための投資」、「安全対策のための投資」が増加したものの、残りの項目については全て減少し、特に、「エネルギー対策のための投資」、「合理化及び省力化のための投資」については大幅に減少した。
構成比でみると、「能力増強のための投資」は全体の53.9%を占めた。
(資金調達先のなかで、社債、民間金融機関のシェアが減少)
6年度設備投資に係る資金調達の実績(支払いベース)は、総額2兆9,054億円、18.5%減となり、そのうち、内部資金は1兆5,394億円、1.2%減、外部資金は1兆3,660億円、31.9%減となった〔2−1−33図〕。
外部資金の各項目について、資金調達総額におけるシェアをみると、社債、民間金融機関は、それぞれ、5.7ポイント、3.3ポイント減少しており、外部資金全体についても、9.3ポイント減少した。
(7年度投資計画も引続き減少傾向にあるものの減少率は鈍化)
7年度の設備投資計画(工事ベース)は〔2−1−31表〕、総額2兆8,033億円、2.1%減と、前年度に引続き減少傾向にあるものの減少率は鈍化した。主な業種ごとの投資計画をみると、空港関連施設業は、ターミナル施設、構築物等への投資が減少したことにより、591億円、68.2%減となった。一方、航空運送業は、航空機への投資が増加したことにより、3,221億円、34.9%増となり、鉄道業では、構築物への投資が増加したことにより、1兆4,547億円、1.0%増となった〔2−1−34表〕。

平成7年度

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