平成7年度 運輸白書

第1章 平成6年度の運輸の概況と最近の動向

第2節 規制緩和への取り組み

    1 国民生活に密着した規制緩和を実施
    2 国民の声に耳を傾けての規制の見直し
    3 4つの視点からの規制緩和推進計画の策定
    4 今後の取り組み


1 国民生活に密着した規制緩和を実施
 運輸省は、社会経済情勢の変化に応じるとともに、安全で、より安く、より快適にという利用者の声を十分に反映した運輸行政を展開するため、運輸省の所管行政に係る規制の見直しを積極的に進めている。
 平成5年4月以降、運輸省の許認可等件数を3年以内を目途に2割削減するなどの基本方針に基づき、事務次官を本部長とする「許認可事務等改革推進本部」体制の下で、全省挙げて規制緩和に取り組んでおり、許認可等件数の削減を図るとともに、内容的にも国民生活に密着した規制緩和を実施している。平成6年度に措置した主な規制緩和事項は以下のとおりである。
(1) 運賃・料金の規制緩和
 平成6年6月に航空法を一部改正し、同年12月から、国内航空の割引率50%までの営業政策的な割引運賃及び料金について認可制を届出制とした。これを受け、航空各社から事前購入割引を平成7年5月8日以降の便に設定する旨の届出がなされている。事前購入割引は、利用主体の制限のない新たな種類の割引運賃であり、これにより国内航空においても、米国等で見られるように使用条件は厳しいが、割安なサービスを多くの利用者が受けることができるようになった。
 また、平成6年11月に成立した「許可、認可等の整理及び合理化に関する法律」により、鉄道事業の特別車両料金等や路線バス、国内旅客船の営業政策的な割引運賃等について認可制を届出制とし、平成7年4月以降、事業者の自主的な判断による運賃・料金の設定が容易となった。
(2) 自動車検査等の規制緩和
 最近における自動車技術の進歩等を踏まえ、平成6年7月に道路運送車両法の一部を改正する等の措置を講じ、平成7年7月より(a)自家用乗用車等について6か月点検の義務付けの廃止、(b)定期点検整備の実施時期を検査前とする義務付けの廃止、(c)定期点検項目の簡素化、(d)車齢11年を超える自家用乗用車等の自動車検査証の有効期間の延長、等を行った。
 これらの規制緩和措置の効果については、施行後1か月間の動向を見ると、大衆車クラスの車検時における点検整備料金については、改正前と比較して平均で14%減少しており、車検時におけるユーザーの負担が軽減されてきている。

2 国民の声に耳を傾けての規制の見直し
 規制の見直しに当たっては、規制緩和に関する内外の意見・要望を十分に踏まえることが必要であり、このため、政府においては平成7年3月31日に閣議決定された規制緩和推進計画の策定に当たって内外の意見・要望の積極的な把握に努めた。具体的には、平成6年11月、行政改革推進本部に、民間の有識者からなる規制緩和検討委員会を設置し、同委員会において、内外の意見・要望について審議、取りまとめが行われ、その意見報告書は平成7年2月に政府に提出された。また、総務庁により経済団体、事業者団体、諸外国等からの意見・要望が「規制緩和等に関する内外からの要望」として取りまとめられた。
 運輸省においては、利用者の声を十分に反映した運輸行政を展開するため、国民の声に耳を傾けつつ規制を見直すことが重要と考えており、規制緩和推進計画の策定に当たっては、上記規制緩和検討委員会の意見報告書や総務庁取りまとめの「規制緩和等に関する内外からの要望」のみならず、独自に内外の意見・要望を把握し、この意見・要望についてはできるだけ規制緩和推進計画に盛り込むよう検討を行った。また、平成7年4月には、内外の意見・要望を受け付けるための窓口を設置し、今後とも意見・要望の把握に努めるとともに、的確な情報公開を行うこととしている。

3 4つの視点からの規制緩和推進計画の策定
 規制緩和推進計画は、我が国の経済社会構造の変革を進めるために重要な施策である規制緩和を計画的に推進するに当たって、今後数年間、行政指針となるものであるとの認識の下に、2で述べた内外の意見・要望を踏まえ規制緩和事項の検討を行うとともに、主に(ア)物流コストの削減等に資する諸規制の見直し、(イ)旅客輸送サ−ビスの向上等に資する諸規制の見直し、(ウ)国際輸送の競争力の確保に資する諸規制の見直し、(エ)国際基準への調和等に資する諸規制の見直し、の4つの視点に立って規制の全般的な見直しを行い、規制緩和推進計画の策定に積極的に取り組んだ。具体的には〔2−1−35表〕のとおりである。
 規制緩和推進計画には、上記の事項のほか、提出書類の省略・簡素化等の行政手続の一層の改善を促す規制緩和事項等を盛り込んでいる。

4 今後の取り組み
 運輸省は、よりよい運輸サービスの提供のため、規制緩和を今後とも推進する必要があると考えている。
 具体的には、緊急円高・経済対策の一環として計画期間が5年から3年に前倒しになった規制緩和推進政策について、計画に盛り込まれている事項を着実に実施するとともに、さらに、引き続き4つの視点に立って規制の見直しを進めていくことにしている。その際、内外の意見・要望を受け付けるための窓口等を十分に活用して意見・要望の把握に努めるとともに、現行の制度・運用を維持するものにあっては、透明性の確保の観点から、その必要性、根拠等を明確にすることにしている。
 また、行政手続にしても、その公正の確保、透明性の向上を図る観点から、平成6年10月施行の行政手続法等に基づき、許認可等の審査基準と標準処理期間の設定・公表を実施するなどの改善を図ってきたが、さらに、手続負担の軽減の観点から、提出書類の一層の省略・簡素化等の手続の一層の改善を図ることとしている。



平成7年度

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