平成7年度 運輸白書

第1章 平成6年度の運輸の概況と最近の動向
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第3節 経済環境の変化への運輸産業の対応 |
1 運輸産業を取り巻く経済環境の変化
2 運輸産業の対応
- 1 運輸産業を取り巻く経済環境の変化
- 我が国経済については、平成5年第4四半期にバブル崩壊後の景気の後退局面から脱したものの、平成7年3月以降の急激な円高等の影響もあって、景気は足踏み状態が長引くなかで、弱含みで推移している。
特に、平成7年3月以降急激に進行した円高は、我が国企業の国際競争力に深刻な影響を与えている〔2−1−36図〕。
このような経済環境において、国内運輸産業については、各企業がコストの削減、生産の効率化等のリストラに取り組んでいるところであるが、景気の足踏み状態が長引くなかで、一層のコスト低減への取り組みが求められている。
国際運輸産業については、輸出比率の高い造船業、造船業の影響を受ける舶用工業、直接外国企業との競争にさらされている国際航空業、外航海運業の分野において、円高の影響を直接的、間接的に受けており、その経営環境は非常に厳しいものとなっている。
- 2 運輸産業の対応
- (1) 国際運輸産業
- (ア) 造船業
- 円高により我が国造船業の価格競争力は相対的に低下しかねない状況にある。
我が国造船業については、円高の進行により従来に比べ、ドル建てによる契約が増加しており、平成3年度においてはほとんど全て円建て契約であったものが、平成6年度では約5割がドル建て契約となっている等、その収益は為替レートの動きに極めて影響を受け易いものとなっている。
このような状況を踏まえて、各企業は、生産性の向上や、資材の海外調達の促進(費用の外貨建化)等の対応策を進めている。
- (イ) 舶用工業
- 舶用工業については、製品単体での輸出割合は2割弱と大きくはないが、円高等による船価下落に伴う製品価格の低下により収益性が悪化しており、また、我が国の造船事業者が舶用機器の海外調達を進めることにより、受注の減少等の影響が懸念される。
このような状況を踏まえて、各企業は、工程合理化や資材の海外調達の促進等の対応策を実施している。
- (ウ) 外航海運業
- 外航海運業については、ドル建てによる収入に比べ、ドル建てによる費用が少ないという収益構造等のため、円高の進行により利益が圧縮されることとなり、国際競争力の面において一層の低下が懸念される状況となっている。
このような状況を踏まえて、各企業は、一層の経費節減、船舶の海外修繕の促進等による費用のドル建化等の対応策を実施している。
- (エ) 国際航空業
- 国際航空業については、収支の上では、ドル建てによる収入と費用の割合が均衡していることから円高の直接的な影響は相殺されている。しかしながら、円高の進行は、円建てによる費用に比して円建てによる収入の割合が高い外国他社にとって自国通貨建ての収支を改善する方向に働くため、我が国企業の国際競争力の低下が懸念される。
このような状況を踏まえて、各企業は、一層の経費節減、航空機の海外整備の拡大等による費用の外貨建化等を通じて国際競争力の強化に取り組んでいる。
- 以上のような運輸産業における企業の経営環境の悪化に対応するため、運輸省としては、我が国企業の国際競争力確保の観点から、従来より税制上、金融上の支援措置を講じる等の施策を実施している。
- (2) 国内運輸産業
- 景気の足踏み状態が長引くなか、各企業とも生産の効率化に向けたリストラ等を進めているが、物流費等に関して、米国等に比して総じて割高であるとの指摘もある。内外価格差については、我が国と諸外国とでは、サービスの質や内容、運賃政策等について相違があるため単純な比較は困難ではあるが、国内運輸産業における一層の経営効率化の促進、一層のコスト低減等については、個別企業の立場からだけでなく、日本経済の活性化をめざす観点から、社会的にもその実現に対する要望が高まっているところであり、運輸省としても、「規制緩和推進計画」 に基づく各種規制緩和の実施、社会資本の整備等の政策を通じて、積極的な取り組みを行っているところである。

平成7年度

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