平成7年度 運輸白書

第10章 航空サービスの充実に向けた取り組み
 |
第10章 航空サービスの充実に向けた取り組み
|
-
我が国の航空輸送は、時間価値の上昇に伴う高速交通ニーズの高まり等を背景として、旅客・貨物ともに急速な発展を遂げている。これらの増大する航空需要に対応するためには、空港の整備と航空サービスの充実を図り、国内・国際ネットワークを充実させる必要があるが、そのために、運輸省では平成3年度を初年度とする第6次空港整備五箇年計画に基づき、新東京国際空港の整備、東京国際空港の沖合展開及び関西国際空港の開港を最優先課題として空港整備に努めてきたところであり、現在第7次空港整備五箇年計画の策定を行っているところである。また、航空サービスの面では、従来より競争促進施策、多様な運賃の導入等を推進し、利用者利便の向上に努めてきたが、最近の急激な円高と景気の足踏みは、我が国航空会社の経営を大幅に悪化させているため、6年6月の航空審議会の答申を踏まえ、我が国航空企業の競争力向上のための施策等を推進しているところである。
 |
第1節 我が国をめぐる航空輸送の現状 |
- (1) 我が国の航空輸送の実績
- (国内線は伸び悩み、国際線は回復)
平成6年度の国内旅客輸送実績は約7,455万人(対前年度比約7.1%増)、国際旅客輸送実績は約3,885万人(対前年度比約7.9%増)となった。国内旅客輸送実績は、3年度以降景気の後退の影響を強く受け低迷を続け、5年度には8年ぶりに前年度をわずかながら下回った。6年度においても、上期は輸送実績は前年度並みか若しくは前年度を下回ったが、6年9月の関西国際空港の開港、さらには本年1月の阪神・淡路大震災の発生に伴う臨時便等の代替旅客輸送により、特に本年1〜3月は前年同月比10〜20%超の伸びを示した結果、年度計では増加に転じた。しかしながら、山陽新幹線等の復旧した7年4月以降、中国方面と大阪、東京を結ぶ路線等の需要が急激に落ち込んだ結果、前年同月と比べた増加率は大幅に減じ、関西国際空港開港直後の水準で推移している。また、国際旅客輸送実績の伸びについては、4年度以降低迷していたが、6年度は急激な円高にともなって海外旅行に割安感がでてきていることに加え、6年9月の関西国際空港の開港により大阪方面の国際航空旅客需要の増加が年度計で127万人、前年比で23.3%伸びたこと等により、全体としてやや回復した。阪神・淡路大震災の影響により本年1月〜3月は需要が落ち込んだが、5月以降回復に転じている。
貨物輸送については、6年度国内貨物輸送実績が74.6万トン(対前年度比7.8%増)、国際貨物輸送実績が199.7万トン(対前年度比16.3%増)となった。6年度の国内貨物輸送は、低需要期に阪神・淡路大震災が発生したため、7年1〜3月は代替輸送等により前年同月比で二桁台の伸びを示した。また、国際貨物輸送実績は、5年度に引き続いて大幅な伸びを示した。金額ベースで増加の内訳を見ると、我が国の産業構造の転換、国際分業の進展を反映して輸出入とも機械類を中心に伸びている。また、6年9月の関西国際空港の開港に伴い、大阪方面の国際貨物が増加、一方、新東京国際空港においては、関西国際空港の開港後国際航空貨物の分担率は低下したものの、貨物需要全体の順調な伸びにより、トンベースの増加量では関西国際空港を上回り、大幅な増加につながった。〔2−10−1図〕〔2−10−2図〕。
- (2) 我が国航空企業の経営状況
- (平成6年度の我が国航空企業の経営は依然として厳しい状況)
我が国航空企業の収支は、昭和62年度以降需要の伸びに支えられて順調に推移してきたが、平成3年度以降は国際・国内の景気後退の影響を強く受け、4年度及び5年度には、航空3社(日本航空、全日本空輸、日本エアシステム)計でそれぞれ427億円、360億円の経常損失を生じるに至った。平成6年度においても、阪神・淡路大震災の影響を除くと国内航空需要は伸び悩んでおり、国際航空需要についても近年における国際競争の激化、業務需要の低迷等によりイールドが下がってきているため、需要増ほどの収益の改善は見られなかった。平成6年度決算は3社計で9億円の経常利益を計上し概ね均衡するに至ったが、依然として厳しい状況におかれている〔2−10−3図〕。
- (3) 我が国航空企業の経営基盤の強化
- (ア) 我が国航空企業の競争力の低下
- 近年、世界的な航空事業の低迷が続く中で、米国における巨大航空企業による寡占化、世界的に進展している国境を超えた企業間の連携など、世界の航空業界は大きな変貌を遂げようとしており、その中で日本発着の国際航空需要の積取りにおける我が国航空企業のシェアは近年低下している。
このような状況下で、我が国航空企業は懸命な合理化等の経営改善努力により体質強化を図ろうとしているが、従来から安定した経営基盤を有しているとはいえないことに加えて、景気後退による国内、国際需要の伸び悩み、国内線・国際線の双方における一層の競争激化等により、その収支は近年急速に悪化し、生き残りまで危惧されるような深刻な経営状態にある。しかし、今や国民の足として必要不可欠となっている国内航空はもちろん、国際航空においても、我が国の国際社会における地位の高まりに対応して、我が国航空の果たすべき役割はますます重要なものとなっており、利用者の立場からみても我が国航空企業の競争力強化は喫緊の課題となっている。
- (イ) 航空審議会答申の着実な推進
- このような状況の中で、運輸省では、我が国航空企業の競争力を向上するための諸方策について、運輸大臣の諮問機関である航空審議会に5年9月30日に諮問し、6年6月13日に同審議会より「我が国航空企業の競争力向上のための方策について」と題する答申を得た。答申を踏まえ、行政においては航空会社によるコスト削減の取り組みを支援するため、6年6月航空法を改正し、定例整備の海外展開に道を開くとともに、7年3月にウェットリース及び共同運送の要件についての通達を改正し、環境整備に努めている。航空各社においても懸命なリストラに取り組んでおり、コスト面では雇用形態や賃金体系の見直しをはじめとする構造的問題にも取り組んでいるほか、ベア・賞与等の抑制等による人件費の圧縮、宣伝費その他の管理費の節減に加え、ウェットリースや航空貨物における運航委託の活用、コードシェアリングの活用による路線運営の改善、定期整備の海外への委託等に取り組んでいる。また、収益面では各種の営業努力、新しい運賃制度・割引運賃の活用等により増収に取り組んでいるところである。

平成7年度

目次