平成7年度 運輸白書
第10章 航空サービスの充実に向けた取り組み
第2節 利用者ニーズに対応した航空サービスの充実に向けての取り組み
1 ネットワークの充実
2 航空運賃の弾力化
3 国際航空ネットワークの形成の方向
4 補償限度額の公表
5 「空の日」・「空の旬間」事業の展開
1 ネットワークの充実
(1) 国内線のダブル・トリプルトラック化、国際線の複数社化の推進
現在、我が国においては、昭和61年6月及び平成3年6月の運輸政策審議会答申の趣旨に沿って、安全運航の確保を基本としつつ、航空会社間の競争促進を通じて利用者利便の向上を図るため、国内線については、高需要路線を中心にダブル・トリプルトラック化を、また、国際線については複数社化を推進している。ダブル・トリプルトラック化については、更なる利用者利便の向上を図るため、4年10月にダブル・トリプルトラック化の基準となる年間旅客数を引き下げ、これにより、現在ダブルトラック化については原則70万人以上から原則40万人以上(空港整備状況等を勘案し、羽田空港関係路線については当分の間原則50万人以上)、トリプルトラック化については100万人以上から原則70万人以上(羽田空港関係路線については当分の間原則80万以上)に引き下げたところである。この基準に基づき、6年11月に東京−徳島線、7年4月に名古屋−那覇線のダブルトラック化、7年4月に大阪−福岡線、大阪−那覇線及び名古屋−福岡線のトリプルトラック化が実施され、ダブル化路線が27路線、トリプル化路線が19路線となっている
〔2−10−4表〕
。また、同審議会の答申に沿って、6年10月に大阪−ブリスベン線、大阪−シドニー線及び大阪−香港線、6年11月には東京−ブリスベン線、6年12月には大阪−グアム線、7年7月に大阪−上海線、大阪−バンコク線、大阪−クアラルンプール線、7年10月に大阪−ロンドン線が複数社化され、国際線の複数社化路線は27路線となった
〔2−10−5表〕
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(2) 国内航空ネットワークの充実
我が国の国内航空路線網については、6年8月から7年8月までの1年間で187路線から216路線、総便数では702便から778便に増えたが、それぞれの増加分の約7割は、関西国際空港開港によるものとなっている。
関西国際空港開港後の国内路線網の充実については、大阪国際空港にも主要な都市間路線を残しつつ、適切な国内線のネットワークの確保に努め、開港前の38路線、一日125便から、開港後には大阪国際空港に31路線、一日100便、関西国際空港に24路線、一日65便を就航させた。開港後も関西国際空港発着の国内線の増便を図り、平成7年9月現在28路線、一日81便まで増便が図られている。
(3) 地域空輸送の展開
(地域の創意工夫による地域的ネットワークの充実)
(ア) 離島航空
離島については、航空輸送が離島住民の足として生活に密着した役割を果たしているが、採算性の確保等種々の問題が存在するところである。その開設及び維持のため、離島航空事業者の自主的な経営努力を基本としつつ、離島路線の必要性等を踏まえ、国においては、着陸料や航行援助施設利用料の軽減措置を講じるとともに、離島航空に使用する小型航空機の購入費の一部補助を行っており、地方公共団体においても、固定資産税の軽減措置、欠損補助等の助成を行って支援してきている。
(イ) コミューター航空
コミューター航空については、離島航空と同様採算性の確保等種々の問題が存在するところであり、その導入及び維持のためには、航空事業者の合理化等の自助努力が基本となる。しかしながら、国としても、コミューター事業者等の関係者が連携して取り組めるよう支援することとしており、地方公共団体においても、例えば6年5月に運航を開始した大阪−但馬路線で航空運送事業者が使用する航空機について、当該航空機の購入主体に対して一部補助等が行われている。
2 航空運賃の弾力化
(1) 新国際航空運賃制度
国際航空運賃については、認可運賃と実勢価格の乖離を是正し透明性の高い運賃制度を構築するとともに、利用者にとって使いやすく、かつ、低廉な運賃を提供することを目的として、6年4月から新運賃制度が実施されている。この制度の下では、認可運賃のレベルの大幅な引き下げ、一人より適用可能な旅行商品に対する運賃の導入、利用者が直接購入できる個人型割引運賃の適用条件の緩和等を行うとともに、航空事業者による弾力的な運賃設定を可能とするよう、一定の幅の中で自由に運賃を設定し、また変動させることができる制度を導入している。これにより利用者は従来のものと比べて最大で5割程度安い運賃を航空会社や旅行会社の窓口等で購入できるようになり、また、安価なパック商品に少人数で参加できるようになった。新運賃制度の導入により、PEX運賃(特別回遊運賃)の販売が大幅に伸びており、最近における国際旅客輸送の伸びに寄与している。今後は、更に新国際航空運賃制度を活用し利便性の高い商品の開発を行うこと等により運賃面における収益力の向上を図ることが、国際競争力の強化のために不可欠である。
(2) 国内航空運賃の弾力化
近年、国内航空に対する利用者のニーズが高度化・多様化し、個人型の割引運賃の充実を求める声が高まってきていることなどに対応して、6年6月航空法を改正し、割引率5割までの営業政策的な割引運賃及び料金について同年12月から届出制とした。この規制緩和により、事業者は利用者ニーズに対応した運賃・料金を自主的な判断により設定することが一層容易となり、7年2月には事業者より事前購入割引(搭乗予定日の28日以前に航空券を予約した場合に運賃が最大36%割引される制度)の届出がなされ、7年5月8日以降導入された。事前購入割引は、国内航空運賃において従来見られなかった利用主体に制限のない新しい種類の割引運賃であり、米国等で見られるように使用条件は厳しいが割安なサービスを多くの利用者が利用できることとなった。この割引運賃制度は、国内観光需要の喚起にも資するものとして期待される。
さらに、普通運賃の設定方式については、航空会社が創意工夫を活かして多様化・高度化する利用者ニーズに弾力的に応えて季節、時間帯、路線の特性等を加味した多様な運賃設定を行うことを促進するため、標準的な原価を最高額とする一定の幅の中で航空会社の自主的な運賃設定を可能とする幅運賃制を7年内に導入することとしておりこれにより、従来からのダブル・トリプルトラック化による競争促進施策の効果とあいまって、標準原価を最高額とすることによるヤードスティック効果が働き、航空各社が効率的な経営に取り組むことが促進されるものと期待される。
3 国際航空ネットワークの形成の方向
(1) 大都市圏空港(成田、関空)
旺盛な日本人の海外旅行需要等を背景として、我が国に対して、外国航空企業からの増便や新規乗入れの要望が非常に強い状況にある。こうした外国航空企業の多くは、昨年9月に開港した関西国際空港の国際線定期便の運航便数が、同空港開港前の伊丹空港における週193便から本年8月時点で週459便に達したことにも見られるように、日本発着の旅客、貨物需要の重要なポイントたる東京・大阪等大都市圏への乗入れを強く希望している。
このような状況の下で、成田空港については、1991年以来、空港制約の関係から外国航空企業からの増便や新規乗り入れ要望等に応えることができない状況にあり、同空港の国際航空ネットワークは、近年経済発展等の著しいアジア・太平洋諸国に徐々に重点を移行しつつある現在の国際航空需要に比して、北米、欧州の割合が高いままとなっている
〔2−10−6表〕
〔2−10−7表〕
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関西国際空港については、これまで伊丹及び成田空港の制約によりネットワークの拡大が困難であった地域を中心にネットワークが構築されており、アジア諸国、オセアニアといった新しく需要が大きく伸びている地域の割合が高い状況となっている
〔2−10−8表〕
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このため、大都市圏における空港整備を着実に進め、諸外国等の要望に適切に応えるとともに航空需要の増大に応じたバランスのとれた国際航空ネットワークの形成を進めていくことが重要である。
(2) 地方空港(大都市圏以外)
近・中距離国際航空の分野で我が国の地方都市から諸外国の目的地へ直行する旅行パターンが好まれることもあり、最近では、本年4月に青森−ソウル線(大韓航空)、青森−ハバロフスク線(アエロフロート)及び松山−ソウル線(アシアナ航空)が開設されるなど地方空港発着の直行国際航空路線の開設が進展してきた。しかしながら、地方空港発着の国際定期便数及び利用旅客数の伸びも、最近では鈍化傾何を示している
〔2−10−9表〕
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地方空港の国際化は、地域経済の活性化に与える好影響もあり、特に国際定期便の開設に対する地元の期待が高いことから、相手国との間で十分な需要が見込める場合には、国際定期路線の開設に適切に対応していくことが必要である。他方、国際定期路線を維持していくだけの十分な需要が見込めない地域については、昨年開港した関西国際空港からのフィーダー・サービスや国際チャーター便を活用するなどにより地方空港の国際化をめざすことも必要である。
なお、地方空港の活用に関連し、国際チャーター便の利用促進のためには、「フライ・アンド・クルーズ」等の多彩なパック旅行に対応した片道のみの包括旅行チャーターの導入等を検討する必要がある。
4 補償限度額の公表
海外旅行者の数は年々増加しているが、一方で不幸にも事故に巻き込まれた場合の運送約款上の補償額の内容については、各航空会社ごとに異なっている。この点については一般に適切に周知されていないのが現状であることから、本年9月に(財)航空振興財団が運輸省の協力を得て、日本に定期便を運航している航空会社の運送約款上の補償限度額を一覧表の形で取りまとめたパンフレットを作成したところである。
5 「空の日」・「空の旬間」事業の展開
平成4年に、民間航空再開40周年を記念して、従来の「航空日」に代えて「空の日」(9月20日)「空の旬間」(9月20日〜30日)が定められた。これは各種の行事・イベントを通じて広く航空に親しんでもらうことにより、国民の航空に対する理解と関心をより一層深めようとするものである。
平成7年度においてもその趣旨を引き継ぎ、「もっと感動、空はフロンティア」をキャッチフレーズに、記念式典、空の日芸術賞、中学生海外主要空港派遣事業、広島地区における「'95エアポートフェスタひろしま」をはじめ、全国各地の空港などで、一日空港長、施設見学、体験搭乗、航空教室、物産展など多彩な催しが行われた。
平成7年度
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