第3節 情報化の推進 |
7年2月に、内閣総理大臣を本部長とする「高度情報通信社会推進本部」は高度情報通信社会の構築に向けた施策を推進する基本的な方針(「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」)を決定したが、運輸サービス部門も高度情報化を進めるべき重要な部門として、国民へのタイムリーな情報提供、安全性の確保、物流の効率化等の観点から、運輸多目的衛星等の衛星システム等の開発・整備、旅客・貨物の移動に際し必要かつ有益な情報を提供する運輸関連の情報ネットワークの整備等の情報化を推進していくこととされた。この基本方針を受け、7年8月には運輸部門における情報化実施指針を策定した。同実施指針は、運輸サービス分野が、不特定多数の国民を対象とすること、移動体を対象とすること、生活密着型であること等に鑑み、高度情報通信社会に向けてより多様化する国民のニーズに対応するため、情報化を一層推進するとしており、以下に述べる新たなテーマに積極的に取り組んでいくことを明らかにしている。
6年11月現在、既に運輸分野等において合計42のEDIFACT準拠国際標準メッセージが利用勧告レベルになるなど、その開発が進められており、また、シンガポールにおいてはコンテナ積付情報の港湾庁への提出のEDIFACT準拠が強制化される等アジア太平洋諸国においてもEDIFACTの実用化が具体的に進展しつつある。
また、EDIFACTの本格的導入に向け、7年3月に運輸大臣の諮問機関である運輸政策審議会情報部会に物流EDI小委員会を設置し、国際物流分野でのEDI導入推進についての意見聴取を行い、6月には「情報部会中間とりまとめ」を行うとともに、これを踏まえ、国際海上貨物輸送分野での国際標準準拠のEDI導入推進のためのガイドラインとして、「国際海上貨物輸送の分野において海上運送事業者等が行う電子計算機の連携利用に関する指針」(情報処理の促進に関する法律に基づく告示)を策定した。
今後運輸省としても、同指針に即し、物流EDI推進機構の活動を支援していくとともに、EDIFACTの普及を含めEDI実用化のための環境の整備に取り組むこととしている。
運輸省としても、共通利用範囲の一層の拡充・普及を図る観点から共通利用地域の一層の拡大を呼びかけるとともに、他の輸送モードも含めた複数の公共交通機関を共通利用できる新カードの開発に積極的に取り組む等普及促進に努めていくこととしている。
運輸省としても、5年度より3年間の計画で、学識経験者を交え、運輸分野におけるICカードの活用方策について検討を進めてきた。初年度においては、具体的利用分野の絞り込み等を行い、この結果を踏まえ、6年度はバス・鉄道等乗車券、貨物追跡管理等の利用分野ごとに諸外国の事例調査、ニーズ調査等を実施し、活用する場合の概略システムをとりまとめ、導入に当たっての諸問題のとりまとめを行った。7年度は、これら各々についての実証試験の実施等実用性の検討を行うこととしている。
こうしたマルチメディアの進展という大きな流れの中で、運輸部門においても、今後、行政機関や交通機関等の有する気象・海象情報、交通機関の予約に関する情報、観光情報等の運輸関連情報を、即時にかつ、必要に応じ画像、音声を組み合わせて双方向に交換することのできる全国的なネットワークが求められてくるものと考えられる。
このような観点から、7年度は映像、音声等大容量の情報交換が可能になった場合の運輸関連情報に対するニーズ及び各種制度的問題点を把握するための調査を実施し、マルチメディアに対応した今後の運輸関連情報システムのあり方について検討を行っている。
これを受け、5年5月気象業務法が改正され、指定機関を用いた気象庁からの各種支援データの提供と、気象予報士制度の導入が定められた。これに伴い、6年5月には、(財)気象業務支援センターが各種データの分岐配信業務、及び気象予報士試験の事務を担う各々の指定機関として指定され、上記業務を始め気象庁からの技術移転等、気象庁と民間気象業務を結んだ総合的な気象業務の推進のセンターとしての業務を開始した。
6年8月には新たに創設された気象予報士の第1回の試験が実施された。試験は同年度中更に2回実施され、総計1,090名の合格者が出た。
7年5月には改正気象業務法が適用になり、予報業務の許可事業者による局地予報の一般への提供が始まり、この業務を中心に情報化社会に向けた民間気象業務の新たな展開が開始された。
具体的にはまず第一に、情報化推進のための基盤整備として、運輸省本省LAN(Local Area Network)を7年度に構築し、外局等と順次接続するとともに、地方支分部局においても順次ネットワーク化を図り、運輸省WAN(Wide Area Network)を整備する。
第二に、運輸行政に係る許認可等の申請、届出、報告等の手続きについて、申請者負担の軽減、業務の効率化、ペーパーレス化の推進の観点から、申請等が定期的なもの、更新頻度が高いもの、データベースの役割を果たしているもの等から順次電子化・オンライン化を推進すること等により行政サービスの高度化を図る。
第三に、電子メール、電子掲示板等を活用した共通システムを整備し、事務の効率化、ペーパーレス化を図る等、行政事務の効率化を推進する。
以上の内容を踏まえ、運輸省においては今後とも、運輸行政の情報化をより総合的な観点から効率的かつ計画的に推進することとしている。