平成7年度 運輸白書

第2章 運輸関係社会資本整備の動向

第4節 空港整備の推進

    1 第7次空港整備五箇年計画の策定に向けて
    2 関西国際空港の整備
    3 新東京国際空港の整備
    4 東京国際空港の沖合展開事業の推進
    5 その他の空港の整備


1 第7次空港整備五箇年計画の策定に向けて
 計画的な空港及び航空保安施設の整備を推進するため、42年度以来「空港整備五箇年計画」を策定してきているが、現行の第6次空港整備五箇年計画は7年度をもって終了することとなっている。
 このため、8年度を初年度とする第7次空港整備五箇年計画の策定を行うこととし、運輸大臣は、7年3月27日航空審議会に今後の空港及び航空保安施設の整備に関する方策について諮問を行った。これを受けて同審議会では、同年8月24日、同審議会の空港・航空保安施設整備部会において中間とりまとめ(「第7次空港整備五箇年計画の基本的考え方」)が行われた。その概要は以下のとおりである。
 運輸省としては、この中間とりまとめを受けて、8年秋頃に予定されている閣議決定に向けて鋭意作業を進めているところである。
○ 21世紀に向け航空の意義が飛躍的に増大する中で、我が国が安定した発展を持続し、国際社会に一定の地位を確保するためには、時機を失しない国際ハブ空港等の整備が喫緊の課題であるという基本認識に立ち、関西国際空港の2期事業、中部新国際空港及び首都圏空港をこれまでの三大プロジェクトに続く新しいプロジェクトとして位置づけ、これを含めた大都市圏における拠点空港の整備を最優先課題として、次のように推進する。
(1) 首都圏
 新東京国際空港については、円卓会議の結論を尊重し、平行滑走路等の整備を推進する。平行滑走路等の整備により空港処理能力が拡大した段階で、際内乗り継ぎ機能の向上等を図る。
 東京国際空港については、沖合展開事業の3期計画の早期完成を図る(新B・新C滑走路の供用等)。
 東京国際空港は沖合展開事業が完成しても21世紀初頭には再びその能力が限界に達することが予測されるため、海上を中心とした新たな拠点空港を建設することを前提として、総合的な調査検討を進める。このため、国と関係地方公共団体による協議の場を設け、候補地の選定等必要な検討を進め、結論を得た上で事業着手をめざす。
(2) 近畿圏
 関西国際空港は、21世紀初頭にはその処理能力の限界に達すると予測されることから、全体構想のうち、当面、2期事業(平行滑走路の建設等)に早急に着手する。
 その際、空港施設の整備主体と用地造成の整備主体を分離した事業手法(主体分離方式)を導入するとともに、税制上の優遇措置や、用地造成に対する無利子資金の割合を高める等の財源対策の在り方について1期事業以上に十分検討を行う必要がある。
(3) 中部圏
 現在の名古屋空港の滑走路等の処理能力は、21世紀初頭に限界に達すると予測されるため、新しい空港について総合的な調査検討を進め、早期に結論を得た上、関係者が連携してその事業の推進を図る。その際、空域利用の調整が必要であるとともに、定期航空路線の新空港への一元化についての地元調整等が図られている必要がある。また、主体分離方式の導入等事業の推進方策を早急に検討し、結論を得るべきである。
○ また、その他の空港整備についても、次のように推進する。
(1) 地域拠点空港及び地方空港
 空港の新設及び滑走路の延長については、継続事業を中心として進める。新規事業については、需要への対応を基本としつつ、既存施設の高質化を図るための滑走路の延長等所要の整備を推進する。
 ターミナル地域等の整備については、需要への対応を基本としつつ、所要の整備を推進する。
(2) 離島空港、コミューター空港等
 離島空港については、ジェット化等所要の整備を着実に推進する。また、航空機購入費補助制度の改善を図る。
 コミューター空港については、地域の創意工夫による事業運営の確保方策を検討した上で、所要の整備を推進する。
(3) 航空貨物施設
 今後の貨物取扱量の動向等をふまえ、必要に応じた施設の整備を推進する。
(4) 空港周辺環境対策事業の推進
 防音工事、移転補償、緩衝緑地帯の整備等の空港周辺環境対策事業を推進する。
(5) 航空保安施設の整備
 航空衛星システム、管制データリンク等の次世代システムの開発・整備を図るとともに、航空路監視レーダー、2次レーダーのロングレンジ化、ILS、精密進入用灯火等の現行システムを引き続き整備する。
○(別紙)今後の空港整備等にあたっての留意事項
 空港整備特別会計に対する一般財源の拡充を含めた所要の財源の確保に取り組むことが適当である。

2 関西国際空港の整備
(1) 関西国際空港の現況
 関西国際空港は、近畿圏の航空需要の増大に対処するとともに、大阪国際空港の環境問題の解決に寄与することを目的として、大阪湾南東部の泉州沖約5kmの海上に建設された騒音問題のない我が国初の本格的な24時間運用可能な空港であり、平成6年9月4日に開港を迎えた。その後、平成7年6月にはホテル、ショッピングセンター等の入った複合管理棟(エアロプラザ)も開業したところである。
 関西国際空港の特色としては、@24時間空港の利点を生かした多様なダイヤ設定による旅客ニーズへの対応及び物流の効率化が図られること、A関西圏各都市から鉄道、道路、海上交通によるアクセスが容易であること、B国内線、国際線の乗り継ぎが容易であること等が挙げられる。
 現在の空港の利用状況は開港後1年間で航空旅客数1,589万人、同航空貨物量46万トンであり、また、平成7年夏季ダイヤ(8月)の段階で、海外25ケ国2地域52都市(468便/週)、国内線も国内28空港(82便/日)と結ばれている〔2−2−22表〕
 なお、平成7年7月1日より国際線の着陸料の引下げ(2,400円/トン→2,300円/トン)を行ったところであり、今後も乗り入れ便数の増加が期待される。
(2) 全体構想
 関西国際空港の全体構想については、平成3年11月の第6次空港整備五箇年計画の閣議決定において、『関西国際空港の全体構想については、その推進を図るため、調査検討を進めるとともに、事業の健全な経営と円滑な実施を図るための措置に関し関係者間で具体的方策を確立する。』とされたところであり、この閣議決定の趣旨に沿ってボーリング調査等の全体構想調査を実施するなど国と地元が協力して調査、検討を進めてきたところである〔2−2−23表〕〔2−2−24図〕
 平成7年8月には、前述のとおり、航空審議会において「第7次空港整備五箇年計画の基本的考え方」がとりまとめられたところであり、全体構想については前記のように記述されている。今後、運輸省においては、この中間とりまとめの趣旨に沿って適切に対応していくこととしている。

3 新東京国際空港の整備
(1) 空港の現況
 平成6年度において成田空港には、38ケ国50社の航空会社が乗り入れており、その利用状況は、航空機発着回数12万3,000回、年間航空旅客数2,368万人、同航空貨物量158万トンに上っているが、現在供用中の滑走路1本では、既に乗り入れている航空会社からの強い増便要請や、41カ国からの新規乗り入れ希望に対応できない状況にある。
 このため、昭和61年度から二期工事に着手し、平成4年12月には第2旅客ターミナルビルの供用を開始し、さらに、現在、第1旅客ターミナルビル等の既存施設の能力増強に取り組んでいるところである。
 しかしながら、空港能力の拡大を図るためには、新たな滑走路等の整備が是非とも必要であり、成田空港問題の解決が喫緊の課題となっている。
(2) 新東京国際空港の整備に向けて
 未買収地問題を含む成田空港問題については、平和的に話し合いで解決するべく最大限の努力をはらっており、千葉県等の地元自治体や住民代表も参加して、空港と地域の共生の道を話し合うための「成田空港問題円卓会議」が5年9月から6年10月までの間に12回開催され、以下の事項について合意された。
1.平行滑走路の整備は必要であるという運輸省の方針は理解できること。ただし、その用地取得は話し合いにより行うこと。
 横風用滑走路の整備については、平行滑走路が完成する時点であらためて提案すること。なお、横風用滑走路計画用地を現滑走路と平行滑走路間の航空機の地上通路として整備するという運輸省の方針は理解できること。
2.円卓会議で提案のあった「地球的課題の実験村」の構想については、運輸省に検討委員会を設けて、すみやかに具体化のための検討を開始すること。
3.空港の建設・運営における公正を担保するための第三者機関として、共生懇談会(仮称)を設置すること。
4.騒音対策の一層の充実や成田空港周辺振興策などについては、円卓会議の結論に従ってその実現のために努力すること。
 このように、円卓会議において今後の成田空港の整備を話し合いで進めていくことが合意されたことにより、成田空港をめぐる対立構造が解消し、成田空港問題は新しい局面を迎えることとなった。
(3) 新東京国際空港をめぐる新たな動き
 こうした動きを踏まえ、本年1月に、円卓会議には参加していなかった空港建設反対派である小川派の農民から総理大臣及び運輸大臣宛てに、これまでの空港づくりについて反省を求める書簡が発出され、国側としても、空港建設にかかるこれまでの事態について改めて遺憾の意を表した書簡を閣議に報告の上発出した。これに対し、小川派は派としての反対運動の終了を表明し、本年7月には、小川派の農民と国等との間で裁判を通じて争ってきた問題を解消するとともに、今後対等の立場にたってこれからの空港建設の進め方について話し合うことを合意した。
 また、本年6月には、成田空港第2旅客ターミナルビル南側エプロン部分に存する一坪共有地(いわゆる「梅の木共有地」)について、共有持分権が元地主に返還され、その元地主から当該土地の所有権を空港公団が取得した。
 今後とも、円卓会議の結論を最大限尊重してその実現に努めるとともに、これまでの空港づくりの反省の上に立って誠意をもって話し合いを行うことにより、用地の取得や騒音移転の問題の解決に全力を尽くし、地域と共生できる成田空港の整備に積極的に取り組んでいくこととしている。

4 東京国際空港の沖合展開事業の推進
 (新C滑走路の平成8年度末供用開始に向けて整備を推進中)
 東京国際空港では、全国43空港との間に1日約270便(540発着)のネットワークが形成され、年間約4,100万人が利用している。同空港の沖合展開事業は、将来とも首都圏における国内航空交通の中心としての機能を確保するとともに、航空機騒音問題の抜本的解消を図るため、東京都の造成した羽田沖廃棄物埋立地を活用し、羽田空港を沖合に展開するものである〔2−2−25図〕。本事業においては、全体を3期に分けて段階供用を行うこととしており、第1期については、昭和63年7月2日の新A滑走路供用開始をもって完了した。これによって、滑走路年間処理能力は以前より増大し、その後も順次増便が行われてきている。
 第2期については、平成5年9月27日に西側ターミナル施設を供用開始し、完了した。これにより、西側旅客ターミナルビルや立体駐車場等のターミナル施設が整備され、また、空港へのアクセスとして東京モノレールの延伸、京浜急行と東京モノレールとの接続及び湾岸道路と環状8号線の空港への延伸が行われ、航空旅客の利便性が飛躍的に向上した。
 第3期に係る事業については、平成2年度より着手した地盤改良工事を平成6年度で終了し、現在は平成8年度末の新C滑走路供用開始に向けて、用地造成及び滑走路、誘導路等の舗装工事のほか、航空保安施設等の整備を実施している。なお、新B滑走路については、平成11年度末供用開始予定であり、新C滑走路の供用開始後も引き続き整備を推進していく予定である。

5 その他の空港の整備
(1) 整備の現状
 その他の空港の整備についても、昭和42年度を初年度とする第1次から第6次(平成3〜7年度)に至る空港整備五箇年計画に基づき着実に実施してきている。7年10月1日現在で、我が国全体の空港の数は90、うちジェット機の就航が可能な空港(滑走路2,000m級以上)は59%に当たる53空港、大型ジェット機(DC―10、B―747等)の就航が可能な空港(滑走路2,500m級以上)は30%に当たる27空港となっている。その結果、6年度においては、国内航空240路線(大阪国際空港から関西国際空港への移行路線及び震災対応の臨時便による路線を含む)のうち80%に当たる192路線でジェット機が就航し、ジェット機を利用した旅客数は国内航空総旅客数7,455万人の96%に当たる7,190万人を占めるまでに至っている。
(2) 将来の展望
 7年度には新規事業として広島空港、山口宇部空港の滑走路延長事業の実施設計調査費が計上されており、コミューター空港の天草空港も含めて26空港において滑走路の延長事業等を進めることとしている。これらが完成すると空港の数は現在の90から94に、ジェット機の就航可能な空港の数は53から61に、大型ジェット機の就航可能な空港の数は27から36に増加する。この他に新設空港に関して、神戸空港の着工準備調査費が計上されている。



平成7年度

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