平成7年度 運輸白書

第4章 新時代に対応した物流体系の構築
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第2節 効率的な物流体系整備の推進 |
1 モーダルシフト・複合一貫輸送の推進
2 積合せ輸送の推進
3 物流拠点の整備
- 1 モーダルシフト・複合一貫輸送の推進
- (1) モーダルシフト・複合一貫輸送の必要性
- 我が国の現状の物流体系においては、高速道路網を中心とした道路整備の進展と、ドア・ツー・ドア輸送や多頻度小口配送といった高度なサービスの浸透を背景として、機動性に優れたトラック輸送が中心となっている〔2−4−1図〕。
しかし、道路交通混雑の問題、自動車の排ガス等による環境への影響の問題、若年労働力不足、時短の進展といった近年の情勢は、トラック輸送への過度の集中に対する制約となっている。一方、海運・鉄道は、省力・低公害型の大量輸送機関という優れた特性を有しており、 主に長距離幹線輸送においては、荷主・物流事業者等の理解と協力を得つつ、海運・鉄道へのモーダルシフトを図っていく必要がある。また、モーダルシフトの輸送形態としては、トラックのもつ戸口までの輸送機能と海運・鉄道のもつ大量輸送機能を組み合わせた複合一貫輸送が基本であり、荷主のニーズに応じてサービス水準の多様化・高度化を可能にすることが求められる。
- (2) モーダルシフト推進のための施策
- モーダルシフトを進めるためには、海運や鉄道の輸送能力と利便性の向上、またトラックとの積替え効率の向上が不可欠である。運輸省では、そのためのハード・ソフト両面の環境整備について、引き続き金融や税制の優遇措置等の支援措置を講じている。
ハード面では、海運については貨物の積替えを円滑化するためのユニットロードシステムの整備を推進している。このほか、コンテナ船、ロールオン・ロールオフ船、自動車専用船等モーダルシフトに適合した船の整備を進め、船腹調整制度の弾力的運用や内航近代化船に係る船舶特別償却制度の拡充等を行っている。また、高速貨物船テクノスーパーライナーや港湾の物流処理能力を高めるための高速荷役システムの技術開発を進め、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルや港湾と幹線一般道路等を直結する幹線臨港道路の整備を推進している。鉄道については、編成の長大化やダイヤの整備等によりコンテナ列車の輸送力増強を図るとともに、貨物駅の積替え施設の拡充、オンレールトレーラー等の新技術の開発を推進している。
ソフト面では、貨物の特性に応じたモーダルシフト推進方策やモーダルシフト量に関する調査、周知活動の一環として導入事例集の作成及び配布、地方運輸局におけるモーダルシフト推進協議会の設置に係る指導、助言等の施策を行っている。
- (3) 一貫パレチゼーションの推進
- 複合一貫輸送においては、貨物の積替えが必然的に伴うことから、積替えの円滑化は複合一貫輸送の推進に必要不可欠である。一貫パレチゼーションは、貨物を荷主から荷受け人まで一つのパレットに積載して輸送する輸送方法であり、積替えの際にフォークリフト等の荷役機械を使用するので大幅な効率化を図ることが出来る。さらに、パレットの標準化によって、使用効率を向上させることができる。
このため運輸省では、JIS規格とされたT11型パレットの普及を促進するための金融支援、同パレット導入の成功事例集の配布等を通じての事業者に対する周知活動、さらには、同パレットをアジア地域における標準的パレットとして普及させることを目的とした、日韓物流標準化協議の開催等一貫パレチゼーション推進方策を積極的に展開している。
- 2 積合せ輸送の推進
- (1) 積合せ輸送の意義
- トラック輸送は、小ロットかつ多頻度の利用が可能な機動性に特長があるものの、自動車交通量の増加に伴う環境問題や道路交通混雑等に対処するとともに、物流コストの低減という要請に応えるためには、過度の交錯輸送を避ける等、輸送効率の向上を図ることが不可欠となっている。このためには、トラック一台当たりの積載効率を高めていくための取り組みが必要である〔2−4−2表〕。
たとえば、複数荷主の貨物の積合せができず、片道輸送が多い自家用トラックは、積載効率が低くなる場合が多いため、営業用トラックによる積合せ輸送を積極的に活用していく必要がある。また、積合せ輸送を効果的に推進するためには、荷主、物流事業者間の情報共有や、配車に関する情報システムを高度化することが必要である。
- (2) 幹線共同運行の推進
- トラックの長距離幹線輸送については、積載効率を上げることによるメリットが特に大きい。現状でも、土日等の閑散期において特別積合せ運送事業者が協力して特定地域への共同運行を行っている事例がある。また、複数の荷主が協力して情報交換をし、帰り荷を確保するといった事例もある。これらは、運送業者側のコスト削減のみならず、環境問題の改善等にも資するものであり、今後とも荷主企業を含む関係者の積極的な取り組みが期待される。
また、幹線輸送の共同運行を推進するためには、都市内及び周辺部において、幹線トラック輸送と地域内トラック輸送に携わる複数の貨物自動車運送事業者が利用可能な公共トラックターミナルの整備が必要である。
- (3) 地域内共同集配システムの構築
- 都市内・地域内の商業・業務集積地域においては、配送はトラック輸送に依存せざるを得ない。しかし、荷捌き場等の用地の確保が非常に困難であることから、路上駐車の増加と相まって慢性的な交通混雑の原因の一つとなっており、共同集配の推進が急務となっている。
これに対して、6年3月に運輸政策審議会で「地域内物流効率化のための方策について」の答申がまとめられた。運輸省ではこれを受けて、各地方運輸局等を通じ、地域内の共同集配システムの構築に向けて、関係者からなる協議会を設置している。福岡市の天神地区では、地元経済団体、トラック協会、関係行政機関等による協議会を開き、6年9月に第3セクターによる共同輸送会社が設立された。この他にも、広島市や横浜市のみなとみらい21地区等でも既に協議会が開催される等、各地で取り組みが進んでいる。
また、4年10月より施行された中小企業流通業務効率化促進法に基づき、中小企業者たる運送事業者、荷主等が共同で実施する流通業務効率化事業に対する支援を行っており、これまでに土浦、札幌、八戸の3協同組合の効率化計画の認定を行った。さらに、積合せ輸送の拠点となる共同配送センター等の建設については、日本開発銀行等による融資や税制優遇措置を活用している。
- 3 物流拠点の整備
- 港湾、貨物駅、倉庫、トラックターミナルといった物流拠点は、貨物の保管、荷捌き等貨物流通活動の円滑化のための様々な活動が行われる物流の結節点であり、その整備の如何が、物流システム全体の効率化やサービス水準に大きな影響を及ぼす。このため、港湾、空港といった基本インフラの整備を着実に進めるとともに、倉庫、トラックターミナル等民間事業者により整備される物流拠点についても、種々の優遇措置等により整備を促進している。
特に近年では、物流ニーズの高度化、多様化に対応して保管、荷捌き、流通加工機能、高度情報処理機能等を併せ持った、複合的物流拠点の整備が求められている。また、物流コストのより一層の低減、輸入促進等物流構造の変革に対応し、自動化・情報化を進めながら物流機能の集約を行う流通対応型物流施設、輸入対応型物流施設等の整備が求められている。これらに対応するため、「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法」に基づく金融や税制の優遇措置等によって支援を行っている。また、「流通業務市街地の整備に関する法律」に基づく金融や税制の優遇措置等を活用して、地方都市周辺における流通業務市街地の整備を促進している。
しかしながら、民間事業者による公共的な物流拠点の整備については、初期投資が莫大であるうえに投下資本の回収に時間がかかることから、なかなか整備が進まない面が見られる。特に都市部においては、用地取得の困難性から物流拠点の絶対数の不足、既存施設の老朽化等の問題が生じ、拠点整備の一層の促進が必要になっており、運輸政策審議会物流部会において、物流拠点の整備のあり方について検討を行っている。

平成7年度

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