平成7年度 運輸白書

第5章 観光レクリエーションの振興

第3節 国際観光交流の促進


(1) 外国人訪日旅行の促進
(ア) 外国人の来訪促進活動の充実
 訪日外国人旅行者数を増加させることは、各国が我が国を正しく理解し、国際摩擦を減少させるために極めて重要なことである。
 しかしながら、平成6年の訪日外国人旅行者数は347万人と日本人海外旅行者数1,358万人の約26%にとどまっており、来訪外客数と海外旅行者数の比率で比較すると、フランスの366%、米国の101%等に比べ先進国中最低であるのみならず、香港の361%、韓国の138%等と近隣アジア諸国・地域に比べても低い水準となっている。また、円高の進行により訪日旅行費用の高騰が進む状況において、訪日外国人旅行者数は伸び悩んでいる現状にある。
 このため、運輸省としては外国人の来訪促進活動の充実を図るため、以下の施策を重点的に推進している。
(イ) 国際コンベンションの振興
(a) コンベンション法による国際コンベンションの振興
 国際会議(国際コンベンション)を我が国で開催することは、外国人参加者にとって我が国を理解する絶好の機会になるほか、地域経済の活性化や地域の国際化にも貢献する。
 しかし、我が国の国際コンベンションの開催件数は都市の知名度の低さ、誘致のための情報収集力の不足、滞在費用の割高感等の理由から欧米諸国に比較してまだまだ少なく、都市別に見ても欧米の主要都市はもとより、アジアのシンガポール、香港等の都市にも水をあけられている。
 このような状況の中で6年6月に制定された「国際会議等の誘致の促進及び開催の円滑化等による国際観光の振興に関する法律」(コンベンション法)が同年9月に施行され、国、国際観光振興会及び地方自冶体が一体となって総合的な振興策を講じており、運輸大臣は同年10月及び12月に同法に基づき42都市を「国際会議観光都市」として認定した〔2−5−3図〕
 同法に基づき、国際観光振興会は、認定を受けた都市に対して国際コンベンション等の誘致を促進するため、誘致に関する情報の定期的提供、海外における国際会議観光都市の宣伝等を行うとともに、国際コンベンション等の開催の円滑化を図るため、寄付金の募集、交付金の交付等の事業を行っている。
 さらに、コンベンションの一層の振興を図るため、運輸省をはじめ、国際観光振興会、都市・コンベンションビューロー及びコンベンション関連事業者によって構成される日本コングレス・コンベンション・ビューロー(JCCB)が本年6月に設立された。このJCCBは、コンベンションの誘致、人材育成等の各種事業を関係者が一体となって実施するとともに、コンベンションの振興のための各種の施策を検討することとしている。
(b) 国際会議場の整備
 運輸省は、民活法に基づき、整備計画の認定を受け国際会議場の整備を行う民間事業者に対し支援を行っており、6年度までに3施設に係る整備計画の認定を行った。
 そのうち、横浜国際平和会議場については3年7月より、宇奈月国際会館については5年8月より、それぞれ供用を開始している。また、4年7月に認定したりんくうゲートタワービル国際会議場(大阪府泉佐野市)については、引き続き整備を推進しているところである。
(ウ) 国際観光振興会による外国人の来訪促進活動
 運輸省においては、外国人の来訪促進活動を推進するため、日本の観光宣伝、観光情報提供等を国際観光振興会を通じて行っている。
 7年度からは、振興会に新たに設置された「国際コンベンション誘致センター」において国際コンベンションの積極的な誘致活動を展開するとともに、コンピュータ通信ネットワーク「インターネット」を活用した効率的で幅広い情報の海外への提供事業、草の根レベルでの交流を支援する「国際観光交流支援事業」を実施している。
 また、振興会の海外における観光宣伝や国内観光案内所の運営等の業務についても引き続き効率化を図ることとしている。
(エ) 登録ホテル・旅館等の整備
 運輸省では、訪日外国人の利便の増進、国際観光の振興の観点から、国際観光ホテル整備法に基づき、ハード・ソフト両面からみて外国人観光客の宿泊に適したホテル・旅館の登録を行い、税制上の優遇措置等によりその整備を推進し、また、これらの登録ホテル・旅館に関する情報を訪日外国人観光客に提供している。また、国際観光レストラン登録規程に基づき、外国人観光客が容易かつ快適に食事ができる優秀なレストランについても登録を行い、国内における外国人観光客の受入体制の整備を行っている。
 なお7年9月末現在、925軒のホテル、1,886軒の旅館及び147軒のレストランが登録されている。
(2) 世界観光機関(WTO)アジア太平洋事務所の設置
 WTOは、昭和45年に採択されたWTO憲章に基づく観光分野の世界最大の国際機関であるが、近年観光成長が著しいアジア太平洋地域における活動強化のため、平成5年10月のWTO総会で地域事務所を日本に設置することが決定された。その後の準備を経て本事務所が関西国際空港に隣接するりんくうタウン(大阪府泉佐野市)内に設立され7年6月26日に正式に業務を開始した。
 本事務所は、我が国に設置された国際機関及び国際機関の事務所としては19番目、関西では2番目のものであり、我が国としては、本事務所の活動支援を通じてアジア太平洋地域における国際観光交流を一層促進し、アジア太平洋諸国と我が国との信頼関係の一層の強化を図っていくこととしている。
(3) 二国間観光協議の推進
 旅行者の往来が多く、市民レベル、地方自治体レベルにおいて交流が盛んに行われている米国、韓国、カナダ等今後我が国の国際観光交流を振興していく上で重要な国については官民協力の下で二国間観光協議を定期的に開催し、二国間の観光交流の充実・活性化のための具体的推進方策の協議を行っている。
(4) 国際協力の推進
 近年豊富な観光資源を活用して経済発展を図ろうとする開発途上国の観光重視の姿勢を反映して、観光関連の国際協力の要請が増大している。
 このため、二国間技術協力としてJICAを通じた観光分野の研修員の受入れ、専門家の派遣及び開発調査等に積極的に対応する一方、観光関連の国際協力としてWTO、OECD、ESCAP、APEC等の国際機関・団体との連携強化を図っている。特に、7年10月には金沢市で第7回APEC観光WGが開催され、アジア太平洋地域の観光の発展に関する諸問題について討議が行われた。また、7年9月には大阪で「アセアンフェア'95 in OSAKA」が開催されるなど、ASEANセンターの観光分野の事業に協力している。



平成7年度

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