第3節 災害に対する取り組み

 災害対策は、国、地方公共団体、公共機関、住民等の協力の下に、総合的、統一的に実施される必要がある。このため、内閣総理大臣を会長、全閣僚等を委員とする中央防災会議を総理府に設置し、各種防災計画の基本となる防災基本計画を作成し、及びその実施を推進するとともに、内閣総理大臣の諮問に応じて防災に関する重要事項の審議などを行っている。
 いま仮に震災や集中豪雨等による水害等が発生した場合、大規模な被害が発生し、特に公共交通や道路のネットワークが寸断されると、生活機能が麻痺するとともに、災害応急対策や災害復旧・復興のための取り組みも十分にできない状況となる。
 このため、予報・監視体制の強化、交通施設の耐震性や防水機能の向上といった事前の対策、リダンダンシー(代替輸送手段、経路)の確保、復旧の迅速化等の事後の対策の両面から、災害対策を推進する必要がある。

1 最近発生した主要な災害への取り組み

(1) 有珠山噴火における対応

 (災害の状況)
 有珠山では、平成12年3月27日午前から火山性の地震が次第に増加し、翌28日からは有感地震や低周波地震の回数が増加していった。そうした中、気象庁は、29日午前11時10分に「今後数日以内に噴火の可能性が高くなっている」旨の緊急火山情報第1号を発表した。そこで、現地では事前に作成・公表されたハザードマップをもとにして、同日午後1時に壮暼町に発令されたのを初めとし、各市町村に対し、順次避難勧告が発令され、午後6時30分には避難指示に切り替え30日までには住民避難をほぼ完了した。31日には、小有珠の亀裂、洞爺湖温泉の断層群、及び洞爺湖から虻田に抜ける国道230号線沿いに新たな亀裂が確認され、同日午後1時10分頃、有珠山は西山山麓で噴火した。4月1日には、有珠山北西側の金比羅山西側山麓から新たな噴火が始まり、5日には段差約10mの陥没地形を形成していることが確認された。その後も噴火活動が断続的に続いているが、沈静化しており終息に向かいつつある。

 (国の対応状況)
 3月29日と翌30日の両日に災害対策関係省庁連絡会議を開催し、有珠山の火山活動を巡る課題に関する関係省庁間の密な連携を確認した。3月31日午後1時10分頃の最初の噴火後には、直ちに、関係閣僚会議を開催し、「有珠山噴火非常災害対策本部」及び「有珠山噴火非常災害現地対策本部」の設置等を決定した。
 気象庁は、関係機関との連携の下に、有珠山についての観測データを一元的に監視・解析し、有珠山の火山活動の動向を的確に把握し、「火山噴火予知連絡会」を開催するなどして避難指示地域の解除など地元の自治体が行う防災対応の判断に必要な情報の提供を行った。
 海上保安庁では、対策本部を設置し、巡視船艇・航空機を急行させ、付近航行船舶及び周辺漁港等に対する注意喚起、ホタテの養殖作業に対する警戒支援を実施するとともに、住民の海上からの避難、緊急物資の輸送に備えた。
 運輸省では、3月29日、北海道運輸局を通してJR北海道、JR貨物、及び有珠山ロープウェイ(28日から当分間自主運休中)に対して、列車運転休止を含めた災害防止に万全の体制をとることを指示し、また、伊達市からの住民の緊急避難用のバス要請を受けて北海道運輸局から北海道バス協会を通し、道南バス、北海観光バスに要請し、17台が対応したのをはじめ、3月31日には、JR北海道が緊急避難列車を運行した。
 その後有珠山の火山活動が徐々に沈静化するのが確認されるのに伴い、JR貨物、JR北海道が運行を再開し、6月8日には、JR全線が復旧した。
 その間、公共交通機関であるJR北海道のリダンダンシー(代替交通手段)として、バスが活用され、住民の緊急避難や通勤通学、買い物等のための輸送に貢献した。
 有珠山噴火によって、有珠山周辺だけでなく北海道経済全体への影響が懸念されている。このため北海道の経済活性化を支援する運動として関係者が一致協力して「ガンバル フンバル 北海道」キャンペーンを実施した。運輸省では、宅配業者に北海道販売促進キャンペーンの実施など、このキャンペーンの協力を依頼した。]

(2) 三宅島火山活動における対応

 気象庁は、12年6月26日18時30分頃から火山性地震が多発したのを受けて、19時30分に臨時火山情報第1号を発表し、住民に対し火山活動について、注意喚起した。その後も、関係機関との連携の下に、三宅島についての観測データを一元的に監視・解析し、三宅島の火山活動の動向を的確に把握し、島内作業者の安全確保、島外避難者の一時帰宅や帰島時期の判断などに必要な情報の発表に努めている。
 海上保安庁は、対策本部を設置し、住民の島外避難等にそなえ、巡視船艇、航空機を配備するとともに、航行警報による情報提供を行いつつ、気象庁職員等による観測調査に対する協力を行った。

(3) 平成11年台風第18号への対応

 9月19日に宮古島の南東の海上で発生した台風第18号は、各地に暴風、大雨、高潮などの影響をもたらした。特に熊本県不知火町において、甚大な高潮被害が発生したのをはじめ、西日本を中心に各地で高潮災害が発生した。運輸省では、鉄道、海上交通、航空の運行(航)状況及び鉄道、港湾、海岸、空港の被災状況についての情報収集を行うとともに、関係支分部局から、鉄道及び海運等関連事業者に対し、注意喚起及び安全運転の確保について指示した。また、海岸四省庁(運輸省港湾局、農林水産省構造改善局、水産庁及び建設省河川局)では、高潮災害発生防止のため緊急点検を全国的に行い、危険個所の把握を行った。

(4) 鳥取県西部地震への対応

 12年10月6日13時30分、鳥取県西部でマグニチュード7.3(暫定値)の地震が発生し、鳥取県境港市、日野町で震度6強、西伯町、会見町、岸本町、日吉津村、淀江町、溝口町で震度6弱、鳥取県米子市、岡山県新見市、哲多町、香川県の土庄町等で震度5強を観測したほか、中国・近畿・四国地方を中心に震度1〜5弱を観測した。この地震の震源は、米子市の南約20kmに位置し、震源の深さは11kmで、陸域の浅い地震である。
 余震の震源は、北西−南東方向に約30kmにわたって分布しており、地震波の解析などから、この地震は、左横ずれの断層運動(相手の地盤が左方向にずれること)によるものと推定される。余震は、順調に減衰しているが、この地震により、鳥取県西部を中心に負傷者137名等の被害が生じている。(10月13日現在)。

コラム  有珠山噴火に伴う北海道観光支援
 北海道の観光消費額は1兆円を超えるなど、観光は北海道の重要な基幹産業であるが、有珠山噴火の直後、周辺市町はもとより噴火の影響がない地域においても、風評による宿泊客のキャンセル及び旅行の手控えが広がるおそれがあった。このため、運輸省では、4月18日に「有珠山噴火に伴う北海道観光対策連絡会議」を開催し、道庁による「被害状況と周辺観光地への影響に関する報告」、関係事業者による「対応状況の報告」を行うとともに、当面の対応方針(関係者が正確な情報の提供に努めること、修学旅行の行程を道内で変更してもらうよう理解を求めること、北海道への観光キャンペーンの実施について早急に検討する等)を決定した。
 それを受けて、4月26日、6月29日に計2回の「北海道観光キャンペーン打ち合わせ会議」を開催し、来道観光客等に対する有珠山及び北海道観光についての正確な情報の提供、旅行業者による「ガンバル フンバル 北海道」キャンペーン、JR各社による北海道企画商品の造成、航空会社による特定割引運賃の実施、東アジアキャンペーン(JNTOと北海道観光プロモーション協議会の主催による韓国、香港、台湾の旅行会社やマスコミの招請)をその内容とする「北海道観光キャンペーン」を実施した。
 「ガンバル フンバル 北海道」キャンペーン初日の5月1日には、北海道開発庁長官、北海道開発総括政務次官、北海道知事等を東京・有楽町の「北海道どさんこプラザ」に迎え、オープニングイベントが開催された。

2 災害の予報・監視体制の強化

(1) 気象情報等の提供

 山崩れ・がけ崩れ等の土砂災害は、瞬間的な雨の強さよりも地中に貯まっている雨の量(貯雨量)と関係が深い。このため、気象庁では全国を約17,000の5km四方の領域に分割し、その領域毎にレーダー・アメダス解析雨量を用いて土砂災害の危険度の状況を算出するとともに、降水短時間予報を用いて3時間先までの危険度も予測する土壌雨量指数を開発した。12年7月1日から、気象状況を総合的に判断する際にこの指数も活用し、大雨警報において、土砂災害に対して一層の警戒を呼びかけている。
 12年度には、数値予報用スーパーコンピューターシステムを更新し、集中豪雨等の予測精度の向上を図るための「メソ数値予報モデル」等の運用を開始するとともに局地的な豪雨の予測等に資するため、風の鉛直構造を連続的に自動観測できる「ウインドプロファイラ」を整備し、時間的、空間的にきめ細かな防災気象情報の提供を行う。また、数値モデルによる高潮及び波浪予測の高度化を通じた予警報等の精度向上を図る。
 11年8月からはエルニーニョ現象の現況と見通しに関する情報を提供しており、12年3月からは世界の異常気象等をとりまとめた全地球異常気象監視速報の提供を開始している。

コラム  地震、火山噴火等の災害時における情報提供
 気象庁では、地震・津波・火山活動による災害防止や被害軽減のため、全国に展開した津波地震早期検知網などから得られる観測データを24時間監視・解析・処理し、防災対策に資する各種情報を発表している。
1.津波予報・地震情報については、地震発生後2分程度で震度3以上の地域を、3分程度で津波予報を、5〜10分程度で震源・市町村震度・各地の震度等に関する情報を発表している。津波予報は津波による災害防止のための、地震情報は防災機関の救難・応急対策等のための初動対応に役立てられている。さらに気象庁では地震情報の高度化のため、面的に推定した震度分布や、地震動が到達する前に震源・規模や予想される震度などの情報を伝える「ナウキャスト地震情報」の実用化をめざしている。
2.火山活動の状況を総合的に判断し、生命・身体に関わる火山活動が発生した場合には緊急火山情報を、火山活動に異常が発生し、注意が必要なときには随時臨時火山情報を発表して、火山災害の防止と被害の軽減に努めている。

コラム  台風と熱帯低気圧の表現の変更
 気象庁では、これまで最大風速が17m/s以上の熱帯低気圧を「台風」、それに満たないものを「弱い熱帯低気圧」と定義していた。また、台風については、「大きさ」を平均風速15m/s以上の強風域の半径で、「強さ」を最大風速でそれぞれ5段階に区分し、気象情報の中ではこれらを組み合わせて、例えば「小型で弱い台風」のように表現してきた。
 平成11年には、「弱い熱帯低気圧」や「小型で弱い台風」に伴う大雨による気象災害が多発したことから、防災効果をより一層高めるため、12年6月1日から、「弱い熱帯低気圧」は単に「熱帯低気圧」と呼ぶことにし、台風の大きさと強さに関する表現のうち「弱い」、「小さい」、「並み」といった表現を使用しないことにした。

(2) 気象サービスの高度化の推進

 気象庁は、気象等の注意報・警報、地震・津波情報等の国民の生命・財産に直結する防災情報、広く国民生活や我が国の社会・経済活動に必要な天気予報等の提供を行っている。
 高度情報化社会の中で気象情報が基盤的な情報として果たす役割はますます重要なものとなっており、気象庁では防災関係機関の情報通信システムとのネットワーク化を進めるとともに、国民・社会からの多様化するニーズに応える気象情報サービスの実現に向けて民間気象事業の振興を図ってきている。
 気象注意報・警報、地震・津波情報は、関係省庁・地方公共団体等の防災関係機関に迅速に伝達される一方、テレビ・ラジオ等の報道機関を通して国民に伝えられている。近年、地方公共団体等の防災システムとのネットワーク化による、より高度な防災気象情報の発表や効果的な防災対策が実現してきている。
 また、情報化社会の中で気象情報への多様化するニーズに応えるべく、気象庁は民間部門における活力の活用を図るために(財)気象業務支援センターを通して各種気象情報を民間気象事業者に提供してきている。これらの情報をもとに、民間気象事業者は個別事業者等の活動に向けた気象情報サービスを行っている。このほか、報道機関においては民間気象事業者と協力しつつ様々な天気番組を提供してきている。さらに、近年は、インターネット・衛星デジタル放送・携帯電話・CATVなど多様な新しいメディアを通じた気象情報サービスが急激に広がっており、気象情報を多様なメディアを通して入手できる時代が到来している。

(3) 地震対策

 気象庁は、地震、津波による災害の防止・軽減を図るため、全国に地震計や震度計を整備して地震活動を24時間監視し、津波予報及び地震・津波に関する情報等を提供している。
 11年度から、津波予報区を都道府県単位程度に細分化し、津波の高さを定量的に予測する新しい津波予報を開始するとともに、より的確な地震・津波に関する防災情報の提供のため、10・11年度の仙台・札幌管区気象台に続き、12年度には福岡管区気象台の地震津波監視システムの更新を行うこととしている。また、地震発生直後に大きな地震動が到達する前に揺れの大きさ等を予想し伝える「ナウキャスト地震情報」の提供のための調査を行っている。
 さらに、気象庁長官は東海地震に係る地震予知情報を内閣総理大臣に報告する責務を負っている。このため、東海地域とその周辺に地殻岩石歪計及び海底地震計システム等による観測網を整備し、24時間体制で当該地域の地殻変動の状態を監視している。

(4) 火山対策
 気象庁は、全国86の活火山のうち、活動が活発で噴火した場合に社会的影響の大きい20火山について常時監視し、的確に火山情報を発表している。また、噴火等が発生した場合には、直ちに火山機動観測班を派遣し、火山観測・監視体制を強化するとともに、大学等の関係機関とも連携をとり、火山災害の防止・軽減に資するための的確な情報の発表に努めている。

3 各交通機関等における防災対策

(1) 鉄道の防災対策

 鉄道事業者が落石・雪崩等の自然災害から鉄道施設を守るために行う防災施設整備費や、日本鉄道建設公団が行う青函トンネルの機能保全のための改修事業について助成措置を講じている。

(2) 港湾の防災対策

 地震対策として、全国の主要港湾等において、耐震強化岸壁や防災拠点等の整備、既存施設の耐震性の向上を図る。また、津波、高潮等への対策として海岸保全施設の整備を推進する。

(3) 海上の防災対策

 海上保安庁は、油排出事故等の海上災害や地震等の自然災害に備え、排出油防除資機材、災害対応能力を強化した巡視船等を整備しており、発災時には、巡視船艇・航空機による被害状況調査や救難活動等を迅速かつ的確に実施するととともに、対策本部の設置等の災害応急対策を確保することとしている。さらに、災害応急対策に資する沿岸海域環境保全情報の整備を進めており、11年4月からは、その情報を油の拡散状況・漂流予測結果とともに、電子画面上に表示できるシステム(沿岸域情報管理システム)の運用を開始した。

(4) 航空の防災対策

 国際民間航空条約第14付属書の基準に準拠した「空港緊急計画」の策定を推進するとともに、空港管理者と消防機関、医療機関及び空港内事業者との応援協定の締結推進を図っている。また、「災害時における救援航空機等の安全対策マニュアル」を策定し、大規模災害時の円滑な救援活動と航空安全の確保を図っている。

4 技術開発の災害への応用

 運輸省では、陸・海・空各方面において新技術開発に取り組んでいるところであるが、災害対策に資する技術開発として以下のものがある。

(1) 耐震強化岸壁・臨海部防災拠点

 7年1月の阪神・淡路大震災において、陸上の交通網が分断し海上からの支援活動の重要性が再認識されたことを教訓に耐震強化岸壁及び臨海部における防災拠点の整備を進めている。
 なかでも、緊急物資等を扱う耐震強化岸壁の整備については、「港湾における大規模地震対策施設整備の基本方針」に基づき、鋭意整備を進めてきているが、12年3月現在でも約45%の進捗である。
 このような状況に鑑み、耐震強化岸壁を補完する係留施設として、震災時に被災地に曳航し住民の避難や復旧・復興活動を支援する「浮体式防災基地」を10年度より三大湾において緊急整備し、12年4月に整備を完了した。これは、緊急時において、物資や人員輸送する船舶が係留できるほか、食糧・医療物資の貯蔵、防災用ヘリポート等多目的に活用できるものである。

(2) TSL防災船”希望”

 テクノスーパーライナー(TSL)は、平成元年から7年度にかけて、国の支援のもとに研究開発された新形式超高速船である。7年11月に総合実験を終了し、9年4月から静岡県TSL防災船”希望”として就航している。静岡県では、高速で輸送能力に優れた同船を大規模災害時の救援救助活動等に活用するとともに、平常時には防災訓練や青少年等を対象とした体験乗船を行っているほか、カーフェリーとして運航している。

浮体式防災基地の災害時利用想定図
浮体式防災基地の災害時利用想定図

○発災時の活動
・孤立地区の負傷者、弱者、病人などの移送
・県警機動隊や医療団など支援要員の派遣
・伊豆地区等の道路通行不能時の観光客の避難、脱出
・食料などの物資や応急復旧に必要な資機材の輸送 等

(3) 地震・火山噴火、気象予測のための技術開発

 気象庁では、気象研究所を中心に、気候変動、台風・集中豪雨、地震・津波、火山噴火等の機構の解明及び、予知・予測技術の高度化に関する研究を行っている。
 具体的には、社会的にも要請が大きい地震の予知等について、8年度から「内陸部の地震空白域における地震・地殻活動に関する研究」を、11年度から「地震発生過程の詳細なモデリングによる東海地震発生の精度向上に関する研究」を推進している。
 また、気候変動に関しては、12年度から「地球温暖化によるわが国の気候変化予測に関する研究」を開始した。気候変動の実態把握、変動機構の解明、気候モデルの開発・改良の研究等を行い、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」等の活動へ貢献するとともに、科学的知見の蓄積及び気候変動予測の信頼性の向上を目指している。
(4) 海洋に関する技術開発の推進

 気象庁では、船舶の安全運航等のため、波浪、高潮、海流、海氷等の観測及び予報技術の高度化に努めている。とりわけ、地球観測衛星・海洋気象ブイロボット等の観測データの新たな利用技術の開発や、海洋大循環モデルを用いて観測データの解析を行う同化技術等の開発を進めている。
 このほか海洋データの即時的な国際相互利用を図るNEAR-GOOSリアルタイムデータベースの高度化、流出油の漂流予測手法の高度化、エルニーニョ現象の解明と予測の高度化、地球温暖化と深く関わる海洋での炭素循環のモデルの構築等を進めている。

(5) インフラ図面の電子化

 港湾局においては、11年度第二次補正予算において配算された港湾整備事業調査費で「インフラ図面の電子化」に取り組んでいる。これが完成されることにより、大規模地震時において、復旧断面や被害額等を地震直後に求めることができる。

5 災害応急対策の実施

(1) 国としての災害応急体制

 大規模な地震等による災害が発生した際には、災害応急対策を迅速かつ円滑に実施するために、被害状況や応急対策に関する情報を的確に収集し、迅速に伝達する必要がある。特に、災害の初期の段階において、その被害規模や程度を把握することが重要である。
 大規模地震発生時における官邸への迅速な報告連絡を行うため、8年5月11日に、内閣情報集約センターが設立され、24時間体制で情報収集等の対応に当たっており、運輸省も気象庁、海上保安庁を中心に体制を整備している。
 また、内閣としての初動措置を始動するため、大規模地震時等、社会的影響の大きい突発的災害が発生した場合、運輸省を始めとして各省庁の局長等の幹部は、緊急参集チームとして官邸に参集し、情報集約を行うこととなっている。
 さらに、内閣官房における危機管理機能を強化するため、10年度に、内閣危機管理監及び危機管理関係省庁連絡会議が設置され、後者には運輸政策局長、海上保安庁警備救難監及び気象庁次長がメンバーとなっており、政府の一員として危機管理に適切に対応することとなっている。

(2) リダンダンシーの確保等の具体的な対応

 大規模災害により交通システムに大きな障害が生じた場合、ライフラインの確保のためにも速やかにリダンダンシー(代替輸送手段、経路)を確保することが必要となる。
 運輸省では、(1)で述べた体制により速やかに情報収集を行い、本省、外局並びに地方運輸局、管区海上保安部、管区気象台及び港湾建設局等の地方機関が一体となり、他省庁や地方公共団体等の関係機関と連携しつつ、リダンダンシー確保に関して、交通事業者に対する指示等を適切に行っている。
 具体的には、(第3節 1(1))で述べた有珠山噴火の際のJR北海道等に対する各種対応がこれに該当し、今後も、緊急の対応を適切に行うべく努めることとしている。

6 災害復旧事業

 被災した施設の早期復旧を図るため、公共土木施設災害復旧事業費国費負担法に基づく災害復旧事業を実施している。また、災害復旧事業として採択した箇所、又はこれを含めた一連の施設の再度の災害を防止するため、災害関連事業を実施している。