第3章 環境と交通

第1節 環境問題の現状

 大気中の二酸化炭素(CO2)等の温室効果ガス濃度が上昇することによって引き起こされる地球温暖化問題については、1997年の気候変動枠組条約第3回締約国会議で採択された京都議定書において、我が国は2008年から2012年までの間に1990年比6%の温室効果ガス排出削減を行うことが定められた。
 京都議定書の目標達成のためには、我が国全体のCO2排出量の2割を占める交通部門について、2010年に何も対策を取らない自然体ケース(40%増)に比べて炭素換算で1,300万トンのCO2排出削減(17%増に抑制)が必要である。
 しかし、交通部門のCO2排出量については、増加傾向が続き、1998年時点で1990年比21%増と、既に17%増に抑えるという目標値を上回っている。
 また、我が国全体に占める交通部門の排出量のシェアも、1990年の19%から1998年時点で22%と増加している〔2−3−1図、2−3−2図〕。
 一方、工場・事業場や自動車から排出される窒素酸化物(NOx)、浮遊粒子状物質(SPM)等によって生じる地域環境問題については、1998年の大都市道路沿道地域における(NOx)、SPMに係る環境基準の達成割合がそれぞれ36%、12%にすぎない等深刻な状況にあり、1999年にはこの数値が改善したものの、大都市部における大気汚染が社会問題化している〔2−3−3図〕。
 また、三大都市圏における公害訴訟の進展、東京都のディーゼル車規制の動向等を踏まえると、都市部における大気汚染が地域環境問題として緊急に解決を要する。
 地域環境問題に関し、騒音問題も重要な問題の一つとなっている。自動車騒音について、環境基準の達成状況(平成10年度)に関し、全国の測定地点(4,688地点)のうち、4時間帯(朝、昼、夕、夜間)全てで環境基準が達成されたのは619地点(13.2%)にすぎない。航空機騒音について、10年度において設置する特定飛行場のうち8の飛行場では環境基準が達成されているが、大阪(伊丹)、名古屋等6飛行場において環境基準が依然達成されていない状況にある。
 海洋汚染に関し、11年に我が国周辺海域において海上保安庁が確認した海洋汚染の発生件数は589件で、昭和48年に統計を取りはじめて以来、最小となった〔2−3−4図〕。
 また、我が国周辺海域等における海水及び海底堆積物中の油分、PCB、重金属等による汚染は全体的に低いレベルであり、経年変化は認められない。
 循環型社会の構築に関し、現在、我が国における一般廃棄物、産業廃棄物の総排出量は、それぞれ約5,120万トン、約4億1,500万トン(いずれも平成9年度)に上っており、リサイクル率はそれぞれ約11%、約41%にすぎない。
 さらに、廃棄物の最終処分場についても、今後の使用可能年数(残余年数)が、一般廃棄物では11.2年、産業廃棄物では3.1年(いずれも9年度全国平均)と厳しい状況にある。

2−3−1図 CO2排出量の主要部門別推移
2−3−2図 交通部門CO2排出量の推移
2−3−3図 環境基準適合状況の推移
2−3−4図 海洋汚染の発生確認件数の推移

第2節 自動車交通のグリーン化

1 自動車交通のグリーン化の必要性

 自動車は、その利便性の高さにより、社会にとって不可欠な存在となり、近年に至っても保有台数は急激に増加している。(平成元年約5,800万台→平成11年約7,400万台)
 また、自動車は、交通部門からのCO2の約9割、大都市部におけるNOxの約4割(クレーン車、フォークリフト等の特殊自動車を加えれば、約6割)を排出しており、環境負荷の小さい持続可能な交通体系を実現するには、自動車起因の環境問題への対処が最大の課題となる。
 自動車交通が抱える地球環境問題及び地域環境問題を解決するためには、自動車社会の利便性を確保しつつ、環境負荷の小さな自動車社会を構築するための、総合的な対策である「自動車交通のグリーン化」を進める必要がある。

2 自動車交通のグリーン化の内容
 自動車交通のグリーン化を進めるためには、環境自動車の普及促進を図るとともに、自動車税制のグリーン化、交通需要マネジメント(TDM)による環境にやさしい都市交通システムの構築、自動車燃料のグリーン化等あらゆる政策手段について検討し、総合的な施策を講ずることが必要である。

(1) 環境自動車の開発・普及

 CO2、NOx、PMの排出が少なく、環境負荷の小さい自動車(環境自動車)の普及促進を図るため、燃料電池車やジメチルエーテル車等の技術開発、ハイブリッド車や圧縮天然ガス(CNG)車等の低公害車、超低燃費車をはじめとする低燃費車の普及を促進するための事業に取り組んでいる。このため、後述する自動車税制のグリーン化の推進を図るほか、次世代低公害車技術評価事業、先駆的低公害車実用評価事業を実施する。

(2) 交通需要マネジメント(TDM)

 都市交通においては、自動車がその優れた利便性により大きく貢献してきた一方、自動車への過度の依存が、排出ガスや騒音等により沿道環境を悪化させる要因となっている。
 都市部におけるNOx、SPMによる大気汚染の抑制や地球温暖化問題を克服するためには、環境の改善に貢献する持続可能な都市交通の実現を目指す必要がある。
 このため、自動車交通の調整策と一体となって、交通需要マネジメント(TDM)システム施策を効果的に講じ、公共交通サービス向上、環境自動車の導入、都市内物流の効率化等を促進することが必要である。

(3) 自動車税制のグリーン化

 「自動車税制のグリーン化」は、既存の自動車税制を前提としつつ、消費者の自主的な選択を環境負荷の小さい自動車に誘導する経済的手法である。自動車交通のグリーン化を進める上で、自動車税制のグリーン化により環境負荷の小さい自動車の普及促進を図ることは、重要な課題であり、これまでも低公害車の取得に対する特例や、低燃費自動車の取得に対する特例が講じられ、大きな成果を上げているが、今後とも効果的な税制面での対応のあり方について検討していく必要がある。

(4) 都市部における道路整備や踏切の立体交差化の推進、駐車対策の強化等による渋滞対策の推進

 都市部の渋滞による平均走行速度の低下が自動車からのCO2、NOx、PMの排出量を増大させている状況に鑑み、都市部における道路整備や踏切の立体交差化、駐車対策の強化等による渋滞対策を推進する必要がある。

(5) 自動車NOx法の改正等によるNOx・PM対策の強化

 「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(自動車NOx法)」の特定地域において、二酸化窒素の環境基準を概ね達成することが困難な状況にある。こうした状況を踏まえ、平成12年4月より中央環境審議会において、同法の規制対象物質へのPMの追加、車種規制の基準値の強化や対象車種の拡大、規制対象地域の拡大等の自動車NOx法の見直しを含めた今後の自動車排出ガス総合対策のあり方について検討されているところである。
 また、環境庁及び通産省と共同でディーゼル車対策技術評価検討会を設置し、ディーゼル微粒子除去装置(DPF)等対策技術の性能等を検討した結果、使用過程ディーゼル車については、最新規制車への代替が適当であるが、DPFについても、一律の義務づけは不可能であるものの一部装着可能なものについては有効とする中間取りまとめを行った。この趣旨が自動車NOx法の見直しに反映されるよう検討を行っている。
 さらに、街頭検査を大都市地域で集中的に実施する等排出ガス対策の強化を行うとともに、現行のディーゼル車単体規制の更なる強化を平成14〜16年にかけて順次実施する予定である。

(6) 自動車燃料のグリーン化

 DPFを有効に機能させ、ディーゼル車からの排出ガス改善を図るためには、硫黄分の少ない軽油を導入する自動車燃料のグリーン化を図り、今後、軽油の低硫黄化の推進に取り組んでいくことが必要である。

(7)特殊自動車(クレーン車、フォークリフト等)からの排出ガス規制

 大都市を中心とした地域における大気環境を改善するためには、大都市地域におけるNOxの約2割を排出する特殊自動車について排出ガス対策を講じることが必要であり、16年から開始することとされている特殊自動車における単体規制の前倒し等の実現に向け、検討を進めている〔2−3−5図〕。

2−3−5図 自動車交通のクリーン化

コラム  「エコドライブ運動」の取り組みについて
 広島県バス協会は、大気汚染や地球温暖化などの環境問題に対応するため、平成11年4月から「アイドリング・ストップをしよう」をスローガンに業界を挙げて「エコドライブ運動」に取り組んでいる。
 同協会が資料の提出のあった72事業者、約2,500台のバスのデーターをまとめたところ、12年3月末まで1年間で燃料の軽油が計163万5千削減(対前年度比3.2%減)でき、200リットル入りのドラム缶(高さ90外字)を積み上げると、富士山の約2倍の高さになる。
 この運動は、燃料の節約や排ガスの削減などを目的に、「無駄なアイドリングをしない」「経済速度での走行にこころがける」「急発進・急加速はしない」「車両の点検・整備を確実に実施」の4項目を柱にスタートした。
 12年度は加盟全業者の107事業者の3,033台で実施。バスの車内にポスターやステッカーを貼るなどして、利用客に地球温暖化など環境問題への理解と協力を求めている。

エコドライブ運動
エコドライブ運動

コラム  ディーゼル車排出ガスクリーンキャンペーン

 ディーゼル車の排出ガスについては、従来から様々な対策がとられているが、厳しい大気汚染にある国道43号・阪神高速道路神戸線沿道の尼崎地区周辺におけるディーゼル車排気微粒子(DEP)の低減を図るため、近畿運輸局は近畿通商産業局、近畿地方建設局及び兵庫県警察本部と協力して、平成12年5月11日から10日間を重点期間として「尼崎地区ディーゼル排ガスクリーンキャンペーン」を実施した。
 このキャンペーンは、運送事業者へのディーゼル車の集中自主点検の要請、排気黒煙の街頭検査や過積載等の取締り、尼崎地区周辺の運送事業者・荷主等に対する国道43号等からの迂回の要請及びDEP低減を呼びかける広報活動等からなり、今後も継続的に実施する。
 本キャンペーンに引き続き、全国においても「ディーゼル車の排ガス低減キャンペーン」を実施し、12年6月及び10月の2か月間を重点期間として、大都市を中心に集中的に街頭検査等を実施した。
 両キャンペーンの実施により、点検整備の排ガス低減に対する有効性が再確認され、運送事業者、整備事業者、荷主のDEP低減に対する意識が高まっているほか、行政側においても各機関の間で緊密な連携関係が構築される等、今後の取り組みに向けて大きな成果を得ている。
キャンペーンの模様

第3節 環境問題に対する各分野での取り組み

1 陸上交通における環境問題への取り組み

(1) 自動車騒音対策

 自動車騒音に関し、これまで車種毎に逐次規制を強化してきたところであり、最近では重量貨物自動車等の規制強化について、平成13年度規制として実施すべく、関連法令の改正を行った。

(2) 鉄道騒音対策

 新幹線については、環境基準の達成を図るべく諸施策を推進しているが、発生源の対策のみでは達成は技術的に極めて困難であることから、住宅の集合度合が高い地域から最大騒音レベル75dB以下とする音源対策等が進められている。具体的には、防音壁のかさ上げ、レールの削正による走行騒音の低減といった発生源対策や病院・住宅等の防音工事といった周辺対策が進められている。
 また、在来線については、7年の「在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針」に基づき、新線の場合には、等価騒音レベルとして昼間(7〜22時)60dB以下、夜間(22〜翌7時)55dB以下とし、大規模改良線の場合には、騒音レベルが改良前に比べ改善されるよう工事を実施している。

2 海上交通における環境問題への取り組み

(1) 次世代技術の活用による海上輸送の新生

 運輸分野の環境負荷の低減を図るためには、海上輸送の低環境負荷化に加え、自動車輸送から、エネルギー効率が良くCO2排出量が少ない海上輸送への転換を図る必要がある。このため、海上輸送に対する国民のニーズの変化や次世代技術の開発状況を踏まえ、

 (ア) NOx 1/10、SOx 2/5、CO2 3/4以下に削減を図る次世代内航船(スーパーエコシップ)の技術開発・実用化等による「効率化」、
 (イ) 湾内航行のノンストップ化等を通した海上ハイウェイネットワークの構築や新形式超高速船(テクノスーパーライナー)の実用化による「高速化」、
 (ウ) 高度通信技術を活用した海上輸送の支援システムの構築(海のITS)による「IT化」、
を総合的に推進することにより「海上輸送の新生」を図り、環境負荷の少ない海上輸送体系の構築を実現することとしている〔2−3−6図〕。

2−3−6図 次世代技術の活用による海上輸送の新生

(2) 海洋汚染への対応

 運輸省は、海洋環境保全を図るため、国際海事機関(IMO)における世界的課題、近隣諸国との協力体制の構築といった地域的課題にも取り組んでいる。また、国内においては、ナホトカ号事故等の大規模油流出事故を教訓とした流出油防除対策等を推進するとともに、海洋環境の保全指導・監視取締りを実施している。

 (ア) 世界的な海洋汚染対策
   9年1月に日本海で発生したナホトカ号事故を教訓として、老朽船による油流出事故の再発防止を図るため、わが国は国際海事機関(IMO)に対し寄港国による外国船舶の監督(PSC)の強化等様々な防止策を提案し、国際的に合意されている。さらに、平成11年12月にフランス沖で発生したエリカ号による油流出事故は、国際的な問題となり、海上における安全と海洋環境保護のための取り組み強化の必要性が12年7月の九州・沖縄サミットでも取り上げられた。現在、IMOにおいて、国際基準に適合していない船舶(サブスタンダード船)の排除やタンカーに対する安全基準の強化等の対策が審議されている。また、新たにサブスタンダード船の使用を抑制する国際的データベース(EQUASIS)の構築が国際的に開始され、わが国も積極的に参画している。
   また、船底塗料に含まれる有機スズ(TBT)が海洋環境に悪影響を及ぼす問題に対し、既に使用を禁止しているわが国は、全面使用禁止に向けた条約案をIMOに提案する等国際的な早期対策に向けた対応を行っている。
 (イ) 地域的な海洋汚染対策
   国際的な閉鎖性海域の海洋環境を保全するためには、沿岸諸国が協力して取り組む必要がある。こうした中、国連環境計画(UNEP)は地域海行動計画を提唱しており、日本海及び黄海の海洋環境を保全するため、日本、中国、韓国及びロシアによって北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)が採択された。我が国は、関係国とともに、環境データベースの構築、海洋汚染時の国際協力体制の構築等について検討している。また、今後とも我が国のイニシアティブをさらに発揮させるため、NOWPAP活動で中心的な機能を果たす地域調整ユニット(RCU)の我が国への誘致活動を行っている。

(3) その他

 プレジャーボート用のエンジンから排出される排気ガスに含まれる未燃焼ガソリンが、生活水源である湖川等へ影響を及ぼしているという問題が存在する。このため、特に水上オートバイが遊走する主要水域において水質影響に係る実態調査を実施している。
 また、水上オートバイによる騒音問題に対処するため、日本舟艇工業会との共同研究により水上オートバイの利用実態に即した新たな測定方法や騒音低減のための数値目標の作成を行っている。

3 航空輸送における環境問題への取り組み
 排出物対策として、9年10月、国際民間航空機関(ICAO)が定める国際標準に基づき、飛行中のジェット・エンジンから排出される窒素酸化物(NOx))、炭化水素(HC)、煤煙(C)、一酸化炭素(CO)を基準値以下とする等の規制を導入している。
 また、騒音対策として、ジェット機、プロペラ機及びヘリコプターに対し、航空機の重量、飛行形態等によって規定される騒音基準値を超える航空機の飛行を禁止する規制を行い、空港周辺地域においては、航空機騒音に係る環境基準の達成を目標とし、学校・病院・住宅等の防音工事、建物等の移転補償、緩衝緑地帯等の整備、地方公共団体と協力した移転跡地の活用による公園等の整備を進めている。
 なお、大阪国際空港においては、関西国際空港の開港に伴い周辺地域への騒音影響が大幅に改善されたことを踏まえ、騒音対策区域を縮小(約40%の縮小)する見直しを12年4月から行った。

4 地球環境の観測・監視

 交通部門における環境問題について的確な施策を実施する基礎として、大気・海洋の状況、CO2 等の温室効果ガスの濃度等の地球環境の実態を正確に把握する地球環境観測システムの更なる強化が必要である。
 現在、気象庁では、世界気象機関(WMO)温室効果ガス世界資料センターやWMO品質保証科学センターの役割を担い、世界各国の温室効果ガス等の観測データを収集・管理・提供するとともに、アジア・南西太平洋地区内各国のデータの品質を向上させるための活動を行っている。
 また、世界各地の異常気象の一因であるエルニーニョ現象について解析・監視を行っており、11年8月から予測を開始した。
 こうした中、国際的な地球環境観測体制の強化を図る観点から、12年度には中層フロートによる全球的な海洋観測を行う「高度海洋監視システム(アルゴ計画)」を構築し、リアルタイムでデータの検証・管理・配信を行い、高精度の長期予報の実現に活用することとしている。
 また、上空における三次元的な温室効果ガス等の観測体制を構築するため、飛行検査機を用い、地上から高度15kmまでのCO2 等の観測システムの整備(空のアルゴ計画)について、検討を進めている〔2−3−7図〕。

5 循環型社会の構築

(1) 循環型社会をめぐる状況

 21世紀に向けて持続可能な社会の発展を図るためには、廃棄物の発生量の抑制やリサイクルの促進が重要な課題となっている。
 前述したとおり、一般廃棄物・産業廃棄物をめぐる状況は深刻なものとなっている中で、第147通常国会で、「循環型経済社会推進基本法」その他廃棄物・リサイクル関連法案が成立し、循環型社会の構築に向けた施策の強化が求められている。

(2) 交通部門における循環型社会に向けた取り組み

 前述したFRP廃船のリサイクル対策の推進のほか、運輸部門においては、様々な施策を講じている。
 (ア) 自動車及び自動車部品に関する循環型社会構築のための施策
   国内で年間500万台に上る使用済み自動車のリサイクル率は75%で残り25%がシュレッダーダストとして廃棄される中、リサイクルしやすい自動車の設計・製造の推進、自動車の再生部品の利用促進、自動車登録制度を活用した使用済み自動車の適正処理の推進を総合的に図ることとしている。
   また、リサイクル部品の利用の促進に関し、リサイクル部品の市場拡大のための情報ネットワークシステムの形成について、膨大な部品の検索システムのあり方等その整備に係る課題の抽出、システムの開発支援、実証研究を実施している。
 (イ) 港湾に関する循環型社会構築のための施策
   港湾工事の実施にあたり、浚渫土砂や建設副産物の全量有効活用を図るとともに、鉄鋼スラグや石炭灰等、他の産業から発生した廃棄物のリサイクル資材としての活用を推進している。また、全国の一般廃棄物の約1/5を廃棄物海面処分場で受け入れている。さらに、廃棄物の広域輸送とリサイクル施設の立地を合わせたリサイクル拠点としての港湾の活用の検討を進めている。
 (ウ) 飛行場に関する循環型社会構築のための施策
   飛行場建設工事で発生する建設副産物の再資源化を推進するとともに、雨水利用、中水道の導入による空港内の水循環の促進等、循環型の空港整備・管理の実現に向けた各種の施策について、調査検討を進め、空港ターミナルビル会社、航空会社等関係者とも協力しつつその実現を目指していく。

2−3−7図 国際的な強調の下での地球環境観測体制の強化

6 その他

 オゾン層は、有害紫外線から地球上の生物を保護するための重要な役割を果たしている。しかし、南極域のオゾンホールは過去最大の規模になっており、日本上空のオゾン量も長期的に減少しつつある〔2−3−8図〕。
 こうした中、オゾン層破壊物質の減少を図ることが急務となっており、ハロンは1993年末、CFC(クロロフルオロカーボン)の生産は1995年末に全廃される等、規制が強化されている。また、平成9年の関係18省庁からなるオゾン層保護対策推進会議において、CFC等の回収・再利用・破壊の促進のための方策が取りまとめられている。
 しかしながら、CFC等の回収についてはカーエアコンからの回収率が約18%(平成11年度)となっているなど依然低い水準となっており、今後回収率の向上に向けて一層の関係事業者やユーザーの協力が必要となっている。
 運輸省においては、オゾン層に係る観測を行うとともに、カーエアコンを中心に、オゾン層破壊物質の大気中への放出抑制及び回収の促進を図り、さらに、脱特定フロン等対応設備への転換促進を図るための税制特例措置等の施策に取り組んでいる。

2−3−8図 日本上空のオゾン全量の平均値

コラム  省エネルギーの取り組み
 「自然エネルギーを利用した航路標識」
 海上保安庁では、環境への負荷の低減化を図りながら、航路標識の電源確保の問題を解決するため、他の分野に先駆けてその実用化を図ってきた。その結果、平成11年度末までに約5,500基ある航路標識の約32%にあたる1,758基に太陽光発電等の自然エネルギーを利用しているが、今後とも、さらに航路標識分野において、自然エネルギーの積極的な利用促進に努めることとしている。

伊勢湾灯標(愛知県)
伊勢湾灯標(愛知県)