第1節 環境問題の現状
2−3−1図 CO2排出量の主要部門別推移 2−3−2図 交通部門CO2排出量の推移 2−3−3図 環境基準適合状況の推移 2−3−4図 海洋汚染の発生確認件数の推移 |
1 自動車交通のグリーン化の必要性
(1) 環境自動車の開発・普及
CO2、NOx、PMの排出が少なく、環境負荷の小さい自動車(環境自動車)の普及促進を図るため、燃料電池車やジメチルエーテル車等の技術開発、ハイブリッド車や圧縮天然ガス(CNG)車等の低公害車、超低燃費車をはじめとする低燃費車の普及を促進するための事業に取り組んでいる。このため、後述する自動車税制のグリーン化の推進を図るほか、次世代低公害車技術評価事業、先駆的低公害車実用評価事業を実施する。
(2) 交通需要マネジメント(TDM)
都市交通においては、自動車がその優れた利便性により大きく貢献してきた一方、自動車への過度の依存が、排出ガスや騒音等により沿道環境を悪化させる要因となっている。
都市部におけるNOx、SPMによる大気汚染の抑制や地球温暖化問題を克服するためには、環境の改善に貢献する持続可能な都市交通の実現を目指す必要がある。
このため、自動車交通の調整策と一体となって、交通需要マネジメント(TDM)システム施策を効果的に講じ、公共交通サービス向上、環境自動車の導入、都市内物流の効率化等を促進することが必要である。
(3) 自動車税制のグリーン化
「自動車税制のグリーン化」は、既存の自動車税制を前提としつつ、消費者の自主的な選択を環境負荷の小さい自動車に誘導する経済的手法である。自動車交通のグリーン化を進める上で、自動車税制のグリーン化により環境負荷の小さい自動車の普及促進を図ることは、重要な課題であり、これまでも低公害車の取得に対する特例や、低燃費自動車の取得に対する特例が講じられ、大きな成果を上げているが、今後とも効果的な税制面での対応のあり方について検討していく必要がある。
(4) 都市部における道路整備や踏切の立体交差化の推進、駐車対策の強化等による渋滞対策の推進
都市部の渋滞による平均走行速度の低下が自動車からのCO2、NOx、PMの排出量を増大させている状況に鑑み、都市部における道路整備や踏切の立体交差化、駐車対策の強化等による渋滞対策を推進する必要がある。
(5) 自動車NOx法の改正等によるNOx・PM対策の強化
「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(自動車NOx法)」の特定地域において、二酸化窒素の環境基準を概ね達成することが困難な状況にある。こうした状況を踏まえ、平成12年4月より中央環境審議会において、同法の規制対象物質へのPMの追加、車種規制の基準値の強化や対象車種の拡大、規制対象地域の拡大等の自動車NOx法の見直しを含めた今後の自動車排出ガス総合対策のあり方について検討されているところである。
また、環境庁及び通産省と共同でディーゼル車対策技術評価検討会を設置し、ディーゼル微粒子除去装置(DPF)等対策技術の性能等を検討した結果、使用過程ディーゼル車については、最新規制車への代替が適当であるが、DPFについても、一律の義務づけは不可能であるものの一部装着可能なものについては有効とする中間取りまとめを行った。この趣旨が自動車NOx法の見直しに反映されるよう検討を行っている。
さらに、街頭検査を大都市地域で集中的に実施する等排出ガス対策の強化を行うとともに、現行のディーゼル車単体規制の更なる強化を平成14〜16年にかけて順次実施する予定である。
(6) 自動車燃料のグリーン化
DPFを有効に機能させ、ディーゼル車からの排出ガス改善を図るためには、硫黄分の少ない軽油を導入する自動車燃料のグリーン化を図り、今後、軽油の低硫黄化の推進に取り組んでいくことが必要である。
(7)特殊自動車(クレーン車、フォークリフト等)からの排出ガス規制
大都市を中心とした地域における大気環境を改善するためには、大都市地域におけるNOxの約2割を排出する特殊自動車について排出ガス対策を講じることが必要であり、16年から開始することとされている特殊自動車における単体規制の前倒し等の実現に向け、検討を進めている〔2−3−5図〕。
コラム 「エコドライブ運動」の取り組みについて |
広島県バス協会は、大気汚染や地球温暖化などの環境問題に対応するため、平成11年4月から「アイドリング・ストップをしよう」をスローガンに業界を挙げて「エコドライブ運動」に取り組んでいる。 同協会が資料の提出のあった72事業者、約2,500台のバスのデーターをまとめたところ、12年3月末まで1年間で燃料の軽油が計163万5千削減(対前年度比3.2%減)でき、200リットル入りのドラム缶(高さ90外字)を積み上げると、富士山の約2倍の高さになる。 この運動は、燃料の節約や排ガスの削減などを目的に、「無駄なアイドリングをしない」「経済速度での走行にこころがける」「急発進・急加速はしない」「車両の点検・整備を確実に実施」の4項目を柱にスタートした。 12年度は加盟全業者の107事業者の3,033台で実施。バスの車内にポスターやステッカーを貼るなどして、利用客に地球温暖化など環境問題への理解と協力を求めている。
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コラム ディーゼル車排出ガスクリーンキャンペーン |
ディーゼル車の排出ガスについては、従来から様々な対策がとられているが、厳しい大気汚染にある国道43号・阪神高速道路神戸線沿道の尼崎地区周辺におけるディーゼル車排気微粒子(DEP)の低減を図るため、近畿運輸局は近畿通商産業局、近畿地方建設局及び兵庫県警察本部と協力して、平成12年5月11日から10日間を重点期間として「尼崎地区ディーゼル排ガスクリーンキャンペーン」を実施した。 |
1 陸上交通における環境問題への取り組み
自動車騒音に関し、これまで車種毎に逐次規制を強化してきたところであり、最近では重量貨物自動車等の規制強化について、平成13年度規制として実施すべく、関連法令の改正を行った。
(2) 鉄道騒音対策
新幹線については、環境基準の達成を図るべく諸施策を推進しているが、発生源の対策のみでは達成は技術的に極めて困難であることから、住宅の集合度合が高い地域から最大騒音レベル75dB以下とする音源対策等が進められている。具体的には、防音壁のかさ上げ、レールの削正による走行騒音の低減といった発生源対策や病院・住宅等の防音工事といった周辺対策が進められている。
また、在来線については、7年の「在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針」に基づき、新線の場合には、等価騒音レベルとして昼間(7〜22時)60dB以下、夜間(22〜翌7時)55dB以下とし、大規模改良線の場合には、騒音レベルが改良前に比べ改善されるよう工事を実施している。
(1) 次世代技術の活用による海上輸送の新生
運輸分野の環境負荷の低減を図るためには、海上輸送の低環境負荷化に加え、自動車輸送から、エネルギー効率が良くCO2排出量が少ない海上輸送への転換を図る必要がある。このため、海上輸送に対する国民のニーズの変化や次世代技術の開発状況を踏まえ、
(ア) NOx 1/10、SOx 2/5、CO2 3/4以下に削減を図る次世代内航船(スーパーエコシップ)の技術開発・実用化等による「効率化」、
(イ) 湾内航行のノンストップ化等を通した海上ハイウェイネットワークの構築や新形式超高速船(テクノスーパーライナー)の実用化による「高速化」、
(ウ) 高度通信技術を活用した海上輸送の支援システムの構築(海のITS)による「IT化」、
を総合的に推進することにより「海上輸送の新生」を図り、環境負荷の少ない海上輸送体系の構築を実現することとしている〔2−3−6図〕。
(2) 海洋汚染への対応
運輸省は、海洋環境保全を図るため、国際海事機関(IMO)における世界的課題、近隣諸国との協力体制の構築といった地域的課題にも取り組んでいる。また、国内においては、ナホトカ号事故等の大規模油流出事故を教訓とした流出油防除対策等を推進するとともに、海洋環境の保全指導・監視取締りを実施している。
(ア) 世界的な海洋汚染対策
9年1月に日本海で発生したナホトカ号事故を教訓として、老朽船による油流出事故の再発防止を図るため、わが国は国際海事機関(IMO)に対し寄港国による外国船舶の監督(PSC)の強化等様々な防止策を提案し、国際的に合意されている。さらに、平成11年12月にフランス沖で発生したエリカ号による油流出事故は、国際的な問題となり、海上における安全と海洋環境保護のための取り組み強化の必要性が12年7月の九州・沖縄サミットでも取り上げられた。現在、IMOにおいて、国際基準に適合していない船舶(サブスタンダード船)の排除やタンカーに対する安全基準の強化等の対策が審議されている。また、新たにサブスタンダード船の使用を抑制する国際的データベース(EQUASIS)の構築が国際的に開始され、わが国も積極的に参画している。
また、船底塗料に含まれる有機スズ(TBT)が海洋環境に悪影響を及ぼす問題に対し、既に使用を禁止しているわが国は、全面使用禁止に向けた条約案をIMOに提案する等国際的な早期対策に向けた対応を行っている。
(イ) 地域的な海洋汚染対策
国際的な閉鎖性海域の海洋環境を保全するためには、沿岸諸国が協力して取り組む必要がある。こうした中、国連環境計画
(3) その他
プレジャーボート用のエンジンから排出される排気ガスに含まれる未燃焼ガソリンが、生活水源である湖川等へ影響を及ぼしているという問題が存在する。このため、特に水上オートバイが遊走する主要水域において水質影響に係る実態調査を実施している。
また、水上オートバイによる騒音問題に対処するため、日本舟艇工業会との共同研究により水上オートバイの利用実態に即した新たな測定方法や騒音低減のための数値目標の作成を行っている。
21世紀に向けて持続可能な社会の発展を図るためには、廃棄物の発生量の抑制やリサイクルの促進が重要な課題となっている。
前述したとおり、一般廃棄物・産業廃棄物をめぐる状況は深刻なものとなっている中で、第147通常国会で、「循環型経済社会推進基本法」その他廃棄物・リサイクル関連法案が成立し、循環型社会の構築に向けた施策の強化が求められている。
(2) 交通部門における循環型社会に向けた取り組み
前述したFRP廃船のリサイクル対策の推進のほか、運輸部門においては、様々な施策を講じている。
(ア) 自動車及び自動車部品に関する循環型社会構築のための施策
国内で年間500万台に上る使用済み自動車のリサイクル率は75%で残り25%がシュレッダーダストとして廃棄される中、リサイクルしやすい自動車の設計・製造の推進、自動車の再生部品の利用促進、自動車登録制度を活用した使用済み自動車の適正処理の推進を総合的に図ることとしている。
また、リサイクル部品の利用の促進に関し、リサイクル部品の市場拡大のための情報ネットワークシステムの形成について、膨大な部品の検索システムのあり方等その整備に係る課題の抽出、システムの開発支援、実証研究を実施している。
(イ) 港湾に関する循環型社会構築のための施策
港湾工事の実施にあたり、浚渫土砂や建設副産物の全量有効活用を図るとともに、鉄鋼スラグや石炭灰等、他の産業から発生した廃棄物のリサイクル資材としての活用を推進している。また、全国の一般廃棄物の約1/5を廃棄物海面処分場で受け入れている。さらに、廃棄物の広域輸送とリサイクル施設の立地を合わせたリサイクル拠点としての港湾の活用の検討を進めている。
(ウ) 飛行場に関する循環型社会構築のための施策
飛行場建設工事で発生する建設副産物の再資源化を推進するとともに、雨水利用、中水道の導入による空港内の水循環の促進等、循環型の空港整備・管理の実現に向けた各種の施策について、調査検討を進め、空港ターミナルビル会社、航空会社等関係者とも協力しつつその実現を目指していく。
コラム 省エネルギーの取り組み |
「自然エネルギーを利用した航路標識」 海上保安庁では、環境への負荷の低減化を図りながら、航路標識の電源確保の問題を解決するため、他の分野に先駆けてその実用化を図ってきた。その結果、平成11年度末までに約5,500基ある航路標識の約32%にあたる1,758基に太陽光発電等の自然エネルギーを利用しているが、今後とも、さらに航路標識分野において、自然エネルギーの積極的な利用促進に努めることとしている。
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