第1章 交通分野をめぐる最近の動向

第1節 国内・国際経済の動向と交通の動向

我が国経済の動向

 平成11年度の我が国経済は、政策効果やアジア経済の回復などを背景とした輸出増によって、緩やかな改善が続いた。またIT(情報通信技術)関連需要を中心に設備投資にも持ち直しの動きが見られ、企業収益もリストラを推し進めた効果によって改善が見られた。
 実質経済成長率はGDP(国内総生産)で3年ぶりに増加に転じ、0.5%増(10年度は1.9%減)となった。

1 旅客輸送の動向

(1) 国内輸送

(ア) 概況
(所得の伸び悩みにより国内旅客輸送は低調)
 旅客輸送の動向に影響の大きな経済指標について、その対前年度伸び率の推移をみると、実質賃金は0.2%減(10年度は1.8%減)と3年連続のマイナスとなり、実質消費支出は1.2%減(10年度は1.3%減)とこちらは4年連続のマイナスとなった。これは夏・冬の賞与の昨年度に続く大幅な減少(9年度5.1%減、10年度8.0%減)が影響したものと思われる。また、経済活動や通勤旅客輸送の動向に影響が大きい雇用者数は対前年度比0.5%減(10年度は0.7%減)となり、厳しい雇用情勢は続いている〔3−1−1図〕。
 このように我が国経済は全体としては回復傾向にあるが、所得の低下や消費者マインドの悪化により、総じて民間の消費活動は低迷を続けた。航空や自家用乗用車、特に軽自動車は堅調に推移したが、他の営業用輸送機関は軒並み減少し、11年度の国内旅客輸送量は、輸送人員は840億人、対前年度比(以下同じ。)0.1%減(10年度は0.7%減)、総輸送人キロは1兆4,245億人キロ、0.0%増(10年度は0.4%増)となった〔3−1−2表〕。
 この結果、輸送機関の分担率は、航空及び自家用乗用車が拡大し、その他は縮小または横ばいになった。営業用輸送機関のシェアは38.6%で0.2ポイント減となり、低下傾向が続いている〔3−1−3図〕。

(イ) 輸送機関別の動向
(鉄道は依然として低調)
 まずJR全体の輸送量についてみると、輸送人員0.5%減、輸送人キロ0.8%減となり、定期外旅客の輸送人員が微増したがそれ以外は減少している。また、新幹線については、定期旅客は人員、人キロ、平均輸送距離が増加していることから、引き続き新幹線を利用した長距離通勤・通学客が増加したことがうかがえるが、定期外旅客については人員、人キロ、平均輸送距離が減少していることから、旅行の近距離化と航空運賃の低廉化の影響による長距離客の減少が表れてきている。
 民鉄(JRを除く。)については、定期外旅客がやや増加したものの定期旅客が減少し、輸送人員1.6%減、輸送人キロ1.2%減となった。鉄道全体では輸送人員1.2%減、輸送人キロ1.0%減と低調に推移した。定期外旅客がやや増加傾向であることの要因として、前年に引き続き企業の雇用調整が進んだ結果、定期旅客から定期外旅客へのシフトが進んだことが挙げられる。全体として、前年同様景気低迷による企業の雇用調整や少子化の影響により通勤・通学定期利用者の減少傾向は継続している。
(旅客の減少が続く営業用自動車)
 営業用バスは輸送人員4.3%減、輸送人キロ1.7%減と輸送量の減少傾向が続いた。このうち、乗合バスは輸送人員4.5%減、輸送人キロ5.6%減と人員については12年連続、人キロについては8年連続のマイナスとなった。これは、自家用乗用車へのシフトや雇用者減、少子化に伴う定期需要の減少などが原因と考えられる。また、高速バスは中・近距離は好調であったが、長距離の夜行便は便数を減らすなど航空の影響が出ている。その影響もあり、乗合バスの平均輸送距離が減少したと思われる〔3−1−4図〕。
 営業用乗用車(ハイヤー・タクシー)の輸送量も減少が続き、輸送人員1.9%減、輸送人キロ1.9%減とこちらも乗合バスと同様に人員については12年連続、人キロについては8年連続のマイナスとなった。これは企業の経費削減や家計における実質賃金の低下に伴う交通費の縮減が依然続いていることが要因と考えられる〔3−1−5図〕。
(自家用乗用車は輸送量増加)
 自家用乗用車は、輸送人員0.1%増、輸送人キロ0.2%増と人員、人キロともに増加した。旅行の近距離化に伴って交通手段が他の営業用輸送機関から自家用乗用車に移ったことが原因の一つに考えられる。
 保有車両数は1.2%増加したが、主な要因は車両規格の変更以降、堅調に推移している軽自動車によるもので、軽自動車以外の自家用乗用車の新車販売台数は減少している〔3−1−6図〕。
(航空は好調な伸びが続く)
 航空は、昨年度の新規航空会社の参入以来、各社様々な割引運賃を導入した結果、東京−福岡便などの長距離を中心に利用者が増加し輸送実績を伸ばした。輸送人員、輸送人キロともにすべての月で前年度を上回り、輸送人員4.2%増、輸送人キロ4.4%増と好調に推移した〔3−1−7図〕。
(旅客船は減少が続く)
 旅客船(一般旅客定期航路、特定旅客定期航路及び旅客不定期航路の合計)は、10年度に引き続いて、本州四国連絡橋全面開通の影響で航路・便数が減少したため、輸送人員6.2%減、輸送人キロ3.3%減と輸送人員、輸送人キロともに減少した。

3−1−1図 国内旅客輸送量及び消費支出等の動向

3−1−2表 輸送機関別国内旅客輸送量

輸送人員(億人) 輸送人キロ(億人キロ) 平均輸送距離
 (キロ)
10年度 11年度 10/9 11/10 10年度 11年度 10/9 11/10 11年度 11/10
総輸送量 840.7 840.1 99.3 99.9 14,243.6 14,244.8 100.4 100.0 17.0 100.1
 鉄道 220.1 217.5 99.0 98.8 3,889.4 3,851.0 98.4 99.0 17.7 100.2
  JR 87.6 87.2 98.9 99.5 2,428.1 2,407.9 98.0 99.2 27.6 99.7
   定期 55.1 54.6 98.6 99.0 1,086.9 1,082.5 99.6 99.6 19.8 100.6
   定期外 32.5 32.6 99.5 100.2 1,341.2 1,325.4 96.8 98.8 40.6 98.6
  民鉄 132.5 130.3 99.0 98.4 1,461.3 1,443.1 99.0 98.8 11.1 100.4
   定期 78.7 76.3 98.1 96.9 941.7 919.1 98.4 97.6 12.0 100.7
   定期外 53.8 54.0 100.3 100.5 519.6 523.9 100.1 100.8 9.7 100.4
 自動車 618.4 620.5 99.4 100.3 9,548.1 9,555.6 101.0 100.1 15.4 99.7
  バス 70.5 68.6 95.9 97.4 904.3 886.9 97.3 98.1 12.9 100.7
   営業用 54.2 51.9 96.0 95.7 706.2 693.9 99.3 98.3 13.4 102.6
    うち乗合 51.7 49.4 95.8 95.5 281.2 265.6 99.4 94.4 5.4 98.9
    うち貸切 2.5 2.5 100.2 101.5 425.0 428.4 99.3 100.8 170.2 99.3
   自家用 16.3 16.8 95.6 102.9 198.1 192.9 90.9 97.4 11.5 94.6
  乗用車 384.5 384.5 99.9 100.0 6,438.5 6,449.3 102.0 100.2 16.8 100.2
   営業用 25.1 24.7 96.2 98.1 123.4 121.2 96.3 98.1 4.9 100.1
   自家用 359.4 359.9 100.2 100.1 6,315.0 6,328.1 102.1 100.2 17.6 100.1
  軽自動車 136.3 141.5 101.5 103.8 1,518.6 1,572.5 102.2 103.5 11.1 99.7
  貨物自動車 27.1 25.8 92.2 95.3 686.6 647.0 95.3 94.2 25.1 98.9
 航空 0.88 0.92 102.8 104.2 759.9 793.5 103.8 104.4 866.4 100.2
 旅客船 1.28 1.20 88.1 93.8 46.2 44.7 86.1 96.7 37.3 103.2
注 (1)運輸省資料より作成。
  (2)航空及び旅客船の輸送量は、定期及び不定期である。
  (3)軽自動車、貨物自動車による輸送量は、自家用のそれらの自動車による人員輸送を表している。
  (4)乗用車及び貨物自動車の輸送量には、軽自動車によるものは含まない。
  (5)端数処理を行っているため、内訳の合計と輸送機関計が一致しない場合がある。

3−1−3図 国内旅客輸送の輸送機関分担率の推移(人キロ)
3−1−4図 乗合バスの輸送量と平均輸送距離
3−1−5図 ハイヤー・タクシーの輸送人キロの伸び率及び実車率の推移
3−1−6図 自家用乗用車の輸送量と保有車両数の伸び率

(2) 国際輸送

(出国日本人数は2年ぶりにプラス)
 11年(暦年)における出国日本人数は1,636万人と昨年に比べ増加した。2000年問題の影響で12月が対前年比6.3%減と大きく減少した以外は、2月を除いてプラスで推移し対前年比(以下同じ。)3.5%増(10年は5.9%減)となった。主な要因としては、11年は年間を通じて円高基調で推移したことと格安で行ける韓国、中国、香港などアジア州への旅行者が増えたことが考えられる〔3−1−8図〕。
 旅行先の国・地域のシェアは、アメリカ合衆国の29.6%(1.7ポイント減)を筆頭に韓国12.9%(0.9ポイント増)、中国7.5%(1.2ポイント増)、タイ5.0%(0.1ポイント増)の順となった。州別では、アジア州への旅行者が大幅に増えていて、格安で行けるのと、航空路線・便数が増加したことなどがその要因と考えられる。また、9月に地震が起きた台湾は、8月までは2月を除き対前年同月比2ケタ増を示していたが、地震以降逆に2ケタ減となり年間では0.4%減となった〔3−1−9図〕。
(訪日外客数は過去最高を記録)
 11年の訪日外客数は、好調な経済を背景にアメリカ合衆国や韓国からの訪日外客数が増加したため、年間で444万人、対前年比8.1%増(10年は2.7%減)となった。このうち観光客は全体の57.7%(対前年比0.3ポイント増)の256万人で、対前年比8.6%増(10年は1.4%減)となり円高にも係わらず大幅増となった。
 州別に見るとアジア州が262万人で全体の59.1%を占め、次いで北アメリカ州が82万人で18.5%となり、3年ぶりにヨーロッパ州を抜いた。その次はヨーロッパ州の78万人で17.5%の順となった。
 国・地域別に見ると、経済不振などの影響から昨年台湾に訪日外客数首位を譲った韓国が対前年比30.1%増の94万人で再び首位になった。これは経済の回復に加え、映画や音楽などの日本文化の段階的解除によって日本への関心が高まっていることが考えられる。一方、総訪日外客数では韓国に首位を譲った台湾は、観光客では83万人、対前年比11.5%増の首位で、9月の台湾地震の影響はほとんど見られなかった。また、アメリカ合衆国も好調な経済を背景に観光客、商用客ともに増加した〔3−1−10図〕。

3−1−7図 国内航空旅客輸送量と輸送力の伸び率
3−1−8図 出国日本人数と訪日外客数の推移
3−1−9図 旅行先別出国日本人数
3−1−10図 地域別訪日外客数

2 貨物輸送の動向

(1) 国内輸送
(ア) 概況
(トン数、トンキロとも3年ぶりに増加)
 11年度の実質GDPは、ここ2年のマイナス成長から転じて3年ぶりの0.5%増(10年度は1.9%減)となった。
 GDPと等価のGDE(国内総支出)を構成する経済指標のうち、貨物輸送の動向に影響の大きな指標についてみると、本格的な景気回復を目指した積極的な公共投資が実施されたが、前年度が高水準に推移したため公的固定資本形成は0.9%減(10年度は1.5%増)と減少した。民間企業設備投資は、旺盛なIT(情報通信技術)関連需要により持ち直しの気運が見られたものの、依然企業の設備過剰感が高いため2.3%減(10年度は9.5%減)と減少した。一方、住宅ローン減税等の住宅建設促進施策が功を奏し、民間住宅投資は5.6%増(10年度は10.9%減)と増加した〔3−1−11図〕。
 このような状況のなかで、11年度の国内貨物輸送は、鉄道をのぞくすべての輸送機関の輸送量が増加したため、総輸送トン数で64億4,561万トン、対前年度比(以下同じ。)0.7%増(10年度は4.2%減)、総輸送トンキロで5,601億6,085万トンキロ、1.6%増(10年度は3.0%減)とトン数、トンキロともに3年振りに増加した〔3−1−12表〕。
 また、11年度の輸送トンキロで見た各輸送機関の分担率は、営業用自動車と航空の分担率が引き続き拡大しているが、鉄道、自家用自動車、内航海運は縮小している〔3−1−13図〕。

(イ) 輸送機関別の輸送動向
(鉄道は依然減少傾向)
 11年度におけるJR(貨物会社)のコンテナ貨物は、2000年問題対応による清涼飲料水など増加した品目もあったが、政府米を中心に多くの品目で輸送量が減少したため、トン数で1.8%減、トンキロで1.5%減となった。車扱貨物は、石油やセメント、石灰石といった品目において業界の再編による輸送効率化の動きや需要減により、トン数で5.4%減、トンキロで2.6%減と、ともに9年連続の減少となった。このため、鉄道全体による11年度の輸送量は、トン数で2.8%減、トンキロで1.7%減の減少となった〔3−1−14図〕。
(増加に転じた自動車貨物)
 11年度の自動車による貨物輸送量は、民間住宅投資の好調などによる建設需要の増大と、2000年問題対応による年末の輸送量の増加を反映して、トン数で0.7%増と3年ぶり、トンキロで2.2%増と2年ぶりの増加となった〔3−1−15図〕。
 営業用・自家用別にみると、営業用自動車は、引き続き好調な宅配便と2000年問題対応による食料工業品、日用品といった消費関連の品目が好調に推移するとともに、建設需要の増大を反映して、木材、砂利・砂・石材といった建設関連の品目も増加した。そのことによりト
ン数では4.6%増と3年ぶり、トンキロでは4.2%増と2年ぶりに増加に転じた。一方、自家用自動車では、トン数で2.7%減、トンキロでは5.3%減と減少した。

3−1−12表 輸送機関別国内貨物輸送量

輸送トン数(百万トン) 輸送トンキロ(億トンキロ) 平均輸送距離
 (キロ)
10年度 11年度 10/9 11/10 10年度 11年度 10/9 11/10 11年度 11/10
総輸送量
鉄道
JR
民鉄
自動車
営業用
自家用
内航海運
航空
6,397.9
60.4
40.6
19.8
5,819.9
2,747.3
3,072.5
516.6
1.0
6,445.6
58.7
39.2
19.5
5,863.3
2,873.7
2,989.6
522.6
1.1
95.8
87.2
85.9
90.1
96.0
99.0
93.4
95.4
100.1
100.7
97.2
96.4
98.8
100.7
104.6
97.3
101.2
104.5
5,515.5
229.2
226.4
2.8
3,006.7
2,356.4
650.3
2,269.8
9.8
5,601.6
225.4
222.7
2.7
3,071.5
2,455.8
615.7
2,294.3
10.4
97.0
93.1
93.2
87.3
98.2
99.6
93.3
95.8
100.4
101.6
98.3
98.4
97.1
102.2
104.2
94.7
101.1
105.5
86.9
384.1
568.8
13.8
52.4
85.5
20.6
439.0
979.5
100.8
101.2
102.0
98.2
101.4
99.6
97.3
99.9
101.0
注 (1)運輸省資料より作成。
  (2)航空は定期及び不定期の計で、超過手荷物と郵便物を含む。
  (3)自動車による貨物輸送量には自動車航送船(フェリー)によるものを含む。
  (4)端数処理の関係で輸送機関別の合計と輸送機関計が一致しない場合がある。 

3−1−11図 国内貨物輸送量と主要な経済指標の推移
3−1−13図 国内貨物輸送の輸送機関分担率の推移
3−1−14図 鉄道の輸送トンキロとJR車扱・コンテナ列車運転本数
3−1−15図 自動車貨物輸送量の推移

(内航海運貨物も増加)
 内航海運の貨物輸送量は、トン数では1.2%増、トンキロでは1.1%増とともに増加した。
 これを貨物船、油送船別にみると、貨物船は建設関連の需要増を受けて、石灰石、鉄鋼、砂利・砂・石材といった建設関連の品目が増加し、トン数、トンキロともに増加した。一方、油送船は、石油業界の再編が進展する中で、拠点の統廃合や輸送手段の見直しなど物流システムの変革が行われたことも影響して、トン数、トンキロともに減少した〔3−1−16図〕。
(国内航空貨物は7年連続の増加)
 11年度の国内航空貨物輸送量は、増大する情報化投資や2000年問題対応により、コンピュータ関連部品などの輸送量が増加したのに加え、航空宅配便が好調に推移したため、トン数は4.5%増、トンキロは5.5%増と、ともに7年連続の増加となった〔3−1−17図〕。

3−1−16図 内航海運の輸送量の推移

(2) 国際輸送
(ア) 世界の海上輸送活動
(トンベースで増加した世界の海上荷動き量)
 前年に引き続きアジア通貨・経済危機による通貨価値の下落による交易条件の改善と欧米経済の好調により、アジア発欧米向けの荷動きが活発に推移するとともに、今年はアジア諸国が韓国を中心に経済成長率がプラスに転じたことから、アジア着の貨物の荷動きも回復した。このため、平成11年(暦年)の世界の海上荷動き量の合計は、トンベースで51億トン、対前年比(以下同じ。)0.8%増となったが、トン・マイルベースでは21兆4,800億トン・マイル、0.1%減となった。なお、世界の海上荷動き量に占める我が国輸出入貨物の割合はトンベースで16.7%、トン・マイルベースで19.7%(10年は各々16.4%、19.8%)となっている〔3−1−18表〕。

(イ) 我が国の海上貿易量の動向
(輸出入ともに2年振りの増加)
 11年の我が国の海上貿易量(トンベース)は輸出入合計で、2.4%増(10年は5.3%減)の8億5,085万トンとなった。
 輸出は、11年が円高で推移したにも拘わらず、アジア通貨・経済危機から復活を遂げたアジア地域向けの輸出が前年を上回るとともに、米国向けについては、米国政府のダンピング問題提起により、若干減少したものの堅調に推移したため、全体では1.1%増(10年は1.0%減)の1億200万トンとなった。品目別にみると、アジア向けを中心に乗用自動車、プラスチックが大きく増加する一方で、機械類、電気製品については減少している。
 輸入は、アジア通貨・経済危機の混乱が沈静化し、アジア地域の生産能力が回復したことにより、11年の輸入数量は2.6%増(10年は5.9%減)の7億4,886万トンとなった。これを品目別でみると、建設需要の増大を反映して木材が大幅に増加(14.2%増)したのをはじめ多くの品目で取り扱いが増加したため、乾貨物計では3.1%増(10年は6.5%減)となった。また、液体貨物計は、1.8%増(10年は5.0%減)となった〔3−1−19表〕。

3−1−17図 国内航空貨物輸送量の推移

3−1−18表 世界及び我が国の海上荷動き量

(暦年値、単位:100万トン、10億トン・マイル、%)

品目 世界 日本
10 年 11 年 11/10 10 年 11 年 11/10 シェア
トンベース 石油 原油
石油製品

1,524
402
1,480
410
−2.9
2.0
218
31
214
36
−1.7
16.3
14.4
8.7
小 計 1,926 1,890 −1.9 248 249 0.5 13.2
乾貨物 鉄鉱石
石炭


穀物


その他

417
473
196
2,050
410
480
210
2,110
−1.7
1.5
7.1
2.9
121
132
32
299
120
137
33
312
−0.6
4.1
3.2
4.3
29.3
28.6
15.6
14.8
小 計 3,136 3,210 2.4 583 602 3.2 18.7
合   計 5,062 5,100 0.8 831 851 2.4 16.7
トン・マイルベース 石油 原油
石油製品
7,793
1,970
7,500
2,010
−3.8
2.0
1,283
113
1,276
134
−0.5
18.6
17.0
6.7
小 計 9,763 9,510 −2.6 1,396 1,410 1.0 14.8
乾貨物 鉄鉱石
石炭
穀物
その他
2,306
2,419
1,064
5.940
2,220
2,430
1,170
6,150
−3.7
0.5
10.0
3.5
705
556
271
1,309
686
555
274
1,304
−2.7
−0.2
1.1
−0.4
30.9
22.8
23.4
21.2
小 計 11,729 11,970 2.1 2,841 2,819 −0.8 23.6
合   計 21,492 21,480 −0.1 4,237 4.229 −0.2 19.7
注(1)「シェア」は、世界全体に占める我が国のシェア。
 (2)運輸省資料より作成。
 (3)平成11年の値は推計値である。

(ウ) 国際航空による貨物輸送

(輸出入ともに増加した国際航空貨物)
 11年度の国際航空貨物輸送量(継越貨物を除く。)は、依然として好調な米国経済と韓国を中心としたアジア経済の復活により、輸出が好調であったため、輸出入合計では16.8%の増加となった。
 輸出入別に見ると、輸出は米国向けには半導体、ゲーム機等の輸送量が増加するとともに、韓国向けの半導体製造装置や、欧州向けゲーム機器、パソコン周辺機器が好調に推移したため、トンベースで対前年度比(以下同じ。)15.8%増の103万トンであった。
 輸入は、国内での情報化投資の増加を受けて、アジア、欧州からのパソコン周辺機器等を中心に増加したことにより、17.6%増の123万トンとなった。
 なお、継越貨物については、輸出入計で15.6%増(10年は9.1%増)となっている。

3−1−19表 我が国の品目別海上貿易量
(単位:千トン)

品目
10年(A) 11年(B) 対前年伸び率
B/A(%)
輸出入合計 831,122 850,850 2.4
輸出 合計 100,905 101,995 1.1
鉄鋼
セメント
乗用自動車
機械類
電気製品
その他
27,454
7,613
4,715
10,871
1,457
48,795
28,041
7,681
4,985
9,869
1,429
49,990
2.1
0.9
5.7
−9.2
−1.9
2.4
輸入 合計 730,217 748,855 2.6
乾貨物計
 鉄鉱石
 石炭
 塩
 銅鉱
 木材
 パルプ
 チップ
 小麦
 とうもろこし
 大豆
 機械機器
 その他
424,960
120,782
131,764
7,914
3,974
15,386
3,204
13,731
5,758
16,049
4,751
3,427
98,220
438,016
120,107
137,199
8,236
4,286
17,571
3,078
13,645
5,973
16,606
4,884
3,695
102,736
3.1
−0.6
4.1
4.1
7.9
14.2
−3.9
−0.6
3.7
3.5
2.8
7.8
4.6
液体貨物計
 原油
 重油
 その他
305,257
217,523
2,192
85,542
310,839
213,735
2,683
94,421
1.8
−1.7
22.4
10.4
注(1)運輸省資料より作成。
 (2)乾貨物その他には、金属製品、生鮮食料品、繊維原料が含まれる。
 (3)液体貨物その他には、LPG、LNG、糖蜜が含まれる。
 (4)端数処理のため末尾の数字が合わない場合がある。

3 輸送指数の動向

(輸送業総合の輸送指数は増加に転じる)
 輸送指数の動向について、11年度についてみてみると、輸送業総合の輸送指数は、実質GDPの動きに沿って変動しており、対前年度比(以下同じ。)2.2%増(10年度は1.1%減)、自家輸送を含む輸送活動総合の輸送指数は、軽自動車を含む自家用乗用車が堅調に推移したため、0.6%増(10年度は0.2%増)と緩やかな増加傾向を示している〔3−1−20図〕。
 また、11年度中の四半期毎の輸送指数の推移(対前年同期比伸び率)を営業用輸送活動の動きを示す輸送業総合についてみてみると、全ての期において伸び率はプラスで推移し、実質GDPの対前年同期比伸び率にほぼ呼応した動きを見せている。その要因として、上期においては公的需要に支えられ、下期においては民間需要回復によって年度を通じ国内貨物業の寄与度がすべての期においてプラスとなったことが挙げられる〔3−1−21図〕。
 国内旅客輸送業について11年度における各輸送機関の寄与度の動向をみると、プラスに寄与しているのは前年同様航空のみであり、営業用自動車は高速バスが好調ではあるが、乗合バス全体では減少が続き、旅客船も本州・四国連絡橋の開通以降減少し続け、その結果、国内旅客輸送業の輸送指数は0.9%減(10年度は1.9%減)と減少している。
 また、国内貨物について各輸送機関の寄与度の動向をみると、建設関連の需要が増加したにも関わらず、自家用トラックはマイナスの寄与幅こそ縮小したものの3年連続でマイナスの寄与となっているのに対し、2000年問題対応などの要因によって、営業用トラックがプラスの寄与へ大きく転じたことで、11年度の国内貨物輸送活動の輸送指数は2.1%増(10年度は2.0%減)となった。

〈輸送指数とは〉
 輸送指数とは、我が国の国内旅客・貨物輸送活動及び我が国企業による国際輸送活動を総合的にとらえ、指数化したものである。具体的には、各輸送機関別の旅客・貨物輸送量(原則として旅客は人キロ、貨物はトンキロ)を、それぞれの輸送機関の創出した粗付加価値額(雇用者所得・営業余剰金等)をウェイトとして、基準時加重相対法(ラスパイレス法)により総合化している。
 したがって、人や人キロまたはトンやトンキロを単位とするそれぞれの輸送量に対して、輸送活動を経済的側面からとらえた総合的な指数であり、国内総生産(GDP)や鉱工業生産指数等と対比してとらえることができるものである。
 このうち、「輸送業総合」は、鉄道、バス、航空等の営業輸送のみの輸送指数を、「輸送活動総合」は、営業輸送及びマイカー等の自家輸送の両者を含めた輸送指数を指す。

3−1−20図 輸送指数の動向
3−1−21図 輸送業総合の輸送指数の四半期毎の増減率に対する輸送機関別寄与度の推移

〈輸送指数の寄与度分解について〉
 輸送活動における各輸送機関の経済的貢献度を把握するためには、輸送指数を寄与度分解し、その動向をみるのが効果的である。ここでは、国内における輸送活動を旅客と貨物に大別し、寄与度の動向を輸送機関毎に検証している。なお、この寄与度分解は、貨物については、すべての輸送機関を対象とした国内貨物輸送活動ベースで行っているが、旅客については、主として家計消費活動に利用されるマイカー等を除外した国内旅客輸送業ベースで行っている。

3−1−22図 国内旅客輸送業の輸送指数の増減率に対する機関別寄与度の推移
3−1−23図 国内貨物輸送活動の輸送指数の増減率に対する機関別寄与度の推移

4 最近の輸送動向

(1) 国内旅客輸送の動向(12年4月〜7月の実績)
(JR、民鉄はともに減少)
 JR6社合計の12年4月〜7月の輸送人員は、対前年同期比(以下同じ。)0.7%減となった。そのうち定期旅客は0.7%減、定期外旅客は0.6%減となっている。
 民鉄の輸送人員は0.9%減となった。そのうち定期旅客は1.7%減、定期外旅客は0.3%増となっている。
 (東京のタクシーは増加に転じる)
 東京のバスは1.7%減だったが、タクシーは1.6%増と増加に転じた。
(航空は増加傾向が続く)
 航空は3.1%減となった〔3−1−24表〕。

(2) 国内貨物輸送の動向(12年4月〜7月の実績)
(JR(貨物会社)はコンテナ、車扱ともに減少)
 鉄道による貨物輸送のうち、コンテナは、3月31日の北海道の有珠山噴火の影響によって、北海道発着の貨物が減少したため4.2%の減少となった。車扱については、セメントの大量定期輸送が行われていた線区の輸送廃止により大きく減少しているのに加え、多くの品目が減少傾向で推移していることにより、5.4%の減少となった。これらにより、鉄道全体では4.8%の減少となった。
(特別積合せトラックは増加)
 特別積合せトラックについては、Eコマース(電子商取引)の進展等の要因により増加傾向にあるが、貨物の小ロット化によってトン数では2.9%増となっている。
(内航海運は減少)
 鉄鋼、セメントなどの品目では国内需要の回復により、好調に推移しているが、石油元売り業者の油槽所閉鎖等の影響を受けて、石油関連の品目が減少したため、内航海運全体では0.8%減となっている。
(航空は増加)
 航空便は、引き続き生鮮食料品や航空宅配貨物が好調に推移しているため、全体では5.0%増となっている〔3−1−25表〕。

(3) 国際輸送の動向(12年1月〜7月の実績)

(出国日本人数、訪日外客数ともに増加)
 出国日本人数は、2000年問題の影響で年末年始に出控えた人が、曜日配列がよかったゴールデンウィークに海外旅行に出かけたため8.2%増となった。訪日外客数は、経済が回復した韓国からの訪日者が増えたことなどが影響し8.6%増と好調に推移した〔3−1−26表〕。
(外航海運貨物は増加)
 我が国企業による外航海運貨物(12年1月〜5月の実績)は、輸出が0.4%増、輸入が7.1%増、三国間が13.7%増となっており、全体では8.3%増となっている。
(国際航空貨物は増加)
 国際航空貨物は、高い伸び率を示した10年(13.8%増)と同様の11.6%増という高い伸び率を維持している〔3−1−26表〕。

3−1−24表 輸送機関別国内旅客輸送量

輸送人員(単位:百万人)
11/4〜7(A) 12/4〜7(B) B/A*100
鉄道 7,506 7,446 99.2
 JR 3,004 2,983 99.3
  定期 1,910 1,896 99.3
  定期外 1,094 1,087 99.4
 民鉄 4,502 4,463 99.1
  定期 2,680 2,634 98.3
  定期外 1,822 1,829 100.3
自動車 341 339 99.6
 バス(営業用) 205 201 98.3
 タクシー 136 138 101.6
航空 26 25 96.9
注(1)運輸省「運輸経済月例報告」より作成。
 (2)バス(営業用)は、東京特別区及び近郊市街の輸送人員(都営バス及び乗合9社の合計)であり、タクシーは、東京特別区・武蔵野・三鷹地区及び多摩地域の全社の輸送人員であり、航空は、主要3社の輸送人員である。

3−1−25表 輸送機関別国内貨物輸送量

輸送トン数(単位:千トン)
11/4〜7(A) 12/4〜7(B) B/A*100
JR 12,430 11,838 95.2
 コンテナ 6,769 6,483 95.8
 車扱 5,661 5,355 94.6
特別積合せトラック 24,498 25,217 102.9
内航海運 45,172 44,797 99.2
 貨物船 24,274 26,356 108.6
 油送船 20,898 18,441 88.2
航空 268 281 105.0
注(1)運輸省「運輸経済月例報告」より作成。
 (2)特別積合せトラック、内航海運(貨物船)、内航海運(油送船)、航空はそれぞれ27社、14社、9社、3社の合計である。

3−1−26表 出国日本人数・訪日外客数及び輸送機関別国際貨物輸送量

人数(単位:千人)
11/1〜7(A) 12/1〜7(B) B/A*100
出国日本人数 9,149 9,903 108.2
訪日外客数 2,572 2,792 108.6

輸送トン数(単位:千トン)
11/1〜7(A) 12/1〜7(B) B/A*100
外航海運貨物 143,425 155,311 108.3
 輸出 5,574 5,594 100.4
 輸入 106,007 113,496 107.1
 三国間 31,844 36,221 113.7
国際航空貨物 633 706 111.6
注(1)運輸省「運輸経済月例報告」、法務省資料等より作成。
 (2)外航海運貨物、国際航空貨物はそれぞれ3社、5社の合計である。