運輸関係大手企業58社(以下「大手企業」という。)の11年度売上高についてみると、鉄道車両製造業等3業種で増収となっているが、港湾運送業、造船業、乗合バス業等6業種で減収となっている。
なお、外航海運業については、11年度に企業の合併が行われた結果、1社平均で増収となっているが、業界全体では減収となっている。
また、大手企業の11年度経常利益についてみると、10業種中、鉄道業、外航海運業は増益となっているものの、定期航空業、港湾運送業、倉庫業等5業種で減益となっており、また、造船業、鉄道車両製造業は経常赤字となっている。
さらに、大手企業の11年度経常利益率についてみると、外航海運業、港湾運送業等は増加するものの、定期航空業、造船業、乗合バス業等5業種で減少する。
3−1−27図 運輸関係大手企業1社平均直近5年度売上高の推移 3−1−28図 運輸関係大手企業1社平均直近5年度経常利益の推移 |
「平成12年度運輸関連企業設備投資動向調査」(以下「設備投資動向調査」という。)によると、運送業(原則として資本金1億円以上の1,834社調査)における12年度設備投資計画は、対前年度比20.5%減(総額2兆1,676億円)となっており、11年度設備投資実績の対前年度比5.0%増から減少に転じた。業種別にみると、鉄道業、航空運送業など10業種で減少している。
(3) 景況感
「運輸関連企業の景気動向に関する調査(平成12年9月1日現在)」(以下「景気動向調査」という。)によると、最近の交通事業者の景況感は、厳しい状況にあるものの、10年9月の調査を底に改善傾向にあり、景況感DI値は前回調査(12年3月)に比べ25.4ポイント増加している。
3−1−29図 運輸関係大手企業1社平均直近5年度経常利益率の推移
設備投資動向調査によると、事業者の設備投資に要する資金調達については、その35%を外部からの借入金等によっている。景気動向調査によると、金融機関の貸出態度はDI値−8.4、資金繰りは同−23.5とそれぞれ前回調査(11年9月)時点に比べ改善している。
業種 |
増減率(%) (対前年度比) |
12年度設備投資計画額 (百万円) | 12 年 度 の 動 向 | |
11/10 | 12/11 | |||
運送業部門計 | 105.0 | 79.5 | 2,167,551 |
|
鉄道業 | 122.9 | 83.6 | 1,621,830 | 構築物等、用地は大幅に減少する。 |
トラック運送業 | 75.5 | 108.3 | 168,109 | 自動車、ターミナル施設は増加する。 |
航空運送業 | 72.5 | 48.7 | 139,185 | 航空機等は大幅に減少する。 |
倉庫業 | 94.4 | 75.7 | 93,874 | 用地、普通倉庫は大幅に減少する。 |
バス業 | 84.7 | 83.2 | 50,099 | 自動車等は減少する。 |
外航海運業 | 58.4 | 47.9 | 31,130 | 液化ガス船等は大幅に減少する。 |
内航海運業 | 101.8 | 65.0 | 15,289 | セメント専用船は大幅に増加するものの、一般貨物船、油送船は大幅に減少する。 |
港湾運送業 | 105.1 | 74.0 | 13,764 | 大型荷役機械、野積場は大幅に減少する。 |
ハイヤー・タクシー業 | 95.5 | 68.1 | 12,331 | 車庫及び修理工場等は大幅に減少する。 |
航空利用運送業 | 71.7 | 107.7 | 7,881 | その他は減少するものの、自動車は大幅に増加する。 |
鉄道利用運送業 | 117.3 | 68.2 | 7,217 | 車庫及び修理工場は大幅に増加するものの、その他は大幅に減少する。 |
国内旅客船業 | 73.1 | 38.9 | 6,842 | 自動車航送船等は大幅に減少する。 |
注 平成12年度 運輸関連企業設備投資動向調査により作成。 |
11年の全産業倒産件数は、15,460件と対前年度比19.3%の減少となっている。運送業の倒産件数は448件と対前年比22.1%の減少となっている。全産業の負債総額は、政府の中小企業対策などの金融政策が功を奏し、対前年度比5.8%減少の13兆5,522億円となっている。このうち、運送業の負債総額については対前年比22.7%減の737億円となっている。
全産業でみた最近の雇用状況は、雇用者数が減少し、完全失業率が4%台とこれまでにない高水準で推移するなど依然として厳しい状況である。交通事業をめぐる雇用状況も厳しい状況下にあるが、景気動向調査によると、運輸関連企業の人手不足感は、人手過剰感を約5ポイント上回り、9年3月の調査以来、初めてDI値がプラスへ移行した。
3−1−32図 運輸業の設備投資資金調達実績及び計画 3−1−33図 金融機関の貸出態度の推移 3−1−34図 資金繰りの推移 |
3−1−35図 倒産負債総額推移 3−1−36図 運輸関連企業の人手不足感及び採用者数の推移 |
政府としては、当面の経過回復に全力を尽くすという観点に立ち、いわゆる十五ヶ月予算の考えの下に10年度第三次補正予算と11年度予算を一体的に捉え、このもとで、景気回復のために即効性がある、21世紀を見据えた課題に対応しうる対策を含めた各種の施策を切れ目なく実施した。
運輸省としては、9年以降の厳しい景気の停滞を打開するため、運輸関係公共投資の促進等による内需の拡大、規制緩和に伴い必要となる環境整備策や高齢者障害者対策による運輸経済の活性化を推進するとともに空港使用料等の公的負担の軽減、観光サービスの充実等による即効性のある消費拡大を図り、さらに、先端分野への投資を刺激する技術開発等を進めた。
(2) 経済新生対策
公需から民需への円滑なバトンタッチを行い、民需中心の本格的な回復軌道に乗せるため、事業規模6.8兆円の社会資本整備等を盛り込んだ「経済新生対策」が策定され、運輸省としてもその一環により、1.大都市圏拠点空港、中枢・中核港湾の整備による物流効率化・競争力強化、2.航空危機管理体制の充実等情報通信・科学技術振興対策、3.台風18号による緊急安全・防災対策等を推進した。
(3) 12年度当初予算と公共事業等予備費に基づく各種対策の推進
12年度当初予算については、緩やかな改善を続けている我が国経済を、本格的な回復軌道につなげていくため、経済運営に万全を期すとの観点に立って編成しており、特に、この中の公共事業については、景気回復に全力を尽くすとの観点に立って編成した11年度当初予算と同額を確保している。また、景気の下支えに万全を期すため、速やかに公共事業等予備費を使用した。以下に運輸に係る主要な施策について述べる。
(2) 交通分野における雇用対策
交通分野における雇用対策(船員雇用対策については第3部第6章第3節参照)については、以下2つの助成金制度の活用を中心に措置が講じられている。
コラム 交通分野の新サービス情報をHPで情報提供 |
交通分野では、規制緩和に伴い、創意工夫を活かしたアイデアあふれる新サービス、新規事業が見られるようになってきている。運輸省では、こうした新しい動きを支援するため、ホームページを開設して情報提供に努めるとともに、地方運輸局等に「新規事業アドバイザー」を設置することとした。 ホームページにおいては、運輸関連の新サービス・新規事業に関する先進事例の紹介、交通事業の開始や新サービス・新規事業分野の開拓に役立つ支援施策、交通関連の事業を始める際の手続きなどさまざまな情報を提供している(運輸省ホームページ(http://www.motnet.go.jp)からリンクしている。)。 これまで、新たに福祉タクシー事業を始めたい、インターネットを利用した荷主と運送会社の斡旋・仲介業を考えてみたいといった相談が各地方運輸局等に寄せられており、新規事業アドバイザーは、個々の相談ごとに、支援措置や行政手続など事業開始に必要な情報を提供しながら助言を行い、新たな事業展開を支援している。
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