第4章 国民のニーズに応える鉄道輸送の展開

鉄道整備の基本的方向

 21世紀に向けて、国土の均衡ある発展を図り、国民が真に豊かさを実感できる社会を実現するためには、交通関係社会資本整備の充実・強化が重要となっている。特に鉄道整備については、都市間移動のスピードアップや通勤・通学時の混雑緩和、道路の混雑解消、高齢化社会の到来への対応、地球温暖化防止、サービスの向上等の観点から国民の強い要望があり、これに応えるべく鉄道整備を推進している。
 しかし、鉄道整備に要する資金は膨大であり、投資の回収に長期間を要する一方で、近年は需要等の大幅な伸びは期待できず、投資のインセンティブが働きにくくなってきている。
 こうしたことから、鉄道事業者の投資を促進する、あるいは鉄道の整備を支援するため、財政、政策金融、税制、運賃政策等について検討し、国、利用者等の関係者がそれぞれ必要な負担を行い、鉄道整備の推進のため一層努力していくことがますます重要となっている。
 さらに、運輸政策審議会は、平成12年8月、運輸大臣に対し、「中長期的な鉄道整備の基本方針及び鉄道整備の円滑化方策」について答申を行い、今後の鉄道整備の基本方針を明らかにした。
 また、公共事業については、投資の重点化、効率化を進め、建設コストの縮減、費用対効果分析を含めた総合的・体系的な評価の活用、各種公共事業との連携・整合性の確保等に留意した上で、効果的・効率的に実施していく必要がある。

第1節 鉄道輸送サービスの充実

1 利用者利便の向上

 運輸省は、鉄道について、利用者利便の一層の向上、高齢者・身体障害者等の円滑な移動の確保等を図る事が重要であることから、種々の方策を講じてきている。

(1) エレベーター設置等によるバリアフリー化

 駅施設に関しては、平成12年5月に「交通バリアフリー法」が公布され、同法において旅客施設の新設・大改良に際しての移動円滑化基準への適合義務を規定している。また、これまで、エレベーター・エスカレーターの設置については、「鉄道駅におけるエレベーター及びエスカレーターの整備指針」(11年4月改訂)を策定し、その整備を指導してきたところである。
 エレベーター・エスカレーター、障害者トイレをはじめとしたバリアフリー化設備の整備については、10年度から、公営地下鉄等の駅におけるバリアフリー施設の整備のため、国と地方公共団体が協調して補助を実施している。また、民間鉄道が行う鉄道駅におけるバリアフリー化設備の整備に対し、10年度から国と地方公共団体が協調して補助を実施しており、さらに12年度から、第三セクターが行う鉄道駅の総合的な改善のうち、バリアフリー施設の整備に対し、国と地方公共団体が協調して補助を実施している。
 11年度は、補正も含め、公営地下鉄等の駅におけるバリアフリー施設整備について3.7億円、民間鉄道の行うバリアフリー施設整備について9.7億円の予算をもって補助を行い、整備の促進を図っている。
 さらに、10年度から、駅に設置されるエレベーター・エスカレーターについて、一定の要件の下での税制上の特例措置を講じており、また、12年度からバリアフリー化のための改良工事により取得した施設についても税制上の特例措置を講じている。
 なお、11年度末現在、JR、大手民鉄及び地下鉄におけるエレベーター設置駅数は825駅、エスカレーター設置駅数は1,308駅である。
 これらに加え、自動券売機、自動改札機等の鉄道駅における諸設備についても、「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者等のための施設整備ガイドライン」(6年3月改訂)に基づき、各事業者を指導している。

(2) 乗継ぎ利便の向上

 鉄道においては、従来から高速化や輸送力増強に積極的に取り組んできたところである。他方、既存の鉄道ネットワークを有効に活用し、より質の高い公共交通サービスの提供を実現していくためには、相互直通運転化等により鉄道結節点における乗継ぎの負担を軽減し、シームレスな輸送を確保していくことも重要となってきている。
 このような観点から、第2部第5章第2節で述べたとおり、乗継円滑化事業により運輸施設整備事業団を通じて補助を行うほか、12年3月に施行された鉄道事業法の一部改正により、乗継ぎ利便の向上を推進する。

3-4-1図 エレベーター・エスカレーターの設置状況

(3) 車両の整備

 鉄道車両については、2年3月に「心身障害者・高齢者のための公共交通機関の車両構造に関するモデルデザイン」が策定され、これに基づき、車椅子スペース、優先席、次駅案内表示装置、障害者対応トイレ等の整備を進めるよう事業者を指導している。また、車両間転落防止装置の整備、乗降性に優れた路面電車の超低床式車両の導入についても促進を図っている。さらに、12年度税制改正において、低床型路面電車について税制上の特例措置が講じられた。

2 鉄道事故調査・分析体制の整備

 鉄道の事故調査・分析については、運輸技術審議会答申「今後の鉄道技術行政のあり方について」(平成10年11月)において、公平・中立の立場から国が事故等の調査・分析を行うとともに、鉄道事業者による事故等の調査・分析結果を的確に評価することが必要であるとの指摘がなされたことを受け、「事故調査検討会」及び「事故分析小委員会」による事故等の調査・分析体制を整備した。その概要は以下のとおりである。

 1.事故調査検討会は、鉄道局長のもとに、特大事故や特異な事故が発生した場合等に直ちに立ち上げ、現地調査を含め事故の原因調査、再発防止対策の検討等を行う。

 2.事故分析小委員会は、運輸技術審議会鉄道部会の下に設置し、運転事故全般、列車の運休・大幅な遅延等について、発生状況・傾向分析を行い、事故等の未然防止に有効な対策の検討等を行う。

3 平成11年度の鉄道事業者の経営状況

(1) 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社

 JR東日本、JR東海及びJR西日本については、景気低迷による旅客需要の減退等により営業収入は減少したものの、要員合理化による人件費及び物件費の節減や支払利息が減少した結果、経常損益において、JR東日本が対前年度90億円増の1,082億円を計上した。しかし、新幹線と航空との競争激化により営業収入の減が影響したJR東海は対前年度19億円減の702億円、JR西日本は山陽新幹線トンネルコンクリート剥落事故等の影響もあり対前年度82億円減の423億円を計上するに至った。
 また、JR北海道、JR四国及びJR九州については、本州3社と同様に営業収入が減少したものの、要員合理化による人件費の節減や経営安定基金の運用により、経常損益において、JR四国が対前年度17億円増の5億円、JR九州が対前年度17億円増の52億円を計上したものの室蘭線礼文浜トンネルコンクリート剥落事故及び有珠山噴火等が影響したJR北海道は、対前年度4億円減の15億円を計上した。
 さらにJR貨物については、営業収入は物流市場の低迷に伴う輸送需要の減少、水害・礼文浜トンネルコンクリート剥落事故及び有珠山噴火の影響により引き続き減少となった。営業費用については、要員の合理化及び経費削減を推進し対前年度131億円減と改善されたものの、経常損益は37億円の赤字を計上し7期連続の赤字となった。しかし、平成8年度を底に改善傾向にある。

(2) 民間鉄道事業者

 大手民鉄15社(注1)については、景気低迷、少子・高齢化等を反映し11年度の鉄軌道営業収益は落ち込み、15社全体の営業利益は対前年度比9.0%減の2,301億円、経常利益は付帯事業の好調等により対前年度17.7%増の1,708億円となった。
 また、準大手民鉄6社(注2)については、大手民鉄同様、鉄軌道営業収益は落ち込み、営業利益は35億円、経常利益は33億円となった。
 一方、中小民鉄については、過疎化による運賃収入の伸び悩み等により、大部分の事業者が赤字経営となっており、11年度鉄軌道営業損失は114社全体(注3)で11.2億円、また経常利益は204億円の損失となったが、前年度に比べると改善されている。なお、自立的な鉄道経営を目指す中小民鉄事業者に対しては、地方公共団体とともに支援している。

(3) 地下鉄事業者

 帝都高速度交通営団の11年度営業利益は、対前年度15.1%増の525億円、経常利益は対前年度107.7%増の188億円となった。一方、公営9事業者全体の11年度営業利益は対前年度67.3%減の27億円、経常損益は対前年度0.5%減の1,662億円の赤字と、依然として厳しい経営状況にある。このため、今後とも地下鉄事業者においては、経営の効率化等を推進する必要がある。
 なお、地下鉄は、他の鉄道に比べてその建設費が巨額であり採算性の確保が困難であるため、国においても従来より地方公共団体とともに支援している。

(注1)大手民鉄15社:東武鉄道、西武鉄道、京成電鉄、京王電鉄、小田急電鉄、東京急行電鉄、京浜急行電鉄、相模鉄道、名古屋鉄道、近畿日本鉄道、南海電気鉄道、京阪電気鉄道、阪急電鉄、阪神電気鉄道、西日本鉄道
(注2)準大手6社:新京成電鉄、大阪府都市開発、北急行電鉄、神戸電気鉄道、神戸電鉄、山陽電気鉄道
(注3)中小民鉄:中小一般61社+転換鉄道38社+貨物鉄道15社

4 鉄道車両工業の現状と課題

(1) 我が国の鉄道車両工業の現状

 新造車両等の生産実績の推移は、3-4-2図のとおりである。
 国内需要は、昭和62年度以降増備及び老朽車両の取換等の車両の新造により増加したが、平成3年度以降これらの需要が一段落したことにより低迷傾向にある。一方、輸出は欧州の車両産業界の積極的な売り込み等により厳しい状況が続いている。このため、今後とも大幅な需要増加は見込まれない状況にある。

3-4-2図 我が国の新型車両等の生産実績の推移

(2) 鉄道車両工業の課題

 今後、我が国の鉄道においては、利用者のニーズに応えるための高速化、安全性、快適性の向上等に加えて省エネルギーや低騒音といった社会的要求を満たす車両の開発・提供が求められている。
 また、我が国の鉄道車両工業を発展させるためには、鉄道車両の製造事業者と鉄道事業者が、互いに協力して技術開発を推進するとともに、業界として海外の市場や車両産業界の動向も視野に入れ、鉄道車両の共同開発及び標準化並びにコスト低減等について積極的に取り組む体制を整備していくことが強く求められている。

第2節 鉄道整備の推進

1 新幹線鉄道の整備

(1) これまでの整備新幹線の整備状況

 全国新幹線鉄道整備法に基づく整備計画が定められている整備新幹線については、国土の均衡ある発展と地域の活性化に資することから、その整備を着実に推進している〔3-4-3図〕。
 具体的には、平成元年より東北新幹線盛岡・八戸間、北陸新幹線高崎・長野間、糸魚川・魚津間及び石動・金沢間、九州新幹線新八代・西鹿児島間の3線5区間の整備を推進しており、このうち9年10月には北陸新幹線高崎・長野間が開業した。
 また、10年3月には東北新幹線八戸・新青森間、北陸新幹線長野・上越間、九州新幹線船小屋・新八代間の工事に着手し、その整備を推進している。

(2) 今後の整備新幹線の取扱い

 今後の整備新幹線の整備については、8年12月の政府与党合意に基づき、(3)の他、以下のような方針により取組んでいる。

(ア) 整備新幹線は、日本鉄道建設公団(鉄道公団)により建設されており、開業後も鉄道公団が保有し、営業主体に有償で貸し付けるものであるが、整備新幹線の建設費は、9年に改正された全国新幹線鉄道整備法に基づき、国の公共事業関係費、既設新幹線鉄道の譲渡収入、地方公共団体の負担及びJRからの貸付料等を財源としている。
(イ) 並行在来線(整備新幹線と並行している在来線)については、整備新幹線の開業時にJRの経営から分離することとし、具体的な経営分離区間については、沿線地方公共団体及びJRの同意を得て確定することとしている。 (ウ) 鉄道貨物輸送については、適切な輸送経路及び線路使用料を確保することとし、関係者間で調整を図っている。
(エ) また、整備新幹線建設推進高度化等事業として、新幹線鉄道の高速化効果を他の地域に均てんするための軌間可変電車(フリーゲージトレイン)の技術開発及び未着工区間における所要の調査等を行っている。

3-4-3図 整備新幹線概要図

(3) 新規着工区間等の取扱い

 9年7月より政府・与党整備新幹線検討委員会において新規着工区間(3線3区間)等の取扱いについて検討を行った。そして、10年1月にその検討結果が取りまとめられ、以下のとおり整備を進めている。

(ア) 新規着工区間
 新規着工区間である東北新幹線八戸・新青森間、北陸新幹線長野・上越間、九州新幹線船小屋・新八代間の3線3区間は、収支採算性の見通し等の基本条件が確認されたことから10年3月に着工した。
(イ) その他の区間
 北海道新幹線新青森・札幌間、九州新幹線長崎ルート武雄温泉・新大村間及び北陸新幹線南越・敦賀間については、環境影響評価を実施している。
 また、整備新幹線の整備の更なる推進について、12年4月より、政府・与党整備新幹線検討委員会において、検討が行われている。

コラム  新幹線におけるサービス向上の取り組み
 JR西日本は、平成12年3月のダイヤ改正に合わせて、山陽新幹線に新型車両「ひかりレールスター」を導入した。
 旅客数が伸び悩んでいる山陽新幹線において、「ひかり」のより一層のサービス向上、スピードアップ等により利用客の増加を図るとともに、山陽新幹線における輸送体系の見直しをしようとするものである。
 車両は、JR西日本とJR東海が共同開発した700系車両をベースに、ボディカラーや内装を一新、8両編成でグリーン車並のゆったりした指定席を5両配置し、ノートパソコンが使用できる座席やグループ向けの本格的な個室、車内放送がないサイレンスカーなど多彩なサービスを用意し、所要時間も新大阪~博多間を従来よりも32分スピードアップし2時間45分で結んでいる。
 運行開始後、乗車率も高水準を維持しており、同社にとって明るい材料となっている。

ひかりレールスター

2 在来幹線鉄道の整備

 在来幹線鉄道については、所要時間の大幅な短縮や利用者利便の向上を図るため、幹線鉄道等活性化事業費補助制度や運輸施設整備事業団による幹線鉄道の整備に対する無利子貸付制度を活用し、整備を推進している。具体的には、愛知環状鉄道(岡崎・高蔵寺間)の高速化事業を11年3月より実施している〔3-4-4表〕。
 さらに、フリーゲージトレインの技術開発の進捗状況も踏まえ、11年度より今後の高速鉄道網整備の一方策としての新幹線直通運転化事業について、乗り換え解消等による利用者利便の向上をはじめその整備効果等について検証するとともに、全国における将来の事業化の可能性について調査を行っている。

3-4-4表 幹線鉄道高速化事業等一覧

線区名・区間 整備内容  効           果  備      考
幹線鉄道等活性化事業 奥羽線
福島~山形
新幹線直通運転化 東京~山形
3時間9分→2時間27分
平成4年7月1日開業
石勝線・根室線南千歳~釧路 高速化 札幌~釧路
4時間25分→3時間40分
平成9年3月22日開業
北越北線
六日町~犀潟
高速化 東京~金沢
3時間58分→3時間43分
平成9年3月22日開業
豊肥線
熊本~肥後大津
高速化 博多~肥後大津
2時間7分→1時間49分
平成11年10月1日開業
宗谷線
旭川~名寄
高速化 札幌~稚内
5時間50分→4時間58分
平成12年3月11日開業
愛知環状鉄道線岡崎~高蔵寺 高速化 岡崎~高蔵寺 約10分短縮 列車増発 3本/1時間→4本/1時間 平成16年度開業予定
無利子貸付制度による事業 智頭線等
上郡~鳥取
高速化 大阪~鳥取
約4時間→2時間34分
平成6年12月3日開業
日豊線
小倉~大分
高速化 小倉~大分
1時間33分→1時間26分
平成7年4月20日開業
山陰線・宮福線等園部~天橋立 高速化 京都~天橋立 
2時間2分→1時間44分
平成8年3月16日開業
田沢湖線・奥羽線盛岡~秋田 新幹線直通運転化 東京~秋田 
4時間37分→3時間49分
平成9年3月22日開業
高徳線
高松~徳島
高速化 岡山~徳島 
2時間16分→1時間55分
平成10年3月14日開業
東海道新幹線 輸送力増強 ピーク時間帯
    11本/時→15本/時
平成15年度開業予定

3 都市鉄道の整備

 東京圏をはじめとする大都市圏における通勤・通学時の混雑は、近年の輸送力増強等の努力や、景気の長期低迷、少子高齢化の進展等ともあいまって緩和傾向にあるものの、路線によっては依然200%を上回る混雑率となっている区間があり、未だ厳しい状況にある。このため、今後とも既存ストックの有効活用を図りつつ、都市鉄道の計画的な整備等を行うことが必要である。
 東京圏、大阪圏及び名古屋圏については、運輸政策審議会から長期的な展望に立った鉄道整備の基本的な計画が答申されており、これらに基づいて計画的かつ着実な整備が行われている。東京圏については、12年1月、21世紀の新しい時代にふさわしい質の高い鉄道ネットワークの構築を目指した新たな計画が答申されたところである。
 これら都市鉄道の整備については、第2部第5章第2節で述べたとおり、地下高速鉄道の整備に対する補助をはじめとする補助制度、利子補給、無利子貸付による支援のほか、大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的整備の推進に関する特別措置法、特定都市鉄道整備促進特別措置法に基づく制度の活用により進められている。
 また、11年度より、大都市における先導的プロジェクトについて、学識経験者を中心に、関係地方公共団体、鉄道事業者等とともに、事業化方策の検討等を行う都市鉄道調査を実施しているところである。
 最近における主な都市鉄道等の整備状況は、3-4-5表のとおりであるが、今後とも引き続き、通勤・通学混雑の緩和に向けた輸送力増強等のための取組みを推進していくこととしている。

3-4-5表 主な都市鉄道等の整備及び整備予定(平成11~13年度)
事 業 者 名
線  区  名
整 備 内 容 開 業 日
横浜市 1号線
戸塚~湘南台

新線建設(延伸)

11年8月29日
多摩都市モノレール(株) 多摩都市モノレール線
多摩センター~立川北

新線建設(延伸)

12年1月10日
名古屋市 4号線
大曽根~砂田橋
名古屋大学~新瑞橋

新線建設(延伸)
新線建設(延伸)

12年1月19日
13年度内(予定)
東京都 大江戸線
新宿~国立競技場
国立競技場~都庁前

新線建設(延伸)
新線建設(延伸)

12年4月20日
12年12月(予定)
北総開発鉄道(株) 北総・公団線
印西牧の原~印旛日本医大

新線建設(延伸)

12年7月22日
帝都高速度交通営団 南北線
溜池山王~目黒

新線建設(延伸)

12年9月26日
東京都 三田線
三田~目黒

新線建設(延伸)

12年9月26日
埼玉高速鉄道(株) 埼玉高速鉄道線
赤羽岩淵~浦和美園

新線建設

13年3月(予定)
東京臨海高速鉄道(株) 臨海副都心線
東京テレポート~天王洲アイル

新線建設(延伸)

13年3月(予定)
名古屋ガイドウェイバス(株) 志段味線
大曽根~小幡緑地

新線建設

13年3月(予定)
神戸市 海岸線
新長田~三宮

新線建設

13年度内(予定)

4 地方鉄道の整備

 地方鉄道(中小民鉄、転換鉄道(注1)、地方鉄道新線(注2))は、地域における住民の足として、また、地域経済の発展のために重要な役割を果たしているが、近年の少子・高齢化や過疎化等による運賃収入の伸び悩みもあり、その経営は概して厳しいものとなっている。
 このため、従来より国は、地方公共団体とともに、自立的な経営を目指し鉄軌道施設の近代化を推進しようとする地方鉄道事業者に対し、整備事業費の一部を補助(鉄道軌道近代化設備整備等補助金)するなど、各種の支援措置を講じてきている。
 また、11年度より、地方鉄道の安全性の向上を図るため、鉄道軌道近代化設備整備等補助金を受けて取得した一定の鉄道施設について、税制上の特例措置を講じている。
 今後も、国及び地方公共団体においては、自主的な経営を目指す地方鉄道事業者に対し、上記の補助金等を活用し、経営努力を促すことが必要である。また、地方鉄道事業者においては、地域の実情、利用者ニーズを反映した利用しやすい鉄道とすることに努め、利用者利便の向上を図ることが必要である。

(注1)転換鉄道:地方交通線対策の一環として旧国鉄の経営から引き継がれた鉄道のうち、第三セクター等により経営されているもの。
(注2)地方鉄道新線:国鉄改革の一環として新線建設工事が凍結されていた路線のうち、第三セクターが経営することを前提に、日本鉄道建設公団により工事が再開されたもの。

<5 貨物鉄道の整備

 貨物輸送におけるモーダルシフトを推進するため、幹線鉄道等活性化事業費補助により、武蔵野線・京葉線に貨物列車が走行できるように施設を整備し、従来ルート(常磐線・総武線)に比べて、到着時間の短縮及び貨物列車本数の増加を図ることとしている。また、鹿児島線(門司駅)において、貨物拠点を整備して処理能力を高めることにより、九州発着取扱いの鉄道貨物の増加を図ることとしている〔3-4-6表、3-4-7図〕。

3-4-6表 貨物鉄道の整備
線区名・区間 整備内容 効果 備考
武蔵野線・京葉線
南流山~蘇我
貨物列車走行対応化 南流山~蘇我間 約2時間短縮
列車増発 33本/日→41本/日
平成12年度開業予定
鹿児島線
門司駅
貨物拠点整備 東京~鹿児島間 約8時間短縮
列車増発 48本/日→54本/日
平成14年度開業予定

3-4-7図 武蔵野線・京葉線の貨物走行対応化関係路線図

6 都市整備と一体となった鉄道駅の総合的な改善

 第2部第5章第2節で述べたとおり、地域振興のための街の活性化や都市の魅力創出の観点から街における中核的な役割を有している鉄道駅を総合的に改善することが必要となってきており、運輸省では、鉄道駅総合改善事業を活用して鉄道駅の機能強化を進めている。

第3節 今後の鉄道行政

1 運輸政策審議会第19号答申「中長期的な鉄道整備の基本方針及び鉄道整備の円滑化方策」について

 運輸政策審議会は、12年8月1日、運輸大臣に対し、「中長期的な鉄道整備の基本方針及び鉄道整備の円滑化方策」について答申を行った。

(1) 今後の鉄道整備の基本的方向を明示

 鉄道ネットワークは、形状の上ではほぼ概成しているものの、利用者から見た使いやすさなどの点でなお多くの課題があり、利用しやすく高質な鉄道ネットワークを構築することが重要である。また、地球環境問題や高齢化社会の到来に対応するため、バリアフリー化の推進など新たな社会的ニーズに対応した鉄道整備を推進することが必要である。一方、国及び地方公共団体の厳しい財政事情に鑑み、効率的かつ重点的な鉄道整備を実施することが必要である。

(2) 幹線鉄道及び都市鉄道の整備水準

(ア) 幹線鉄道について
 幹線鉄道については、国土の骨格となる広域的な幹線鉄道ネットワークを構築するため、整備新幹線の着実な整備を進めるとともに、五大都市(東京、大阪、名古屋、札幌及び福岡)又は新幹線駅と地方主要都市とを結ぶ在来幹線鉄道の最速列車の表定速度を線形改良、踏切除却及び保安対策の強化等により、時速100km台にまで向上させることをめざす。また、五大都市から地方主要都市までの間については、概ね3時間程度で結ぶことをめざす。
(イ) 三大都市圏鉄道
 三大都市圏鉄道については、大都市圏における通勤・通学混雑の緩和に向けた輸送力増強を図り、すべての区間のそれぞれの混雑率を150%以内(ただし、東京圏は、当面、180%以内)とすることをめざす。
(ウ) 主要空港アクセス鉄道
 主要空港アクセス鉄道については、国際的な空港と都心部との間の所要時間を30分台とすることをめざす。

(3) 国と地方公共団体の役割分担

 鉄道の整備にあたっては、民間主導による整備を基本としつつも、政策的に重要なプロジェクトについては公的主体がこれを適切に補完する必要がある。具体的には、1.整備新幹線の整備については、国がイニシアティブを発揮し、地方公共団体が応分の協力を行う。2.主要幹線鉄道の高速化及び主要空港アクセス鉄道の整備については、国が地方公共団体と共同して取り組む。3.地域的な交通を担う都市鉄道の整備については、国が地方公共団体に対して支援を行いつつ、共同して取り組む。4.地域的な交通を担う都市鉄道の整備であっても、政策的重要性は高いものの、旅客流動が広域にわたるため、民間鉄道事業者やこれを補完する地方公共団体だけでは整備の推進が期待しがたいプロジェクトについては、国も、単なる環境整備にとどまらず、より積極的な役割を担う。

(4) 上下分離方式の検討

 鉄道の整備にあたっては、民間事業者に対する支援方策の見直しなどによりがたい場合には、公的主体等がインフラを整備し、運行は運行事業者が効率的に行う「上下分離方式」も検討すべきである。

(5) 在来幹線鉄道及び都市鉄道等の整備の進め方

 在来幹線鉄道については、関係者からなる地元協議会等において具体的な整備方針を策定することが適当である。また、都市鉄道等については、三大都市圏については運輸政策審議会答申、地方中核都市圏については地方交通審議会答申等、空港アクセス鉄道については地元協議会等の策定する整備方針に則り整備を推進することが適当である。さらに幹線鉄道及び都市鉄道の整備に対する支援方策の見直しについても検討を図る必要がある。

2 運輸技術審議会第23号答申「今後の鉄道技術行政のあり方について」

 鉄道を取り巻く経済社会環境が大きく変化し、また鉄道システムを支える様々な技術分野で技術革新が進展していることから、鉄道技術行政は、このような変化に適切に対応するとともに、より一層の安全性の向上に資することが求められている。こうした状況を踏まえ、9年12月、運輸省は運輸技術審議会に対し「今後の鉄道技術行政のあり方について」諮問を行い、10年11月に答申が出された。
 この答申においては、安全の確保を第一の目的とし、利便の確保等国民からの要請を的確に把握し、これらに効果的に応えることを前提に、鉄道事業者の自主性及び主体的判断を尊重するという考えを基本とし、主として次のような方針が示された。

 (1) 国が定める技術基準について、規格・仕様を規定する仕様規定から、備えるべき性能を規定する性能規定とする。
 (2)個々の施設等に対する事前規制は、鉄道事業者がその事業内容に対応した十分な技術力を備えているか否かに応じ最小限とする。
 (3) 事前規制の緩和を踏まえ、監査等による事後チェックを充実する。
 (4) 事故等の原因究明及び再発防止のため、国による事故等の調査・分析を充実する。
 (5) 鉄道の安全性・利便性等に関する情報公開を推進する。
 運輸省では、この答申を踏まえ、必要な制度改正等を進めており、「鉄道事業法の一部を改正する法律」(11年5月公布、12年3月施行)では、一定の技術力を有することについて運輸大臣の認定を受けた鉄道事業者は、工事施行の認可をはじめとする認可申請等に際し、大幅に簡略化された手続によることができる制度(認定鉄道事業者制度)が設けられた。
 また、運輸省では、事故調査検討会による鉄道事故の調査体制を整備したところであるが、12年3月に営団日比谷線中目黒駅構内において発生した列車脱線衝突事故において初めての活動がなされ、所要の成果を上げつつあるところである。
 12年7月31日には、事故調査検討会から、今後の鉄道事故調査をさらに確固たるものとするため、「鉄道事故調査に関する意見」が提出され、これを受け、12年8月4日に運輸技術審議会鉄道部会において、常設・専門の事故調査組織を設けること等を内容とする「鉄道事故調査に関する提言」が取りまとめられた。運輸省では、この提言をうけ、鉄道事故調査体制の整備を進めていくこととしている。