第8章 人・物の流れを支える航空

 我が国の航空輸送は、旅客・貨物ともに急速な発展を続けており、これらの増大する航空需要に対処するためには、航空輸送サービスの充実、航空安全の確保及び基盤たる空港整備を促進し、国内・国際航空ネットワークを一層充実させる必要がある。
 まず、航空会社間の競争を通じて国内航空ネットワークを充実していくため、平成11年6月、安全の確保に十分配慮しつつ、いわゆる需給調整規制撤廃等、大幅な規制緩和を内容とする航空法の改正を行い、12年2月から施行した。これを契機に、航空会社による市場原理に基づいた運賃設定や新規参入が見られ始めている。
 さらに、空港整備については、航空ネットワークの充実をしていくうえでボトルネックとなっている大都市圏の拠点空港の整備を最重要課題としている。すなわち、首都圏において東京国際空港の沖合展開事業と、新東京国際空港の平行滑走路の整備を進め、また、関西国際空港の2期事業及び中部国際空港の整備についても既に着工するなど、着々と整備を推進している。また、旺盛な航空需要に対応するため、首都圏第3空港についても、引き続き総合的な調査検討を進めている。
 他方、航空管制の分野においても、増大する航空交通を円滑に処理するため、運輸多目的衛星(MTSAT)を中核とする次世代航空保安システムの整備を推進している。

第1節 利用者利便の一層の向上と航空ネットワークの充実

1 航空分野における規制緩和とその効果

(1) 規制緩和の経緯

 我が国においては従来、航空産業の育成を目的として航空各社の事業活動の分野が定められていたが、昭和61年、「競争促進」へと政策が転換され、国際線の複数社化及び国内線のダブル・トリプルトラック化(同一路線への2社目・3社目の参入)を推進するとともに日本航空の完全民営化を実施した。その後、国内線のダブル・トリプルトラック化については、路線参入に必要な輸送量の基準を段階的に緩和し、平成9年4月には更なる競争促進を図るため、その基準を撤廃した。
 運賃に対する規制についても7年の割引運賃設定の弾力化や8年の幅運賃制度の導入などに取り組んできた。また、国際航空運賃については、競争の進展等に伴い、より一層の運賃の多様化への要請が強まってきたことを踏まえ、10年10月、国際IT運賃(包括旅行運賃)の幅の下限を撤廃するとともに、PEX運賃(特別回遊運賃)の下限額を従来より低く設定した。これらの措置により、航空会社による運賃設定の自由度が高まり、多様な利用者ニーズに対応した運賃・料金の提供が可能となった。

(2) 需給調整規制の廃止と新しい航空運送事業制度の確立

 このように国内航空分野においては、昭和61年より規制緩和を段階的に実施してきた。そして、これら一連の国内航空分野の規制緩和の総仕上げとして、一層の競争の促進を通じた利用者利便の向上の観点から、運輸省では、以下の措置を講じた。

(ア) 国内航空分野における参入、運賃・料金制度等の見直し
 (a)需給調整規制を廃止し、路線ごとの許可制から安全面の審査を中心とした事業ごとの許可制に改めること
 (b)運航ダイヤについては、認可制から事前届出制に改め、ただし、路線の廃止を伴う場合は、6カ月前(利用者利便を阻害しないと認められる場合は2カ月前)の届出制とすること
 (c)発着枠の制限がある混雑空港については、発着枠の使用を一定期間ごとに許可する制度を創設するとともに、従来どおり運航ダイヤの認可制を維持すること  (d)運賃・料金は、認可制から事前届出制に改め、併せて、不当な運賃・料金については航空会社に対し変更を命じる制度を創設すること
 (e)運航又は整備に関する業務の管理の受委託の許可制度を創設すること
等を内容とする航空法の改正を11年6月に行い、12年2月より施行されている。
(イ)混雑空港におけるスロット配分ルール
 混雑空港におけるスロット(発着枠)配分ルールについては、発着枠の既得権益化を防止するとともに、航空ネットワークの維持・形成や、航空会社間の一層の競争や新規航空会社の参入を促す観点から、客観性・透明性のある配分ルールを策定の上、回収・再配分を行うこととしている。
 この配分のルールについては、10年5月より有識者による「スロット配分方式検討懇談会」を開催し、1.利用者利便を増進し、かつ効率的な会社にスロットを配分する「評価方式」を優先的に採用すること、2.ただし、個々の空港ごとの具体的なスロット配分については、配分の必要性が具体化した段階で、有識者からなる検討組織により公開の場において検討すること等を内容とする報告書が10年11月にとりまとめられた。
 羽田空港の発着枠については、新B滑走路の供用開始に伴い、空港処理容量の見直しを行った結果、12年7月から57便/日分(当初2年間は31便/日分)増加することとなった。この新規発着枠の配分については、有識者からなる「混雑飛行場スロット配分方式懇談会」を11年11月より公開の場において開催し、客観性及び透明性のある配分ルールについて具体的検討を行い、12年2月に報告書をとりまとめた。この報告書を踏まえ、運輸省は、以下のように羽田空港の新規発着枠の配分を行った。
 (a)新規航空会社枠(15便)
   スカイマークエアラインズと北海道国際航空の2社に各3便を配分するほか、今後の新規会社分として9便を留保した(未使用分については他の航空会社が暫定使用)。
 (b)特定路線枠(2便)
   ミニマムのネットワークの維持・形成等のため、新規開設空港路線(新紋別空港路線、能登空港路線)に各1便を配分した。
 (c)航空会社評価枠(40便)
   利用者利便の向上の観点や航空会社の効率的な経営の促進の観点から評価を行い、JALグループへ13便、ANAグループへ13便、JASグループへ14便配分した。
(ウ)航空輸送サービスに関する諸課題への対応
   改正航空法施行後における航空輸送サービスに関する諸課題に対応するため、11年6月から「航空輸送サービス懇談会」を公開の場で開催し、利用者の自己責任による自由かつ的確な選択を可能とするための情報公開の具体的な運用の在り方や、新しい運賃・料金の事前届出・変更命令制度の的確かつ透明性の高い運用の具体的な在り方について検討を行い、11年10月に検討結果のとりまとめを行った。
   これに基づき、運輸省は、12年2月に「運賃及び料金の変更命令に係る取扱要領」や「航空輸送サービスに係る情報公開の実施要領」等のガイドラインの策定を行った。

   その後、12年9月から運輸省のホームページにおいて以下の情報の公開を開始している。

 (a)航空輸送サービスの比較等に関する情報
   定時運航率・遅延便の総数及び原因別の内訳・欠航便の総数及び原因別の内訳
 (b)運賃関連情報
   航空会社別輸送実績及びその推移・路線別輸送実績及びその推移

(3) 航空市場の活性化

 このように、国内航空分野においては、段階的な規制緩和を行った後、12年2月からは需給調整規制が廃止され、市場原理と自己責任の原則に基づき、航空会社の創意工夫を中心とした様々な取り組みが展開されている。
 まず、運賃面では、元年度から11年度にかけて単位当たりの運賃(円/人キロ、大手3社平均)が約24%低下したほか、12年4月以降、主に以下のような様々な割引運賃が航空会社により新設され、利用者ニーズに対応した多様な運賃が設定がされてきている。

(ア)往復割引運賃(JALグループ、ANAグループ、JAS、SKY)
 往復利用の際に、普通運賃の5〜15%程度の割引
(イ)バーゲン運賃(ANA)
 搭乗期間限定で全路線全便1万円均一
(ウ)売り出し日5日間割引(JAS)
 売り出し日から5日以内に予約した場合に普通運賃の65%程度の割引
(エ)インターネット運賃(JALグループ、JAS)
 インターネットを通じて予約した場合に普通運賃の25%程度の割引
(オ)介護帰省割引運賃(JAS)
 要介護者の親族が介護のために帰省する場合に37%程度の割引
(カ)ミニグループ割引運賃(JALグループ)
 2〜9名のグループで利用する場合に15〜48%程度の割引
 また、国内線のダブル・トリプルトラック化も促進されており、昭和60年においては3社路線が3路線、2社路線が6路線だったが、ダブル・トリプル化基準の撤廃と需給調整規制の廃止により、平成12年7月現在のダイヤにおいては3社路線が25路線、2社路線が36路線となっており旅客が利用可能な航空会社の選択の幅は大きく広がっている。
 さらに、新規航空会社の参入も行われており、10年のスカイマークエアラインズと北海道国際航空に続き、12年6月にフェアリンクが航空運送事業の許可を受け、8月より仙台−関空路線において運航を開始している。
 12年7月からは航空3社により、大阪(関空、伊丹)−東京間の路線においてシャトル便の運航が開始され、ダイヤの大幅な改善のほか、共通ホームページの開設や空港における共通カウンターの設置等の航空サービスの向上策が実施されている。

コラム  大阪(関空、伊丹)−東京間シャトル便運航開始
 羽田空港の新B滑走路の供用開始に伴う平成12年7月からの新規発着枠の増加(関空路線、伊丹路線各3便分)を契機に、二大都市圏を結ぶ大阪−東京間の航空路線利用者の利便性を向上させるため、運輸省、地方自治体、経済界、航空会社等が一堂に参加した「大阪−東京航空シャトル便構想協議会」が12年3月に開催された。
 同協議会においてとりまとめられた報告書に基づき、関空−東京間のダイヤにおける空白時間の解消等によるダイヤの大幅な改善のほか、ダイヤの一覧検索や空席案内、予約等が可能な航空3社共通のホームページの開設(7月1日から)、空港における案内・予約機能等の機能を有する共通カウンターの設置(9月上旬)等といった航空サービス向上策の実施が図られている。
 大阪−東京間の12年7〜8月の搭乗者数は、1,154,011人(速報値、対前年同期比112%)となり、大阪−東京間のシャトル便は順調な滑り出しを見せた。

共通カウンター

2 空港使用料等公的負担の見直し

 利用者利便の向上及び地域経済の活性化の観点から、航空ネットワークの維持・拡充等を図るため、空港使用料等の見直しを行ってきている。
 具体的には、11年4月1日より、国の管理する2種A空港(新千歳、名古屋、福岡空港等)等の着陸料を従来の2/3に軽減し、これに伴い、各航空会社によって航空運賃が引き下げられた。なお、地方自治体の管理する2種B及び3種空港についても、大部分の空港において同様に着陸料が軽減され、航空運賃が引き下げられた。
 また、我が国の管轄するFIR(飛行情報区)を飛行する航空機に対して提供される管制等のサービスの対価である航行援助施設利用料(以下「航援料」という。)は、従来日本に離着陸する航空機からのみ徴収していたが、我が国に離着陸することなしにFIRを通過する航空機も一定の航行援助サービスを受けているため、これらの上空通過機からも航援料を12年1月1日より徴収し、我が国に離着陸する航空機との負担の適正化を図った。
 さらに、12年7月1日より、需給調整規制撤廃後においてもバランスのとれた航空ネットワークの形成を図るため、羽田空港の発着枠拡大に伴い増加する31枠に関する増便路線のうち幹線(新千歳、伊丹、関空、福岡、那覇)以外の路線に係る羽田空港の着陸料を通常の2/3に軽減するとともに、羽田空港の低利用時間帯の利用度向上を図るため、羽田空港に朝(午前8時30分前)到着する便の羽田空港の着陸料及び羽田空港を夜(午後8時30分以降)に出発する便に係る国管理の相手空港の着陸料を通常の1/2に軽減した。
 今後とも、これまでの空港使用料の引下げの政策効果や航空会社のリストラの実施状況等を見極めつつ、空港使用料の軽減について検討を進めていくこととしている。

3 国内航空ネットワークの展開

(1) 11年度の輸送概況

 11年度の旅客・貨物の輸送状況についてみると、旅客輸送実績は約9,147万人(対前年度比約4.0%増)、貨物輸送実績は約89.3万トン(対前年度比約4.4%増)となり、国内航空輸送市場は着実に成長していることがわかる。
 しかしながら、路線数については、11年度において、定期航空運送を行う航空会社によって運航された路線数は256路線となっており、10年度と比較して、11路線の減少となっている。

(2) 地域航空路線の維持・活性化について

 前述したように12年2月に、国内航空分野において需給調整規制が廃止された。それに伴う競争の激化のなかで、航空会社が経営効率化等によって経営基盤の強化を図り、利用者に対するより良い航空サービスの提供を図っていく中で、幹線等の高需要路線に比べ競争力が弱く、コスト面で割高な離島路線について、航空会社は撤退を余儀なくされる可能性がある。
 そういった離島に係る航空路線のうち、不採算ではあっても当該地域住民の日常生活に不可欠な路線については、地域的な航空ネットワークの維持・活性化を図る観点から、国として、これらの路線の維持を引き続き図っていく必要がある。
 このため、離島航空路線対策については、11年度より、航空会社の経営改善の自主的な取り組みを基本としつつ、離島航空路線に係る運航費の補助、離島航空路線に就航する航空機に係る航空機燃料税の軽減措置を新たに実施するとともに、従来の離島路線維持施策である空港着陸料の軽減措置や固定資産税の軽減措置についても拡充を行った。また、新たに創設された運航費補助については、地方公共団体が独自に支援を講じた場合に所要の地方財政措置が講じられることとなった。

(3) 地方空港の運用時間延長

 増大する国内航空需要に対応するため、国内航空ネットワークの基幹空港である羽田空港においては12年7月に新たに発着枠の増加を図った。併せて地方空港の有効活用及び利用者の利便性向上の観点から、羽田空港を中心とする国内航空ネットワークを拡充するため、地方空港(稚内、女満別、旭川、釧路、帯広、秋田、小松、大分、熊本、宮崎及び沖永良部)の運用時間延長を行った。

4 国際航空路線網の充実等

(1) 国際航空路線網の充実

 12年7月現在、我が国20都市(21空港)と世界37ヶ国2地域109都市との間で我が国企業7社と外国企業62社により国際航空路線網が形成されており、国際定期便運航便数は週間約2,100便となっている。
 現在の国際航空は、昭和19年に採択された国際民間航空条約(シカゴ条約)を基礎に、原則として関係二国間の航空協定に基づいて形成されている。このため、我が国は、国際化の潮流に十分対応し、利用者利便の向上の観点から、各方面別の需要の動向、我が国航空企業の運航計画等を勘案しつつ、航空路線網の充実に努めている。なお、平成11年度においては、世界18ヶ国との間で計19回の二国間協議を行い、このうち16ヶ国との間で乗り入れ地点の追加や増便等に関する取り決めを結んでいる。
 加えて、近年では航空企業間の提携の動きが活発になってきていることを踏まえ、各国との二国間協議においては内外企業間のコードシェア(共同運航)の枠組みの設定にも努めており、その結果、相手国内区間を含む外国企業の運航している路線をも活用した我が国航空企業の路線網の拡大が可能となっている。また、これらの枠組みの中には、二国間の国際線区間のみならず、国際線に接続する国内線区間でのコードシェアを対象とするものも増えているため、その活用により、最近では日本企業の国内線でも外国企業が自社のコード(便名)を付けて接続運送を行う便が設定されるようになっており、拠点空港経由で地方空港から発着する海外運航の利便性が向上している。12年3月からは、関空発着の国際線に接続する関空・羽田間の国内便でも米国企業やドイツ企業とのコードシェアが開始されたため、羽田でのチェックインと関空での乗り換えによる海外渡航がより容易になり、首都圏の利用者にとっては海外渡航方法に関する選択肢が一層拡大することとなった。
 一方、成田空港については、旺盛な日本人海外旅行需要等を背景として自国企業の成田への新規乗り入れや増便を希望する国が多いことから、現在整備が進められている約2,200mの暫定平行滑走路の供用開始(14年初夏予定)に向けて、その効果が最大限発揮されるよう、増便や新規乗り入れに関する各国との協議を適切に進めていくこととしている。

(2) 航空事故に係る賠償制度等の見直し

 国際航空運送で事故が発生した場合の航空企業の賠償責任については、昭和4年に採択されたワルソー条約及びその関連条約・議定書が基本的な枠組みを定めてきたが、賠償限度額をはじめ、その内容を現在の実状に合致させること等が大きな課題となっていた。
 このため、国際民間航空機関(ICAO)では、7年より同条約の全面改正に向けた検討作業を開始し、11年5月にモントリオール(カナダ)のICAO本部で開催された外交会議において、従来のワルソー条約体系に代わる新たな賠償責任の枠組みを定めた新条約「モントリオール条約」を採択するに至った。この条約は、1.事故故で旅客が死傷した場合における賠償限度額を撤廃する、2.事故による旅客の死傷に対する損害賠償請求訴訟を旅客の居住国で提起することを認める、3.航空券・貨物運送状の電子化を認めるなど、我が国の主張を反映した内容となったため、我が国は、12年6月に締結して同条約の3番目の締約国となった。
 このモントリオール条約は、30ヶ国が批准書等を寄託した後に発効することとなっているため現時点では発効していない(12年7月現在、3ヶ国が批准)。ただし、貨物分野については、モントリオール第四議定書(貨物のみに関して規定されており、モントリオール条約と同内容)が既に発効(10年6月)しており、我が国も12年6月に同議定書を締結したことから我が国航空企業においては、貨物に係る運送人の責任、損害賠償の範囲等が明確化され、また、貨物運送状の電子化等の動きにも的確に対応することが可能となった。

5 「空」の幅広い利用を目指して

(1) ビジネス機の受け入れ

 企業活動のグローバリゼーションが進む中で、小型の企業保有機等のいわゆるビジネス機の運航ニーズが年々高まっており、12年7月より東京国際空港(羽田空港)で国内運航について新たに発着枠を設ける等年々受け入れ体制の充実に努めている。また、首都圏での国際運航については、羽田空港における深夜早朝の受け入れについて3月より検討を進めており、結論が得られるまでの暫定的な方針として、6月には、要望についてはできる限り新東京国際空港(成田空港)で受け入れるべく調整し、対応困難なものについては、羽田空港での受け入れも含め、個別に判断することを打ち出しており、今後は早急に結論を得るよう引き続き検討を進めることとしている。

(2) 羽田空港の低利用時間帯の有効活用

 首都圏の増大する国際航空需要に的確に対応するため、成田空港は国際線、羽田空港は国内線の拠点空港であるという役割を基本としつつ、羽田空港の深夜早朝の低利用時間帯の有効活用方策について、12年3月より検討を進めており、上記のビジネス機の取扱いの他、結論が得られるまでの暫定的な取扱いとして、9月に大田区民のハワイ・アロハフェスティバル参加のための国際チャーター便、11月に東京商工会議所大田支部によるグアム経済界との交流を目的とした国際チャーター便の運航を各々認めた。今後は上記の国際ビジネス機や国際チャーター便等の取扱いの方針について早急に結論を得るべく検討を進めることとしている。

(3) スカイレジャーについて

 近年、レジャーの多様化に伴い、スカイ・レジャーは単に「見る」だけではなく「体験」できるスポーツとして広まっている。地方公共団体においてもその振興を通じて地域振興を図ろうとする動きが増えてきている。
 このような状況において運輸省としては、(財)日本航空協会、全国スカイレジャー振興協議会等の関係団体を指導しつつ、スカイレジャーの安全確保及びその振興に努めている。
 具体的には、(財)日本航空協会において安全性、利便性が高く既存の航空交通との分離がなされたエリアを優良スカイレジャーエリアとして認定する事業を行っており、これに基づき、パラグライダー・ハンググライダーに係るエリアが9か所(12年6月現在)認定されている他、毎年度、各種スカイレジャーを一堂の場において展開する「スカイ・レジャー・ジャパン」(12年は5月13・14日に千葉県関宿町で開催)等のイベントについても、運輸省として積極的に支援を行ってきている。

第2節 航空安全の確保と航空保安システムの拡充

1 航空機の安全な運航の確保

 

(1) 航空機の安全な運航のために

 航空運送事業者に対しては、その事業内容に応じ、運航管理の実施方法、航空機の運用方法、航空機の整備方法等について運航規程及び整備規程に定めるよう義務付け、これを審査した上で認可しており、その遵守状況については、安全性確認検査等により確認し、必要に応じて改善措置を講じるよう指導している。
 また、航空技術の進展、新機材の導入等に対応して、新しい運航方式の導入や、航空機及び装備品の安全性に関する技術基準の策定、航空安全に係る技術情報の収集・分析・提供を行うとともに、運航審査体制及び航空機検査体制・整備審査体制の充実を図っている。
 特に11年度においては、コンピューター西暦2000年問題に関し、我が国登録航空機の電子機器等について調査検討を行い、安全上問題がないことを事前に確認したことにより、問題なく2000年を迎えることができた。
 また、安全性・環境適合性に係る技術基準の国際的整合化の動向に鑑み、国際民間航空機関(ICAO)における航空安全に係る活動や欧米・カナダ等の主要な外国当局との協議、諸外国との連携による相互の技術支援等を積極的に行うことにより、航空安全の推進を図っている。

(2) 航空法の改正等による航空安全の推進

 航空法改正により、12年2月から航空運送事業に係る需給調整規制が廃止され、今後、航空会社の新規参入及び多様な事業形態が予想されるが、需給調整規制廃止後の競争状況の中にあっても、輸送の安全の確保は航空行政の最も重要な課題であることから、参入の許可の際の審査、運航管理施設、整備施設等の検査等により、引き続き事業参入に係る事前審査を厳密に実施するとともに、参入後の定期的な検査や随時監視を実施する等、航空運送事業者に対する監視業務の充実を進めている。
 また、近年の航空技術の発達に対応して、航空整備士資格制度、航空機に装備が義務付けられる装置、航空運送事業の機長の認定制度等の見直しを行い、また、情報の収集及び分析が航空の安全に大きく寄与すると考えられる重大インシデント(事故には至らなかったものの、事故が発生するおそれがあったと認められる事態)の報告についても義務化を行った。

(3) その他の航空安全に関連する施策

 外国航空機の安全性に対する国民の関心の高まり等から、シカゴ条約の規定に基づき、我が国に乗り入れている外国航空運送事業者に対して、我が国の空港における外国航空機に係る立入検査(ランプ・インスペクション)を11年度より開始した。
 また、12年4月からは、航空安全に関連する情報の公開を運輸省のホームページ上で開始し、航空輸送の安全を確保するための仕組み、レジャー航空、重大インシデント等に関する情報の提供を行っている。

(4) 航行の安全を支えるために

 航空機の運航を支援するために、空の道標となる航空保安施設等が全国各地に設置されているが、これらの施設の機能、性能を常に正常に維持することは、運航の安全確保のために極めて重要である。運輸省ではこれらの施設について地上における検査のほか、実際に運輸省が所有する航空機を飛行させて検査を行っており、これを「飛行検査」と呼んでいる。
 飛行検査では、精密な測定機器や分析装置を装備した飛行検査用航空機(YS−11型機(4機)、SAAB2000型機(2機)、G−IV型機(2機))を使って広い範囲及び高度にわたって電波の受信状態等の記録、解析を行い、施設が所要の機能を発揮しているかどうかを確認している。
 このような飛行検査は、新たに設置される全ての航空保安施設に対する検査(開局検査)のほか、定期的な機能の確認(定期検査)や施設の変更又は障害復旧後の確認(特別検査)を目的として実施される。さらに、飛行検査用航空機を用いて飛行場計画のための調査、航空保安施設の位置を選定するための調査、飛行経路を設定するための調査等を行っている。
 また、後述する次世代航空保安システムに対応した飛行検査業務を実施するため、航続距離の長い新しい飛行検査用航空機としてBD−700型機の購入を11年に決定した。

(5) 航空気象施設の整備及び情報提供体制の充実

 気象庁は、航空機、地上作業者等に脅威となる雷を早期に検知するための雷監視システム、飛行場内の運航関係機関に画像情報を主体とした情報提供を可能とする航空気象情報ネットワーク等の整備を行った。さらに、航空機の離着陸に多大な影響を及ぼす地上付近の風の急変を検知できる空港気象ドップラーレーダーを新千歳空港及び大阪国際空港に整備中である。
 また、11年11月に開港した新紋別空港で航空気象業務を開始するとともに、12年6月からは福島空港で飛行場予報等の発表を開始した。
 これらの新たな施設の整備等により、飛行前若しくは飛行中の航空機等に対する気象情報提供の一層の充実を図り、運航の安全に資する。

2 増大する空の交通量に対する航空保安システムのあり方

(1)次世代航空保安システムの整備

(ア) 運輸多目的衛星(MTSAT)を中核とする次世代航空保安システムへの取り組み
 我が国における航空需要は、国民生活の向上による高速交通手段に対するニーズの高まり、経済及び社会の国際化に伴い、国際及び国内航空とも増大を続けており、これに応じて航空交通量も増大の一途をたどっている。しかしながら、現行の地上支援型航空保安システムでは、電波覆域等による限界があり、この増大に適切に対処できない状況になっている。
 国際民間航空機関(ICAO)において承認された「次世代航空保安システム構想(新CNS/ATM構想)」は、人工衛星やデータ通信といった新技術の導入により現行のシステムの限界を克服し、安全性の向上及び航空交通容量の拡大を図ることを目的としており、世界各国においてその実現に向けての取り組みがなされている。我が国においても、6年6月の航空審議会の答申「次世代の航空保安システムのあり方」に基づき、運輸多目的衛星(MTSAT)を中核とした次世代の航空保安システムの構築を推進してきている。
 MTSATを中核とする次世代の航空保安システムにおいては、安全運航を確保するために非常に高い信頼性及び運用の継続性が不可欠である。そのため、常にバックアップが可能となるようにMTSATを2機打ち上げ、常時2機の衛星により航空管制サービス等の提供を行うこととした。当初、MTSAT1号機を11年度に打ち上げる予定であったが、H−IIロケット8号機の不具合により打ち上げに失敗(11月)したため、代替機としてMTSAT新1号機を14年度に打ち上げることとなった。また、MTSAT新2号機打ち上げ時期は16年度とし、当初計画通りに17年度には常時2機の信頼性の高い体制を確立することとしている。
(イ) MTSATの効果
 MTSATの導入により、次の3つの面でそれぞれ従来のシステムより格段に優れたものとなる。
 (a)通信機能:現在は、洋上の航空機との通信は短波を利用した音声により行われているため、電離層の状態により通信が不安定で音質もよくないが、衛星システムを導入することにより航空機と地上管制機関との間をデータ通信により直接結ぶことが可能となり、通信品質の向上や通信時間の短縮による通信効率の向上が図れるようになる。
 (b)航法機能:地上施設に依存する航法から、GPSを補強する機能(MSAS)により、GPSを用いた航法が可能となり、より効率的で確実な運航ができるようになる。
 (c)監視機能:MTSATを経由して、GPS等により得た航空機の位置情報を一定時間毎に自動的に地上の管制機関に送る機能(ADS)を利用して、航空機の位置情報を管制卓に表示することにより、レーダーを用いた場合とほぼ同様に航空機の位置の把握ができるようになる。
 このような次世代航空保安システムの構築により、管制官は、洋上においても航空機の正確な位置を把握することができ、管制間隔を大幅に短縮し交通容量を飛躍的に増大させることが可能となる。また、将来的には、予定時刻通りの出発・到着、希望する飛行経路、高度等による飛行等が可能となり、経済的かつ効率的な運航が実現される。
 なお、MTSAT打ち上げまでの間も、航空機上に搭載されている精度の高い航法装置等を活用して次世代航空保安システム導入を徐々に図っており、例えば管制間隔の一部短縮等を実施してきているところであり、打ち上げ後の本格的な次世代航空保安システムへの移行に備えている。
(ウ) アジア・太平洋諸国との連携
 MTSATは赤道上空3万6千km、東経140度の静止軌道位置にあり、我が国のみならず広くアジア・太平洋地域をカバーすることから、今後も大幅な航空需要の伸びが見込まれるアジア・太平洋地域の共通のインフラとして、これらの地域各国を中心に大きな効果が期待できる。また、アジア太平洋諸国においても次世代航空保安システム構築に向けた取り組みがなされていることから、これらの国々との連携が一層必要となってくる。
(エ) 現行航空保安システムの見直し
 現行の航空保安システムの中核をなす航空路監視レーダー(ARSR、ORSR)及び方位・距離情報提供施設(VOR/DME等)等についても引き続き必要な整備を行っている。しかし、現行システムの一部は、次世代システムに置き換えることが可能であることから、その導入に伴って、今後縮退・見直しを行っていくこととしている。

(2) 航空交通の混雑解消、効率運航等の確保のための取り組み

 航空交通流管理センターでは、航空交通量が年々増大し続ける中で、航空交通の円滑な流れと安全を確保するために、日本全国の交通状況や空域の運用状況を一元的に把握し、交通量予測を行って特定の空域や空港に航空機が集中しないように管理する業務(航空交通流管理業務)を実施している。この業務は、前述の次世代航空保安システムの重要な一要素となっている。
 同センターでは、航空交通量が増えて国内の空域や空港が過度に混雑すると予測される場合、関係する航空機の出発時刻を調整し、当該空域における適正な交通流・量を維持する措置を講じてきたが、12年度からは、前日のうちに交通量の予測・検証を行う機能を導入し、出発時刻や最適な経路に関する航空機運航者の事前の選択を可能にした。
 同センターの業務は、航空交通の混雑を原因として発生する空中待機や遅延を最小化することなどを目的として運用されていることから、航空機の運航者及び利用者に与える便益は大きいと考えられ、今後更なる機能向上を図ることとしている。

第3節 空港整備等の推進

1 第7次空港整備七箇年計画の推進

 

 航空需要に対応して、計画的な空港及び航空保安施設の整備を推進するため、昭和42年度以来「空港整備五箇年計画」を策定している。
 第7次空港整備五箇年計画(事業規模3兆6,000億円 平成8年12月に閣議決定)については、我が国財政事情の厳しい状況を踏まえ、「財政構造改革の推進に関する特別措置法」の施行に伴い、9年12月12日、計画の2年延長について閣議決定がなされた。
 空港整備七箇年計画の推進に当たっては、財政構造改革の趣旨を踏まえつつ、所要の財源確保を図るとともに、事業の重点化等により、一層効率的・効果的な空港整備を推進していく必要があり、航空ネットワークの拠点となる大都市圏拠点空港整備を最優先課題として計画を推進していくこととしている。

2 新東京国際空港の整備

(1) 空港の現況

 新東京国際空港(成田空港)は、34ヶ国1地域51社(12年10月1日現在)が乗り入れており、平成11年度における年間航空機発着回数は13万3000回、年間旅客数は2,596万人、年間取扱航空貨物量は183万トンに上っているが、現在供用中の滑走路1本による運用では、既に乗り入れている航空会社からの強い増便要請や33ヶ国からの新規乗り入れ要請に対応できない状況にある。
 このため、平成4年12月に第2旅客ターミナルビルを供用開始し、11年3月には第1旅客ターミナルビルの北ウイングをリニューアルオープンするなど、諸施設の能力増強に取り組んでいるものの、空港能力増大を図るためには平行滑走路等の整備が是非とも必要となっている。

(2) 成田空港問題をめぐるこれまでの動き

 平成3年から6年にかけて行われた成田空港問題シンポジウム・円卓会議において、今後の成田空港の整備を話し合いで進めていくことが合意された。その後、運輸省としては、8年12月に「共生策、空港整備、地域整備に関する基本的考え方」の中で、共生策等を三位一体のものとして進めるとともに、平行滑走路等の完成について、12年度を目標として進める旨を発表した。さらに、10年12月には「基本的考え方」を具体化した「共生大綱」をとりまとめた。この間、国・空港公団は、話し合いによる用地取得の努力を続け、円卓会議終了時からこれまでの間に6戸の用地内地権者との間で売買契約の締結を行うことができ、空港用地(1,084ha)内に居住する地権者は2戸となり、円卓会議終了時に21.3haあった未解決の用地も5.2ha(空港用地全体の0.5%)までに減少するなど大きな進展を見せてきた。

(3) 平行滑走路の整備について

 このように、平行滑走路等の12年度完成を目標として、特に11年1月から4月にかけては、運輸省・空港公団の幹部が地権者の残る東峰地区を繰り返し直接訪問するなど、全力を傾注した努力を続けてきたが、誠に残念ながら残る地権者の理解を得るまでに至らず、12年度目標の達成はあきらめざるを得ない状況となった。
 しかしながら平行滑走路の早期完成は、地域にとってのみならず、国民的な緊急課題であり、また、国際社会に対する我が国の責務でもあること、さらに14年初夏にはサッカーワールドカップの日韓共同開催も予定されていることから、運輸省は、11年5月21日に、1.引き続き現行計画に基づく2,500mの平行滑走路の早期着工・供用を目指して、地元自治体、関係者の協力のもとに今後とも地権者との話し合いを行い、その早急な解決を図りながら、2.それが当面困難な場合には、暫定的措置として平行滑走路の完成済施設の一部と空港公団の取得済用地を活用して、14年初夏のワールドカップ開催に間に合うよう延長約2,200mの平行滑走路を建設・供用することを考慮する、との今後の平行滑走路の整備に関する新たな方針を発表した。
 その後、地元地方公共団体、住民団体等の方々に対し延べ150回以上の説明を行い、その理解が深まったことを受け、空港公団から11年9月3日に暫定平行滑走路の整備のための工事実施計画の変更認可の申請がなされ、運輸省は、公聴会の開催を経て、12月1日に工事実施計画の変更認可を行った。そして空港公団は同月3日に工事に着手し、現在、順調に進捗している。
 運輸省及び空港公団は、今後とも、14年初夏の供用を目指して、着実に暫定平行滑走路の工事を実施していくとともに、地元関係者の協力を得ながら、本来の2,500mの平行滑走路の早期完成に全力を挙げて取り組んでいくこととしている。

新東京国際空港
新東京国際空港

3 東京国際空港沖合展開事業の推進

 東京国際空港(羽田空港)では、全国47空港との間に1日約360便(12年9月ダイヤ)のネットワークが形成され、国内線で年間約5,200万人(11年度実績)が利用している。
 同空港の沖合展開事業は、将来とも首都圏における国内航空交通の中心としての機能を確保するとともに、航空機騒音問題の抜本的解消を図るため、東京都の造成した羽田沖廃棄物埋立地を活用し、事業を3期に分けて段階的に整備を行うことにより同空港を沖合に展開するものである。
 第1期(A滑走路)及び第2期(西ターミナル)は既に完了済であり、現在は、第3期(B、C滑走路及び東旅客ターミナル等)に係る整備を行っている。このうちC滑走路は、9年3月、B滑走路は12年3月に供用が開始され、これに合わせた増便を行っている。東旅客ターミナルについては、10年度から着手し15年度末の供用開始をめざし、整備を推進している。
 なお、東旅客ターミナルの供用開始により、交通動線が更に輻輳することから、東西旅客ターミナルと首都高速道路湾岸線との接続ランプを整備し、空港と高速道路を結ぶルートを短縮することにより、利用者の利便の向上を図ることとしている。
 また、沖合展開事業により生ずる跡地については、運輸省並びに東京都及び大田区が共同で調査し、利用計画を策定しているところである。その利用計画に関しては、学識経験者及び関係行政機関からなる「東京国際空港跡地利用計画委員会」を設けて、幅広い見地からの指導、助言を得ながら検討を行っている。

3−8−1図 東京国際空港整備計画図(全体計画)

4 関西国際空港の整備

 6年9月に開港した関西国際空港は、大阪湾南東部の泉州沖約5kmの海上に建設された、我が国初の本格的な24時間運用可能な国際空港である。国、地方公共団体及び民間の出資による関西国際空港株式会社が設置及び管理を行っており、約510haの空港島に3,500mの滑走路と旅客ターミナル等の施設が整備されている。
 関西国際空港への乗り入れ便数は、国際線を中心に大きく伸びており、大阪国際空港(伊丹)においては、開港前の6年8月時点で28便/日の国際線が就航していたが、関西国際空港開港時には48便/日まで増加し、12年8月現在の国際線認可便数は93便/日となっている。11年度の運営実績では、国際旅客数が約1,183万人、国際貨物取扱量が約78万トンと、共に過去最高を記録しており、大阪国際空港の5年度実績に比べ、国際旅客数で約2.2倍、国際貨物取扱量で約3倍となっている。
 このような状況の中、関西国際空港は1期施設の能力増強のための所要の整備が図られたとしても、現状の1本の滑走路による運用では、21世紀初頭には処理能力の限界に達すると予測されている。このため、8年度から平行滑走路等を整備する2期事業に着手しており、環境影響評価、漁業補償交渉妥結、航空法に基づく飛行場施設変更許可及び公有水面埋立法に基づく埋立免許等の所要の手続きを経て、11年7月の現地着工に至った。
 2期事業は、既存の空港島の沖合に新たに約540haの空港島を造成し、4,000mの平行滑走路及び関連諸施設を整備するもので、総事業費は1兆5,600億円を予定している。19年の平行滑走路供用開始を目標としており、2期事業が概成する23年には、1期施設と合わせて年間離着陸回数約23万回に対応可能な施設となる予定である。
 この2期事業の整備手法については、関西国際空港株式会社の用地造成負担を軽減するため、空港施設(上物)は1期と同様に同社が整備し、用地造成(下物)は、同社と地方公共団体の共同出資による関西国際空港用地造成株式会社が行う「上下主体分離方式」が導入されるとともに、用地造成に係る事業費について、国と地方公共団体が、出資に加え無利子貸付を行うことにより、無利子資金の割合を1期事業時の30%から55%に高める等の支援措置を講じている。
 12年度は、11年度に引き続き護岸築造工事及び埋立部地盤改良工事等を推進し、13年度からは、土砂の直接投入による本格的な埋立工事を開始する予定である。
 また、1期地区については、空港島の透水性が予想より高くなっていること、旅客ターミナルビル周辺地区及び給油タンク地区おいて局所的な沈下が発生していることから、地下水対策事業として早急に止水壁設置工事を実施することとしている。
 なお、関西国際空港の発着枠については、飛行経路上の制約から、1時間あたりの発着回数が26回に留まり、年間処理能力として12〜13万回程度が限度とされ、将来の増便が困難な状況となっていた。そのため、運輸省としては、大阪府、兵庫県及び和歌山県の地元府県との協議及び調整を行って来た結果、飛行経路の変更はやむを得ないとする回答を得て、10年12月より新たな飛行経路の運用が開始された。これにより、同空港の発着枠を11年3月に1時間あたり28回に、12年3月に30回に順次拡大してきたところであり、最終的には1期施設のみで1時間あたり31回とし、空港諸施設の整備による能力向上と相まって、年間処理能力として16万回程度まで拡大する予定である。

3−8−2図 関西国際空港2期事業の概要

5 中部国際空港の整備

 中部国際空港は、現名古屋空港がその処理能力の限界に近い状況にあることから、中部圏の航空需要の増大に対応するために必要となるものであり、17年の開港を目指し10年度から第1種空港として事業着手している。
 その計画内容は、名古屋市の南概ね35kmの常滑沖海上に、滑走路3,500m1本、面積約470haの空港を整備するもので、総事業費は7,680億円である。
 事業主体については、民間の資金や経営能力を活用し、効率的な空港の建設・運営を行うため、10年5月に地元地方公共団体と経済界によって設立された中部国際空港株式会社(中部会社)を、同年7月に運輸大臣が空港の設置管理者として指定した。
 事業資金については、事業費の4割を無利子資金(出資及び無利子貸付)とし、これを、国、地方公共団体及び民間が、4:1:1の割合で負担することとしており、事業費の6割の有利子資金の調達については、国が債務保証等の支援措置を講じることとしている。
 中部会社は、10年度において、空港建設に関する実施設計調査を行うとともに、環境アセスメント手続等を行った。11年度は、7月に環境アセスメント手続が全て終了し、8月には航空法に基づく飛行場設置許可の申請及び公有水面埋立法に基づく埋立免許の出願を行った。12年度に入り、4月23日に運輸大臣より中部会社に対し飛行場設置許可が行われ、6月12日には漁業補償交渉がすべて決着した。さらに、6月23日に公有水面埋立法に基づく環境庁長官意見が提出されるとともに建設・運輸大臣より愛知県知事に埋立認可が行われ、同日、愛知県知事より中部会社に対し埋立免許が交付された。
 これらの手続きを終え、中部会社は、6月25日から灯浮標の設置工事等の準備工事を進め、8月1日から護岸工事に着手した。12年度は、護岸工事等の進捗を図るとともに、空港施設に関する調査設計等を行うこととしている。

3−8−3図 中部国際空港の概要

6 首都圏空港調査の推進

 首都圏の空港、とりわけ、東京国際空港が航空需要の増加から21世紀初頭にはその能力の限界に達することが予測される。首都圏において将来の航空需要の増大に対応するため、空港能力の一層の拡充を図っていく必要があることから検討を行っている。
 これまでの経緯としては、8年12月13日の第7次空港整備五箇年計画閣議決定において、大都市圏における拠点空港の整備を最優先課題として推進するとされている。その中で首都圏第3空港については、「東京国際空港の将来における能力の限界に対応し、首都圏における新たな拠点空港の構想について、事業着手をめざし、関係地方公共団体と連携しつつ総合的な調査検討を進める。」とされている。
 8年度からこの閣議決定を踏まえ、海上を中心とした新たな拠点空港の立地に関し、空港計画、空域、環境、工法等について基本的な調査検討を進めている。
 12年度からは、複数候補地の抽出とその比較検討を行うため、学識経験者、関係地方公共団体等からなる調査検討会(第1回9月26日)を開催し、広く意見を聞くこととした。今後は、調査検討会における意見を参考にして各候補地について空域や環境などの具体的かつ精緻な調査を行いつつ、各候補地の総合的な評価・比較検討を行うこととしている。

7 一般空港等の整備

 一般空港等の整備については、8年12月(その後9年12月改定)に閣議決定された第7次空港整備七箇年計画に基づき、滑走路新設・延長事業等に取り組んでいるところである。
 11年度に、天草飛行場が供用開始、福島空港、女満別空港の大型化事業、紋別空港のジェット化事業が完了したことにより、12年8月1日現在で公共用飛行場総数は94空港、ジェット機が就航可能な数は60空港(ジェット化率64%)、大型ジェット機が就航可能な数は31空港(大型化率33%)となっている。
 12年度については、滑走路延長等の継続事業を中心として、これに加えて既存空港については、就航機材の多様化に対応した施設改良といった高質化等の整備を推し進めることとしており、滑走路の新設・延長事業は、新規に着手する百里飛行場、八丈島空港を含む16空港で実施するとともに、地方空港整備特別事業として、花巻、岡山空港に加え、新規に青森空港の滑走路延長事業を行うこととしている。