第1章 港湾利用量の増加とその影響

  わが国には1048の港湾があるが(漁港を除く。),このうち6大港を含む特定重要港湾は11,重要港湾は82,その他は地方港湾である。
  これら港湾の管理は,港湾管理者が行なうこととなっており,港湾管理者には,制度的には港務局(独立の公法人),一部事務組合地方公共団体自身の3種類が存在するが,現在港務局は1例,一部事務組合は3例にすぎず,大部分は地方公共団体自身が港湾管理者となっている。
  港湾管理者の主な業務としては,港湾工事の施行,港湾施設の管理運営,臨海工業用塾の造成等があげられる。
  まず港湾の取扱い貨物量の動きからみると 〔II−(III)−1表〕のように経済規模の拡大に対応し,港湾取扱貨物量は著しい増加をみた。すなわち,昭和30年に約2億5千万トンであったものが,38年には約6億4千万トンと約2.6倍となつている。対前年伸び率をみると,34年,35年および36年は,それぞれ20%,23%および18%と高率である。つづく37年は景気調整策がとられ経済成長率が鈍化し荷動き量の増勢のテンポも弱まった年なので8%と少し伸び率がおちたが,38年では12%増と盛りかえした。
  また,これら増大する貨物を輸送した船舶の入港数について 〔II−(III)−2表〕により昭和30年と37年とを比較してみると,総隻数の伸び率は約1・15倍であるが,3000トン〜6000トンの船舶は1.85倍,6000トン〜10000トンは1.95倍,10000トン以上については4.12倍となっており,入港船舶数の増加以上に船舶の大型化が著しい。

  この様な急速な貨物量の増加,入港船舶の増加および大型化に対し,これを受入れる港湾施設の方はどのような状況にあるのであろうか。
  この両者間の関係を示す指標として,まず国と港湾管理者とが公共事業をもって造成する防波堤,航路,岸壁等の基本的な施設の総資産額と港湾取扱貨物量との蘭係をみると, 〔II−(III)−3表〕のとおりで,単位貨物量当りの港湾資産は,貨物量のまだ少なかった昭和30年には戦前水準(昭和9年〜11年)の1200円(昭和38年価格,以下同じ。)を上回っていたが,貨物量の増大とともに以後低下を続け,34年で1,工08円,36年には883円にまで下っている。

  さらに具体的に船舶の大型化に伴い必要とされる港湾水深が不足している点についてみると, 〔II−(III)−4表〕に示すとおりである。横浜港の例でみると,1バースで処理しうる船舶数は年間約60〜70隻といわれているが,昭和37年横浜に入港した1万重量トン以上の船通数は5230隻であるのに対し,これら船舶を接岸しうるバース数はわずかに20に過ぎずその地の港湾でもほぼ同様の現状にある。
  以上のような実情は,港湾の混雑,船舶出入の渋滞となって現われてくる。いまだ記憶に新しい昭和36年の大量滞船が発生した際には,6大港(東京,横浜,名古屋,大阪,神戸,門司各港)で1カ月3000隻にも達する滞船を生じ,船によっては2ヵ月以上も接岸できないものも出る状況であった、その後施設の整備その他緊急対策が行なわれ,また,昭和37年には港湾取扱貨物量の伸びの停滞という事情もあって,かなりの緩和をみたのであるが,なお,滞船の解消という段階にはいたっておらず,依然 〔II−(III)−5表〕にみるように,滞船が慢性化しており,需要に対する弾力性を失なったわが国港湾にあっては,いつふたたび昭和36年と同様な状態に突入するか保証しがたいのが現状である。

  以上のように港湾の現状はわが国経済発展の隘路となっており,政府としては以下述べるように5カ年計画による港湾施設の整備をはじめ種々の対策をとりつつあるのである。