(5)工業品


  工業品の特徴は,ほかのどの品目よりも経済界の動向に最も敏感に影響されることである。このことは,単年度でみれば,景気の動向によつて輸送量の波動が大きいこととなり,長期的にみれば産業構造の高度化を反映して総輸送量に占めるウエイトが大きくなる傾向を示している。工業品のうち,おもな物資別の輸送状況は 〔I−(I)−9表〕のとおりである。

  セメントは,公共投資,建築等を主体として需要の増加が続いており輸送量も増加している。
  肥料は,輸出は別として内需では,景気の影響が最も少ない工業品である。成分の高度化と耕地面積,単位当り施肥量等との関連で伸び率は小さい。
  銑鋼は,金融引締め時の需要減退も早かつたが,回復時の立ち直りも最も早く,生産,輸送とも順調であつた。
  機械,車両類も自動車をはじめとする車両および機械工業の活況と,私有貨車の増加のため輸送も増加した。
  石油,アルコールは,エネルギーの近代化と石油化学工業の発展によつて,ほとんど景気に影響されずに一貫した増加を続けている。
  紙,パルプは,需要増で市況の回復が早く,生産も急速に増加したので,輸送も順調な伸びを示した。
  工業薬品およびコークスは,それぞれ化学工業,銑鋼業等の関連業界の好況を反映して輸送も大きく伸びた。
  繊維とその製品は,天然繊維系統は停滞しているが,合成繊維を中心とした好況のため前年よりやや増加した。
  金属屑は,最も密接な関係にある鉄鋼業の活況により,38年は前年に対して大きく増加した。しかし,ここ数年の傾向を見ると,伸長を続けている工業品の中で金属屑および繊維とその製品の輸送量は,減少している。


表紙へ戻る 目次へ戻る