4 労働問題


  国鉄における労働間題は,30才台の者が全体の46%を占めているいわゆる中ぶくれ型の是正の問題と給与水準の問題にしぼることができる。以下これらの間題について述べることにする。

(1) 要員問題

  国鉄は終戦後外地鉄道従事員や復員者を吸収して63万人に膨張したが,24年公共企業体への移行に際し人員整理を行ない,26年以降現在まで44〜45万人の線を維持してきている。この間経済成長に伴つて国鉄輸送量も増加し,業務量も増加してきているが,業務の合理化,近代化を推進し, 〔I−(I)−45図〕に示すように職員の労働生産性を向上せしめる一方,要員合理化によつて生み出された余剰労働力を配置転換方式により業務量の増加の著るしい部門に供給している( 〔I−(I)−46表〕)。しかし,このような合理化の反面長年月にわたつて新規採用がほとんど行なわれなかつたこともあつて, 〔I−(I)−47図〕に示すように,職員の年令構成の中ぶくれが表面化し,このまま推移すると10年後には40才以上の者が占める割合は55.2%,15年後には59.6%になり,職員の年令構成の極端な老令化が憂慮されている。この状態は将来の問題として,国鉄業務の特質上現業部門における適正な職種構成の確保と人事運用面に多大の障害をおよぼすばかりでなく,定期昇給制度と関連して人件費の増大の要因ともなり,経営上看過し得ない問題となつている。一方,国鉄では,年間退職者約1万2000人の補充を高等学校卒業者を主体とする新規学卒者の採用に依存している(年間約1万2000人)。新規学卒者の応募率は,36年度以降は平均3倍弱を維持しているが,一般労働市場における若年労働力不足の影響から,すでに東京,大阪,名古屋等地域的には問題が生じており,年令構成の老令化による退職者の増加と,輸送力増強等に伴う要員増加の要請を考慮すると,採用必要人員の漸増が予想されるので,新規採用所要数の確保が次第に困難になりつつある。

(2) 給与制度

  国鉄の人件費は 〔I−(I)−48表〕に示すように,年々増加の一途をたどつており,物件費との割合をみても,直接費(経営費)の6割を占める状態であり,国鉄経営を大きく圧迫する要因となつている。

  国鉄の給与制度は職階制により一部職務給的性格をとり入れているが,全般的には年功序列的,画一的なものとなつている。したがつて最近のように労働力不足が問題となつているときには初任給を引き上げて労働力の確保を図らざるを得ないのであるが,これが職員全体の賃金引上げを招来し,ひいては財政ひつ迫の原因ともなつている。しかし,国の経済流通機構の大動脈として公的使命を果している国鉄としては,輸送の安全と正確を期するためには良質の労働力の確保が絶対に必要であり,今後労働の需給面で支障を来たさないようにするためには職務給制度の採用により職務に応じた賃金体系を確立することが必要であろう。
  また国鉄職員の給与は,その労働の質からみて一般産業並びに他の公社と比べて比較的低位にあるといわれているが,今年の仲裁裁定は,特にこの点を指摘し,他企業との格差を認めている。国鉄の給与水準を他の2公社と比較してみると,38年4月1日現在の平均ベースでは,国鉄が3万1613円,電々が2万9043円,専売が2万8395円で国鉄が最も高いが,平均年令(国鉄372才,電々322才,専売34.5才),勤続年数(国鉄18.1年,電々15.7年,専売15.0年)等を加味すると他の公社に比較してかなり低位にあると考えられる。36年度について3公社を比較すると 〔I−(I)−49表〕のとおりであり,さらにこれを男女別平均賃金でみると,全労働者では,国鉄を100とした場合,電々92.4,専売94.2であるが,男子平均では,国鉄100に対し,電々106.2,専売110.8となつている。これは,男女構成において国鉄が女子2%,電々32%,専売37%となつているため,女子職員が全労働者の平均賃金を引き下げている結果である。


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