第1節 輸送需要の拡大と車両生産の増大


  わが国の鉄道車両の生産額は,アメリカ,西ドイツ,フランス,イギリスについで,世界第5位を占めているとはいえ,その総生産額は隼額にして600億円内外であつて,わが国の重工業生産額または機械工業総生産額の内に占める割合は,決して大きなものではない。
  しかしながら,世界に誇りうる生産技術と製品の優秀性は,国内において年々増大する高性能車両の需要を充足しているばかりでなく,輸出においても,38年度はやや伸び悩んではいるが,37年度にはアメリカ,西ドイツについで,世界第3位の実績をあげている。37年度の需要先別生産実績は 〔I−(I)−64表〕のとおりで,総額627億円,対前年度比20%の著しい増加を示した。これをトム型15トン貨車に換算した総合両数では6万1994両で,戦前最高の昭和15年における5万6720両を約10%強上回り,戦前,戦後を通じて最高の実績を記録した。

  このようにいちじるしい生産の拡大をみたことは 〔I−(I)−65表〕にもみられるように数量的には内需の強調によるものであるが、35年度以降の比率においては,輸出が最も大きな伸びを示している。

  近年,経済の高度成長にともなう輸送需要の量的,質的増大に対処するため,国鉄を中核とする鉄道事業においては新線の建設,既設線の近代化,高速化,車両増備などの輸送力増強のための長期計画が積極的に推進されて 〔I−(I)−64表〕および 〔I−(I)−65表〕のとおり,車両の需要が増大している。しかし,これらの輸送力増強対策によつても,従来の恒常的な設備投資不足により,現在なお輸送力の不足は深刻なものがあり,とくに大都市およびその周辺ならびに主要幹線の輸送難緩和のための鉄道車両の潜在需要はなお旺盛なものがあるといえよう。
  長期的にみた場合の需要先別生産構成は,おおむね国鉄60%,民需20%,輪出20%で,国鉄への依存度がきわめて高く,支給部品を考慮すればさらに国鉄の比重はたかまり,国鉄の需要動向は,業界の好不況のバロメーターとなつている。
  車種別生産両数は 〔I−(I)−66表〕のとおりであつて,鉄道輸送の合理化,経済化の見地から動力の近代化が積極的に進めらてていることを物語つている。すなわち蒸気機関車は一部の輸出向にみられるほか,内需は全く姿を消し,かわつて電化,内燃化の進ちよくにともない,電気機関車,気動車,電車の生産が飛躍的に増加している。また,これら車両についても,旅客部門においては,国民所得の向上にともなうレジャーブームの浸透による消費性旅行の増加に対応し,快適性の追求並びに高速化に伴う保安度維持のため装備の改善向上など,高級化した車両の需要が増加し,一方貨物部門については,産業構造の高度化による輸送需要の構造の変化に対応して,貨物の形状,特質に適合した特殊用途車,特に石油化学工業の発展にともない各種のタンク車など輸送および荷役の合理化に寄与する貨車の増加が目立つている。

  車両の需要を喚起する他の要因として,老朽車両の取替補充がある。鉄道車両の耐用年数は,蒸気機関車,電気機関車で,18年,電車13年,ディーゼル車,貨車10年から20年となつているが,現実には,これらの車両の大部分は使用途上において大改造がなされ,または大規模の補修がなされており,製作当時の原形をとどめないまでに改良補修ざれているものもあつて, 〔I−(I)−67表〕に示すとおり,一般に耐用年数をはかるに超えて使用されている。

  しかしながら老朽車両にあつては,修理費を多くついやすばかりでなく,事故の原因ともなりやすく,とくに車両が急激に近代化されつつある現状においては,老朽車の陶汰が活発となり,取替補充用車両の生産が大きなウエイトを占めてきているが,38年度においては国鉄予算の重点が,東海道新幹線工事に移つたこともあり,この面の需要が減少し,生産総額において,対37年度比94%の実績に終つた。しかしながらこれはあくまでも一時的な現象であつて,車両需要増大の基調は変つていないし,また,老朽車両の取替も,新幹線工事の終了によつて活発となるものと考えられるので,40年度以降においては再び拡大傾向が強くなるであろう。


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