2 輸出振興対策


  上述のように,鉄道車両輸出の不振の原因は,当面の問題として国際競争要因の変化により経済協力を背景に取引きざれていること,長期的には需要動向の停滞にあるので,これが振興対策もおのずからこの2点に対応して考えられるべきである。
  すなわち,当面国際競争要因の変化に対しては,相手国に購買力を付与するための対策が必要であり,このためには直接借款あるいは国際競争に対応し得る長期信用の供与などの経済協力の積極的推進と,バーター制度のごとく輸入との関連から貿易の総合的な対策を講ずることである。需要の停滞については,潜在需要を喚起するための諸対策たとえば鉄道の建設近代化などのプロジェクトの段階から関与してこれを推進し,また一部の国にみられる国産化の推ちよくについては,積極的に技術協力あるいは企業進出などによりこれを援助してノックダウン方式による輸出を考えるべきである。
  経済協力についてはもちろん国の資本力、経済力の問題でおのずから限界があるが,目前の事象にとらわれることなく,長期の大局的見地から国際政策の問題として弾力的運用が望まれるところであり,技術協力については,国内体制の整備,拡充がとくに必要とされている。現在鉄道関係のこの面の体制はきわめて不備,不統一であり,このため協力な統一された実施機関設立の動きがあり,そのすみやかな設立と活発な活動が期待されている。
  なお最近OECDの貿易委員会が,国際的延払い規制の問題をとりあげる機運にあり,このためすでに輸出信用および信用保証部会が設けられて作業を開始しているが,将来,本部会の全面的な活動により,延払いが規制されることとなれば,民間の財政負超による輸出攻勢の激化ならびに政府間の経済援助を背景とずる取引の増大を招き,情勢いかんによつては,ひとり鉄道車両のみならず,わが国プラント輸出に重大な影響が予想されるので,わが国の輸出金融制度,税制などと考えあわせ,慎重に対処する必要がある。


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