第2節 賃金改訂について


  全日本海員組合は,昭和38年5月の労働協約改訂時期に当って,賃金改訂を骨子とする労働協約の改訂要求を五船主団体に行なった。同年5月末までの改訂交渉は,折から海運整備に関する一法案が国会審議中のことでもあり,時期的に当を得ないと労使の意見が一致し,労働協約の有効期限を10月末まで5カ月間延長した。その8月以降団体交渉で,組合は10月末までに解決しないときはストライキに入ることを明らかにし,船主団体もまた,集約による再建を円滑に行なうためには,労使間の紛争を避けたいとして譲歩したため,運輸大臣の,事態の円満な解決と,労使関係の長期的安定をはかるよう相互の協力体勢を要望するという異例の勧告にしたがい,10月31日円満解決をみた。
  この協約改訂では賃金改訂が骨子となっているが,賃金制度の面で職種別最低保障本給制がより強化され,職務給への移行が明確になってきたこと,予備員の生活保障のため,年令別予備補償給制がとられたこと,乗船手当の大半が保障本給に組み入れられ,改めて定額制の航路手当が新設されたことが特徴である。賃上げ額は,利子補給57社についてみれば乗船中賃金は1人平均見額5214円となっており,平均賃金は5万72円から5万5286円と10.4%アップになった。
  大型船部門の賃金改訂のあとを追って,全日本海員組合は,39年2月国内旅客船船主,つづいて3月小型鋼船船主に対し賃金改訂を骨子とする労働協約改訂要求を行なった。いずれも一企業毎にそれぞれ異なった要求を行なったものではなく,あらかじめ組合内部でモデル協約を討議作成し,これによる画一的要求,画一闘争を強くうち出したところに特徴がみられる。
  まず,国内旅客船については,モデル基準を中心として企業を3ランクに分け,全国67社に対して,ランク別の要求を行なった。中でも瀬戸内海には旅客船業者が集中しているため,はじめて船主,組合とも実質的な統一団体交渉が行なわれたが,自主交渉においては解決にいたらず,中国および四国船員地方労働委員会の斡旋にもちこまれたが,再び自主交渉によりストライキに入ることなく解決をみた。全国的には,一部ストライキに入ったものもあったが,ほとんどストライキは行なわれず,ほぼ組合要求どおり賃金改訂が行なわれた。
  また小型鋼船については,全国310社632隻(組織人員約工万1000名)に対して統一要求を行ない,5月31日までに解決しないときは6月1日からストライキに入ることを明らかにした。全国小型船主団体協議会(略称「全小船」)加盟の各団体および各船主は,全日海担当組合支部と個別交渉を行なってきたが,組合側は個別の妥協条件をうけいれない態度を示したため,全小船は,5月中旬,加盟団体の委任をうけ,最終段階において全日海組合本部と統一交渉に入った。交渉の結果,組合の要求する賃金体系を容れ,個別の内容において組合も若干の譲歩をして,5月27日妥結をみた。組合は,この労働協約改訂要求とあわせて,内航海運の公正競争を確保するため,未組織船員(小型鋼船乗組員の約40%)を雇用する船主の所有する船舶の周船などをとりやめるようにという要求を行なった。この用船および運航委託規制申入れは,本年12月末までに船主の善処を期待しているものであるが,用船が来年もつづけられるときは実力行使を行なうことがあるかもしれないと組合は警告しており,その成り行きが注目されている。また組合は,統一労働協約の成果から,条件の許すところでは最低賃金法第11条に基づく労働協約の地域的拡張による最低賃金決定の申請を行なうことを言明しており,内航部門における労働条件は,組合運動によって新たな局面を迎えようとしている。

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