第1節 倉庫業の概要


  倉庫は,経営の態様および適用を受ける法規の別によつて数種類に分類することができる。最も代表的な倉庫としては,倉庫業法に基づき倉庫業者が倉庫業(他人から寄託を受けた貨物を保管する営業)のために使用する営業倉庫をあげることができる。営業倉庫以外にも農業協同組合等が米麦等の農産物を保管するために使用する農業倉庫,各種の協同組合が組合員の共同利用施設として設置する協同組合倉庫,製造業者,商社,問屋等が自己の貨物の保管のために使用する自家倉庫等がある。以下,本章においては営業倉庫について述べることとしたい。
  営業倉庫は,経済活動に必要不可欠のものであるが,それがどのような役割を果しているかについてふれてみたい。戦前の倉庫は,主として神戸,横浜等の主要港湾地帯および農産物生産地帯に設けられ,生産財および消費財の需給調整、価格調整の役割を果たし,また,倉庫証券の発行により金融的役割をも果たしてきた。ところが戦後における経済情勢の変化,特に大量生産大量消費を背景とする流通革新の進行により,製造業者,商社,問屋等は,在庫管理の合理化,保管および輸送経費の削減を強く迫られており,倉庫もその影響を強く受けつつちる。すなわち,倉庫の役割として物資の流れを調節するストックポイントとしての役割が従来の役割に代って重要視されつつあるといえる。いわば倉庫の機能が従来の貯蔵を主とする静態的なものから荷さばきを主とする動態的なものに変化しつつあるといえる。一般に倉庫業は転換期にあるといわれているが,これは以上のような事情を指しているものである。
  このような営業倉庫は,保管する貨物の種類および保管施設の形態により普通倉庫,冷蔵倉庫および水面倉庫の三種類に分けられる。普通倉庫は,生産財,消費財一般を保管する最も典型的な倉庫である。冷蔵倉庫は,生鮮食料品,凍結品等を摂氏10度以下の温度で保管する倉庫であり,冷凍機,防熱装置を設置する等その構造が普通倉庫と著しく異なっている。水面倉庫は,輸入原木等木材を保管する倉庫であるが,水面を使用してこれに木材を浮かべて保管するところに大きな特色がある。
  このような営業倉庫を経営する倉庫業者は, 〔II−(III)−26表〕に示すように毎年わずかづつ増加しており,昭和38年度末には普通倉庫業者1167,冷蔵倉庫業者1082,水面倉庫業者10,合計2259,に達している。このうち倉庫証券を発行する発券倉庫業者は,668である。これらの倉庫業者は,少数の大手倉庫専業者および倉庫業を兼営する大手の水産業者,精糖業者,製粉業者等を除き, 〔II−(III)−27表〕に示すとおり大部分が中小企業に属し,資本金500O万円未満の倉庫業者は全体の85%を占めている。また,倉庫業者特に普通倉庫業者の相当部分は港湾運送事業,自動車運送事業等の運送事業を兼営しており,最近の新規普通倉庫業者の半数近くが運送事業者であることからみても倉庫業と運送事業,保管と輸送が密接な関係にあることがわかる。また,近年倉庫業者が運送事業特に自動車運送事業に進出する傾向にあるが,これらの事情は前述の流通革新の進行過程における倉庫および倉庫業の将来の在り方を示すものということができよう。


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