第1節 造船技術の現状
ここ数年来,船舶はその経済性をいっそう向上させるため,大型化,高速化,専用化の傾向が顕著に現われてきており,特に最近は船舶の自動化,遠隔操縦化および船体構造の合理化が活発化し,さらに,水中翼船,水上用エアクッション艇などの新形式船舶の進出や押航はしけによる新輸送方式の開発など造船技術の進歩は目覚まいものがある。
まず,船舶の大型化傾向について,油送船でみると,約10年前は2万重量トン程度が普通船型であったものが,今日では約8万〜9万重量トン程度のものが一般的となり,約13万重量トンの超大型船も就航している現状である。
高速化については約10年前における定期貨物船の航海速力15〜16ノット程度であったが,航海速力20ノット以上の定期貨物船も出現している状況である。このための主機の高出力化も著しく,特に大型ディーゼル機関については35年頃1シリンダー当り2000馬力であったものが,1シリンダー当り2300馬力にも達している。なお,商船用蒸気タービンでは世界最大の2万800O馬力が制作されている。
専用化については,石油や鉄鉱石のみならず,ボーキサイト,LPG,石炭,セメントなどの専用船がつぎつぎに出現し,今後も輸送コスト低減を図るためますます増加してゆくものと思われる。
つぎに,船体構造について,根本的に改善を加えようとする機運が世界的に盛り上ってきている。たとえぱより科学的,合理的な設計および工作方法を確立し,安全かつ経済的な設計を行ない,船体構造の合理化などを図ろうとする動きである。
自動化,遠隔操縦化などについては,後述のとおり開発研究が相当り成果をあげ,実用化もかなり進んでいる。
また,近年急速にクローズアップされているものに水中翼船,水上用エアクッション艇があるが,スピード化を要求される内航輸送分野に今後多数進出してくることが予想される。 さらに,新しいタイプの内航輸送方式として,押航はしけ,コンテナー船などが注目を集めてきており,これらの新しい運送方式について早急に技術的検討を加え,合理的な運送方式の開発に努める必要がある。
最後に,外国技術の導入については,38年3月末における認可件数は110件にも上っている。
導入技術としては,補機,航海計器類およびディーゼルエンジンに関するものが多いが,これらは国産技術の向上,建造コストの低減,ひいては船舶の経済性向上に寄与するところきわめて大きかった。
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