4 国際観光地および国際観光ルートに関する問題点


  わが国を訪れた外客の観光地別滞在状況を全国の主要ホテル,旅館において調査した昭和37年の外客の宿泊延人員からみると 〔IV-23図〕にみられるように,東京が54.1%と過半数を占め,続いて京都,大阪,横浜の順になつている。次に,同じく昭和37年度に運輸省で訪日観光団証明書を受給した観光団について,その訪れた観光地をみると,東京,京都をほとんどの観光団が訪れており,また,東海道沿線の鎌倉,箱根,熱海,沼津,名古屋等や東海道から枝状に発生した日光,奈良,伊勢,志摩へ行くものも少なくない。また,外客の流れを旅行あつ旋業者の売る旅行からみていくと,(東京-日光-)東京-鎌倉-箱根-京都-奈良-大阪-東京(-日光-東京)というルートで旅行するものが最も多い。これらのことは,多くの外客が東京では滞在期間が長く,観光客の大きな流れが東京と京都を中心に動いていることを示している。
  このように,わが国においては,外客向によく整備され,現に外客が来訪している観光地(いわゆる国際観光地)やその間を連絡する外客に適する経路(いわゆる国際観光ルート)はきわめて限定されていて,外客の大部分が利用するビーツン・トラック(beaten track)なるおきまりのルートになつている。
  しかしながら,外客は一般に同じルートを通ることを好まないものであり,また,外客の滞在日数が漸減化の傾向にあることを考えると,全国的な国際観光ルート網を整備することが必要である。そしてまたこのようになれば,単に同じルートを往復するために生じてくる苦情がなくなるばかりでなく,外客が好む旅行を選択する範囲の拡大とともに,わが国の観光上の魅力もより高くなるであろうし,一度わが国を訪れた外客に対しても行くたびに異なつたところを訪れることができるという意味で再来の意欲を起させることもできるであろう。
  このような観点から先に述べた観光基本法は,国際観光地および国際観光

 ルートの総合的形成を図るため,観光基盤施設および旅行関係施設の総合的整備等について,国が必要な施策を講ずべきこととしている。

  これに基づき,昭和39年9月21日に観光対策連絡会議において国際観光地および国際観光ルートについて 〔IV-24表〕のように決定をみ,政府は国際観光候補地,国際観光候補ルートおよびその整備方針案につき,観光政策審議会の意見をきくことになつた。


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