1 観光開発


  観光開発は,一方において観光旅行者の集中を緩和し,他方において後進地域の開発を図るうえから,近年,その必要性が認められてきた。
  観光旅行者の集中の緩和のため観光開発については,先に述べた観光基本法は,観光旅行者が利用することが少ない観光地の利用の促進および観光地として開発するに適する地域の観光地としての開発を図るため,国が観光基盤施設および旅行関係施設の整備等に必要な施策を講ずべきこととしている。観光旅行者が特定の観光地に過度に集中する傾向は,最近著しいものがあり,ために,特定の観光地における各種の施設や特定の観光地に至る交通機関が混雑し,旅行の快適さが阻害されている。このため,観光旅行者の親ぼく,休養,見物,スポーツ等の旅行目的をみたすべく,観光地の機能に応じた適正な配置を考慮しつつ,観光旅行者の集中緩和のために以下に述べるような観光開発を行なうことが望まれている。
  後進地域の観光開発については,先に述べた観光基本法は,低開発地域内の観光地として開発するに適する地域について,国が観光基盤施設および旅行関係の整備等に必要な施策を講ずべきこととしている。低開発地域の観光開発の意義としては,国土総合開発法に基づき昭和37年10月閣議決定された全国総合開発計画において指摘されているとおり,観光旅行者の流入に伴う消費支出による地域住民の所得向上,地域住民の観光関連産業への就業の機会の増加近傍都市との交流の容易化による他産業への就業の機会の増加,地元民芸品,特産品等の地元産業や伝統芸術の振興,辺地意識の改善等の誘発効果による地域格差の縮小がある。また,この推進案としては,同計画に述べられているとおり,観光資源の保護,各種の観光基盤および観光施設の整備ならびに公園等の適性配置を図るため行政上,財政上あるいは特に国際観光の拡大推進に関しての政府金融機関による長期融資等の措置が必要である。
  これらの観点から,運輸省においては,昭和37年度から,地方開発のための宿泊施設の整備について,日本開発銀行および北海道東北開発公庫からの融資のあつ旋を行なうこととした。目本開発銀行の地方開発銀行のための融資は,北陸地方,中国地方,四国地方(和歌山県を含む)および九州地方において旅館を建設しようとする場合に行なわれるものであり,北海道東北開発公庫の融資は,北海道地方,東北地方,(新潟県を含む)を対象区域とするものである融資実績をみると,日本開発銀行地方開発枠は,昭和37年度で3億8500万円,昭和38年度で13億5000万円,北海道東北開発公庫は,昭和37年度で1億6600万円,昭和38年度で11億1500万円となつている。
  一方,都道府県等の地方公共団体においても,観光開発の重要性に対する認識は深いものがあり,観光立県の宣言がなされる例もあるように,相当な意欲をもつて開発に乗り出している,直接地方公共団体自身の手により,あるいは,地方公共団体が資金の一部又は大部分を拠出して設立した観光開発会社や地方観光協会を通じ,道路,空港,港湾,駐車場,ユースホステル,キャンプ場,レストハウス,案内所観光会館,ロープウェイ等の整備や観光旅行者誘致のための各種の宣伝活動を積極的に行なつている。
  なお,観光開発を効果あらしめるには,観光立地の条件,観光投資の効果等について,あらかじめ調査することが必要であるが,社団法人日本観光協会は,各地方公共団体や地方観光協会の依頼に応じ観光地診断を行なつている。


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