第2部 近代化の過程にある物的流通

  わが国の経済の高度成長の過程において,最近,消費者物価の急上昇というひずみ現象が生鮮食料やサービス部門などにおいて顕著になり,これに対処する消費者物価安定対策が急務となつているが,その解決策の一つとして物的流通活動の近代化が重要視されるようになつてきた。
  一方,開放経済下にあつて,わが国企業の国際競走力を強化するためにコスト低減が強く要求されているが,そのためには,これまで取り残されていた流通部門にメスを入れることが不可欠となつてきている。これまでは,国としても個々の企業としても生産部門への投資に重点がおかれていたが,前述の要請にこたえるために,立ち遅れていた流通部門近代化のための投資の必要性が叫ばれるようになつてきた。
  一般に「流通」がとりあげられるとき,これはおおむね「商業」の活動に限定されがちであつたが,流通問題が解明されるにつれて,いわゆる「物的流通」が流通部門近代化の鍵を握つていることが再認識されるにいたつた。
  この物的流通を担当している運輸関係各機関においては,輸送,保管,荷役,包装等のそれぞれの流通活動の分野で,施設の近代化,輸送方式および経営方式の合理化等により生産性の向上につとめている。このような物的流通の現状を把握し,さらに将来の物的流通活動の方向を策定することは重大な課題である。