南氷洋捕鯨,母船式北洋漁業,母船式遠洋かつお・まぐろ,母船式底引,海外トロールなどの遠洋漁業は,比較的大手企業に属し,船舶も相当大型化されており,かつ,労働組合の組織もすすんでおり,その労働条件については,労働協約によりかなり改善されている。しかし,その内容は,それぞれの業種によつて必ずしも同一ではなく,生産構造,企業規模,労働組合の力などにより異つている。たとえば,賃金構成を見ても 〔II−(II)−10表〕のとおりで,総賃金中にしめる本給,家族手当,乗船手当,航海日当の比率には,業種によつて大きな差異がみられる。
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このように漁船の船員の賃金体系において大きなウエイトを占めている歩合給制度は,最近における漁業の変ぼうに伴ない,漁業労働における最も大きな問題点となつている。この制度のもつ弊害を防止するため,全歩合制度を一部固定給に切り換え,また全歩合制を残す場合にあつては,歩合の計算の基礎を水揚高におき,いわゆる大仲制度(水揚高から市場手数料及び大仲経費を控除し,残余を船主,船員が一定の比率で分配する制度で,大仲経費の中には,運航費用のほかに,営業経費の一部,漁撈費用(えさ代,氷代,網代など)及び食料等がふくまれる。)の廃止をすることを,昭和39年度においても指導してきたが,船主側からの反発も強く,また船員側にも必ずしも十分には受け入れられていない。しかし 〔II−(II)−11表〕にみるように,行政指導の効果はかなり顕著なものとなりつつある。
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