2 東海道新幹線


(1) 概況

  東海道本線の輸送の行詰りを抜本的に打開するために建設された東海道新幹線は,昭和39年10月1日開業し,1日30往復の超特急,特急が運転されているが,その運輸概況は 〔I−(I)−11表〕に示すとおりである。

  新幹線の輸送力はこれを静岡・浜松間の下りに例をとつてみると,開業前(39年9月)における東海道線の輸送力は1日当り3万8,109人(準急以上の優等列車53本)であつたが,開通後(39年10月)は1日当りの輸送力は5万4,280人(新幹線28本2万7,636人,在来線・準急以上の優等列車35本2万6,644人)となり,その結果1万6,171人(42%)の輸送力が増強された。
  また,在来線においては,準急以上の優等列車18本を削減したため,多少輸送力に余裕が生じたので,貨物列車5本,不定期団体専用列車1本を設定するとともに,区間旅客列車の増発も行ない通勤・通学の便に供した。なお,40年11月からはさらに東京・新大阪間を超特急約3時間,特急4時間の運転を行ない,また運転回数も1日55往復と大幅に輸送力増強がはかられる予定である。他方輸送量についてみると,1日片道平均輸送人員(静岡〜浜松間下り)は2万1,748人で在来線2万4,895人(新幹線と同区間)とあわせると4万6,643人で開通前の同区間の輸送人員(準急以上の優等列車)3万8,203人に比較すると22%増となつている。

(2) 新幹線利用客の客層

  国鉄で行なつた「新幹線開通前後における東海道線旅客の動態調査」によると
  新幹線旅客の職業別構成は,会社員,会社及び団体役員,公務員などのビジネスマンが全体の81%を占め,従来の東海道線特急旅客の65%を大きく上回つている。
  旅行目的別では用務客が68%と圧倒的に多い(在来線の新幹線開通前後の用務客,64%,63%)。これは新幹線の高速性が取引の迅速化,時間の有効活用などの利点を生み,用務客の需要に一層マッチしたためであろう。したがつて,新幹線旅客の旅行日程も2日が全体の28%,次いで日帰りが24%を占め,従来の東海道線特急2等客の旅行日程(4〜6日の36%が最高)に比較すると大幅に短縮された。

(3) 新幹線の他の運輸機関への影響

  航空についてみると新幹線開通後の39年度下半期の東京〜大阪間の航空機の輸送人員(日航,全日空)は 〔I−(I)−12表〕に示すとおり1日平均3,639人で前年同期の4,245人と比較すると14%減となつている。新幹線がなかつたと仮定して昨年度と同様の伸び率(35%)でみると,1日平均5,700人と推定され,これにより航空機から国鉄への旅客の転移は諸般の事情を考えあわせても相当数あつたものと推定される。なお東京〜名古屋間の航空機(全日空)についても同様なことがいえる。
  次に新幹線の沿線を走る近畿日本鉄道の名古屋〜上本町間の路線についても 〔I−(I)−13表〕で示すとおり新幹線開業後の39年10月から40年2月までの発着人員(1月平均)は2,461人で前年同期の3,119人に比較すると21%減となつている。これも航空機と同様,新幹線の影響がかなり大きいものと思われる。逆に名古屋,山田線については,新幹線利用客の伊勢,志摩方面の観光旅行が増加したためか発着人員の増加が見受けられる。


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