4 中小私鉄の動向
わが国の民営鉄道は,国鉄の補助線ないし培養線として幾多の社会的義務と制約を受けながらその使命を果して今日にいたつたのであるが,この中から大手私鉄14社,公営,営団を除いたものを中小私鉄と総称している。この中小私鉄の中には当初から公共的に公衆の用に供するための一般私鉄と特定な生産会社が自己の原材料あるいは製品の輸送のために建設したものとがある。即ち 〔I−(I)−37表〕のごとく中小私鉄132社のうち12社が生産業を主体としたものであり,残り120社の一般私鉄の中にも貨物輸送専業のものが4社ある。これら中小私鉄を始めとする地方鉄道は,戦後自動車交通が目覚ましく発展し,その輸送力が急激に伸びてきたため,その自衛手段として自動車の直営及び事業合同を行なつて鉄道の存続に努力してきている。しかし,今日経営の悪化により年々営業線の廃止または営業廃止が行われているとろもあり,今後の中小私鉄のあり方に重大な問題となつてくる。
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昭和38年度の営業成績を概観すると,まず収支面については 〔I−(I)−38表〕のごとく鉄軌道部門の収支(営業外収益および営業外費用は,それぞれ鉄軌道業に配賦)は依然赤字基調で,その額は年々増加し,36年赤字942百万円から38年赤字2,576百万円と増加傾向をたどつている。これは 〔I−(I)−39図〕の鉄軌道収支率(鉄軌道業営業費/鉄軌道業営業収益×100)にもあらわれて,収支率は36年の95から38年利の97と悪化し,また固定資産利益率(営業収益/鉄軌道業固定資産)×100)も年々低下しており,中小私鉄の経営の悪化を物語つている。このことは,同表の大手私鉄と比較対象すればなお一層歴然となる。
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さらに財産状況から観察すると 〔I−(I)−40図〕にみられるように,中小私鉄の流動比率(流動資産/流動負債×100)は徐々に上昇して,資産構成は,改善されつつあるが,なお低位にあり,一方固定比率(固定資産/資本×100)は,38年249と前年に比し1%の上昇ではあるが,36年と比較すると21%の上昇で依然として高く,他人資本への依存度がより高くなつていることを示している。また中小私鉄の鉄軌道業固定資産は, 〔I−(I)−41表〕のとおり大手私鉄の26%に過ぎず,営業キロ1キロ当り12,387千円で大手私鉄の30%にも達していない。このことは中小私鉄の設備がいかに貧弱であるかを示すものであり,これらの設備の改善増強のための設備投資は,経営状態の悪化のため増資等の自己資本にこれを求めることができず,他人資本に依存せざるを得ない状態であるが,これとても 〔I−(I)−42表〕にもみられるとおり中小私鉄の約4割が無配当で年々その数を増して行く状態では多くを期待することは不可能な現状となつている。
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