4 今後の方向と問題点
自動車損害賠償責任保険の加入率は,強制加入保険であるにもかかわらず,従来70%台の極めて低いものであつた。しかし昭和37年に自動車の検査,登録等の際に,自動車検査証等の有効期間をカバーするだけの保険期間のある保険証明書を提示させることとして以来, 〔I−(II)−51表〕のとおり加入率の飛躍的向上をみている。ただ車検制度のない軽自動車については,依然加入率が低いので,向上のための方策を講ずることによつて,無保険車の絶滅を期さねばならない。
前述のように,昭和39年2月1日から責任保険の保険金額及び政府の行なう保障事業の損害填補の限度額は,いずれも大幅に引きあげられた。しかし,同様の保険制度をとつている欧米諸国は,これよりはるかに高く1,000万円前後或はそれ以上であり,またわが国でも人命尊重の思想が高まるとともに,裁判所の判決でも相当高額の損害賠償を認めるようになつていることを考えると,現在の保険金額は決して十分とは言えない。もちろん,保険金を引きあげるためには,保険料の引きあげを要するので,強制保険という性格上,自動車保有者の保険料負担力という問題はあるが、今後とも保険金引きあげの方向で努力していく必要がある。
![]()
現在の保険料は車種毎に,また保険期間毎に定められており,各自動車の事故実績等は考慮していない。しかし,報償制度の採用(例えば過去一定期間に事故のなかつた自動車について保険料を軽減すること)は,事故発生の防止にも役立つと思われるので,実施上困難な問題は多いが,今後の研究課題とすべきである。
現行の自動車損害賠償保障法は,原動機付自転車を対象としていないが,その車両数は昭和40年4月1日現在672万台と,ほぼ自動車数に等しく,また性能の向上に伴つて事故も多発しており,昭和38年中に原動機付自転車の関与した人身事故の被害者は,13万5,400人に達した。しかも原動機付自転車の保有者は,自動車保有者に比べ,一般に賠償能力が低いため,被害者が十分な救済を受けられないことが多いので,早急にこれを責任保険の対象とすることが望まれる。この点につき,自動車損害賠償責任保険審議会に諮問の結果,昭和40年1月20日,可及的速やかに責任保険の対象に加えるよう答申を得ており,目下実施体制を整備中である。
|