4 再建整備における今後の問題点
海運企業の業績が,好調な回復をみせるとともに,海運企業の再建整備も,また着実な前進を遂げつつあることは,既述のとおりである。
しかし,現在海運企業は,上述の経費上昇に加えてオーナーの再建整備等多くの問題を抱えており,これらに対処する方策いかんが,今後の海運企業の自立体制の確立に大なる影響を与えることとなろう。
なかんずく,当面注目を要するのは,オーナーの再建整備の問題である。整備計画実施後の海運企業の経営状況を概観すれば,中核会社の好調な業績の推移に比べ,専売会社いわゆるオーナーの業績内容は,必ずしも良好とはいえない。
一般にオーナーの収入は,用船料に依存するものであつて,集約に伴い用船料の長期固定化を招いたが,最近の経費の上昇傾向を考え合わせれば,今後のオーナーの再建整備計画の円滑な達成は,困難となることが懸念され,ひいては,これらオーナーと密接な関係をもつ中核会社の再建整備の実施上にも,大きな問題となろう。また,オーナーの企業経営が現状のまま推移すれば,わが国商船隊の約6分の1を占めるオーナー保有船腹の老朽化による更新,さらには,新船建造について,オーナーの役割を果すことも困難となる。かかる情勢からオーナーの再建整備について,再検討を行ない,その確実な達成を図り,あわせて,企業体力を培養するため,中核会社とオーナーを一体としてとられるべきオーナーの再建整備策を樹立する必要があるとの認識のもとに,本年2月海運企業整備計画審議会に、オーナー対策についての諮問が行なわれた。これに基づき,各集約グループごとに,中核体を中心として,オーナーの合併を前提とする高度の業務提携を始め,経営の一層の合理化等,抜本的再建整備策が検討されたのである。審議会は,これらの再建策を現時点におけるものとしては,おおむね妥当なものと認めるとともに,これら対策のすみやかな実施,自主的な経営の合理化努力の集中による企業の体質改善,および,中核体と関係者が,財政資金による新船建造への機会の確保に努めるべきであるとの3点を要望した。今後オーナーは,審議会の要望にそつて,中核体の指導のもとに,再建策をすみやかに実施し,企業体力の培養を図り,減価償却不足,設備債務延滞の解消に努め,自立体制を早期に確立し,オーナーのメリットを十号に生かしうるよう努めるべきであろう。
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