6 輸送方式の変化
旅客航路事業に使用される船舶は,近年,その形態が多様化し,従来の旅客船の概念を打ち破つた特殊船や新型船が出現している。その第1は自動車航送船であり,第2は水中翼船,エアクッション艇などの高速船である。これらの新型船は,船価も高く,就航当初は収益をあげることが困難であるため,弱小事業者には大きな負担となるが,需要に応じて自己の航路にこれらの新型船を投入しなければその航路そのものの存立もおびやかされることになる場合もある。
自動車航送船(カー,フェリー)は,昭和30年以来毎年数航路ずつ増加してきたが,昭和38年には13航路,昭和39年には14航路と急速な増加をみせ,その分布も, 〔II−(I)−28表〕にみるように瀬戸内海を中心に,北海道-本州間や四国-九州間を結ぶものなど,全国に及んでいる。とくに,近畿地方と四国とを結ぶ航路は,昭和39年から本年にかけて次々と増設され,物資の交流や観光旅行のルートを一変させつつある。
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自動車航送船の特色は,貨物輸送の場合には港湾での荷役を省略して時間と費用を節約するとともに荷傷みを防止し,旅客輸送の場合には自家用車や観光バスの行動半径を拡大する。そこで,既存の旅客航路事業者においても,需要に応じてその航路を自動車航送船化しなければ,賃客を他の航路に奪われることになる。従来,自動車航送事業を開設していたのは公共団体や新規設立の会社が多かつたが,昭和39年頃からは,既存の旅客航路事業者の進出が目立つてきた。また,特定船舶整備公団との共有により老朽船の代替建造を行なう場合にも,それを自動車航送船とするものが多く,昭和39年度の公団旅客船35隻のうち11隻は自動車航送船となつている。
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従来の船舶の概念を破つた高速船として期待された水中翼船は,耐波性や機関の確実性において未だ満足すべきものではなく,昭和39年以降は新規航路の開設はほとんどみられなくなつた。水中翼船の分布は, 〔II−(I)−30表〕に掲げるとおりである。そして水中翼船に代つて水上用エアクッション艇(商品名ホバークラフト)が注目されている。これは,水中翼船よりさらに高速で,水深に影響されることがなく,港湾設備もほとんど要しない等の利点が唱えられている。現在,試作艇が造船所において試験されており,今秋から旅客航路に就航する予定であるので,その成果が注目されている。
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