3 労働争議
昭和39年度中における労働争議は,海運業において全国的規模の争議は行なわれなかつたが,旅客船部門で,昨年春の賃金改訂要求に伴なう争議が多発した。又漁業では海外トロールの労働条件をめぐる争いがあり,船員中央労働委員会の調停が行なわれた。
39年度における争議にみられた若干の特徴をのべよう。
小型鋼船の組織化は海員組合の最近の重点目標であるが,昨年全内協との協
約改訂妥結を契機として,全内協関係船主には未組織船主の用船規制を申し入れつつ,未組織小型鋼船の組織化を強力にすすめたが,組織過程において多少の摩擦を生じた。概して小型鋼船船主には,船舶に対する執着が強く,船員に対しても前近代的感覚による恩恵的待遇を与えていることを以つて満足しているものが多いので組織化に際して種々の摩擦が生ずることはやむを得ないが,これらの部門における労使関係については十分に考慮が払われねばならない問題といえよう。
漁業においては,三崎船員組合の争議と,かつを・まぐろ船における洋上ストの多発が指摘できよう。
三崎船員組合(組合員約8,000名)は,昨年秋以来外地就航船の労働条件をめぐつて三崎船主協会と交渉を行なつていたが,一たん11月に仮調印のはこびとなつた。ところが船主側は,仮調印内容による賃金計算を行なつたところ,予想以上に出費増となることが判明したため再交渉を申し入れた。組合はこれに応じたが,本年に入つても自主交渉では妥結せず,遂に関東船員地方労働委員会の仲裁をもとめた。しかるに船主側は仲裁々定に疑義ありとして,組合側の要求を拒んだため,組合は遂に三崎出港予定の1隻を停船させるにいたつた。
結局,関東船員地方労働委員会のあつせんにより6月解決をみるにいたつたが,漁船においては船主側の急速な脱皮と,交渉責任の自覚が必要であろう。
かつお・まぐろ船はかなり組織化されているが,まだ未組織分野もあり,組織船員の意識も低いものがある。洋上ストは7件発生したが,このうち海員組合に属するものが1件,未組織のものが6件である。洋上ストは,出港後に労働条件の改訂を要求して行なわれたもので,操業拒否の形をとつている。とくに未組織船では,船内での不平分子がリーダーとなり,偶発的に操業拒否を行ない,かつ暴行強迫を伴つているところに問題がある。漁船における長期間,長時間労働及び歩合給による賃金制など改善の余地は多いが,労使関係の改善,相互信頼の培養をすすめてゆく必要があろう。
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