3 資本造船業の経営の現状


  わが国造船業は 〔II−(IV)−8表〕のとおり鋼船造船業441社(大手鋼船造船業16社,その他中小型鋼船造船業約425社)と木船造船業約1,050社よりなり,その従業員数は鋼船造船業約14万人,木船造船業約1.7万人,39年度の生産高は鋼船造船業約518,000百万円,木船造船業約17,000百万円である。

  わが国造船業はわが国海運に対して常に最新の技術により建造された船舶を提供して,わが国商船隊の再建と拡充に貢献してきたばかりでなく, 〔II−(IV)−9表〕のとおり近年船舶は鉄鋼,綿織物とともに輸出商品の大宗であり,造船業は輸出産業の雄としてわが国の外貨獲得に大きな役割を果している。

  つぎに造船業の経営の現状を規模別に概観して見よう。

(1) 大手鋼船造船業

  大手鋼船造船業の39年度の建造受注量(建造許可ベース)は,211隻約485万総トン,建造竣工量(一部推定)は209隻約358万総トンであり,わが国の全鋼船建造竣工量の90%を占めている。
  大手鋼船造船業は,主として2万総トン以上の大型船を建造する能力を有する17造船所と,5千総トンから2万総トンまでの中型船を建造する10造船所からなつている。
  前者は船型の大型化に対応して設備の大型化を積極的に進めた造船所で,その設備の近代化も著しく進められている。特に設備の大型化については,数年前より超大型船の建造修繕態勢の整備の必要から15万重量トン以上の超大型ドックが建設に着手されており,その一部はすでに操業を開始した。後者は,前記造船所に比べて設備の合理化がややおくれ,今後の改善が必要である。
  この大手鋼船造船業の39年度における設備投資額は約400億円に達し,対前年度比160%と大幅な増加を示したが,これは前述の超大型船建造修繕設備建設のための投資が本格化したことによるものである。
  大手造船業16社のうち10社の経営状態を見ると,まず総売上高は39年上期には3,130億円とこれまでの最高を記録した。これを部門別に見ると,新造船部門の売上高は39年上期は808億で前期の1,100億円を下回つたが,これは前期には輸出所得控除の廃止に伴い工事進行基準を採用したために増大したためである。修繕船部門では194億円を計上してこれまでの最高を示したが,これは船腹量の増加と改造工事の活況によるものである。その他部門においては売上高は順調に増加し,39年上期には2,127億円を示し,前期より22%上廻りこれまでの最高となつた。これは造船業の熱心な陸上部門への進出意欲の実つたものと言えよう。
  次に資本構成を見ると,他人資本特に固定負債の増加が著しく,39年上期には25.4%を示し,これに反して流動負債の割合は各期毎に減少して55.3%に,自己資本比率は19.3%と減少したのが目立つている。

(2) 中小型鋼船造船業

  中小型鋼船造船業に属する425企業のうち,500総トン以上の船舶を造修することが出来る船台又はドックを有する企業は約70で,その従業員は19,000人である。39年度の鋼船建造竣工量は約1,350隻約385,000総トンで全鋼船建造竣工量の10%を占める。
  この中小型鋼船造船業は,内航船及び漁船の製造及び修繕を主に行つているが,39年度の生産状況は,内航海運業法に基づく船腹規制の実施を見込んで,過渡的に建造需要が異常な増大を示したことと,輸出船の建造が伸びたことによつて建造量が38年度実績約30万総トンを大幅に上廻つたものと考えられる。
  しかし,これらの企業の経営の状態は,38年度に引続いて資金ぐりが悪化の傾向にあり,その要因は船価支払代金の延払いがいよいよ長期化していることによるものである。

(3) 木船造船業

  木船造船業は,近年における小型船の鋼船化傾向に伴う木船建造需要の漸減に加えて,39年度後半からの内航海運業法に基づく船腹規制,沿岸漁業の不振により,建造需要は著しく減少している。建造量は38年度約5万総トンであつたものが39年度は約4万総トンに落ちた。従つて,修理業務によつて辛うじて操業を維持する企業が増加しつつあり,需給の均衡をはかるために他産業への転換の必要性も生じている。


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