第3節 産業航空


  航空機の活動分野は,旅客又は貨物の運送を行なう定期・不定期航空運送事業以外にも,薬剤散布,写真撮影等きわめて広汎にわたつており,これを一般に産業航空とよんでいる。このように航空機の特性を生かして,これを運送以外の各種の目的に使用する事業を,航空法の上では航空機使用事業と呼んでいるが,現在の被免許会社は33社となつている。
  産業航空の分野で活躍している航空機の数は280機(40年6月現在)でありこのうち飛行機は128機,ヘリコプターは152機(うち小型機132機)となつている。事業の発展に伴い航空機の数も年々かなりのテンポで増加しているとともに機材の新鋭機種への代替もかなり行なわれつつある。一口に産業航空といつてもその作業内容には,森林,牧野,田畑における病虫害の予防駆除,施肥のための肥料並びに薬剤の散布,鉄塔,ダム,港湾,市街地,道路等の建設に必要な航空写真測量,ならびに映画,宣伝,観光等のための斜写真,資材の運搬,電力会社における送電線のパトロール,テレビ,報道,ニュース映画等の報道取材活動等,その範囲は極めて広範囲にわたつている。昨39年の有償飛行時間の実績は,80,124時間で対前年比13%増を示している 〔III−29表〕これを飛行機とヘリコプターに区分してみるとその割合は,飛行機が36,641時間,ヘリコプターが43,483時間と従来の実績を破り,ヘリコプターが飛行機より優位を示しだした。39年の作業別の内訳をみると,38年と同様に薬剤散布が全稼動時間の27.4%を占め第一位を確保しており,ついで写真撮影が16.4%,広告宣伝が13.6%,操縦訓練11.5%等の順序となつている。

  稼動時間からみて,需要の最も多い薬剤散布は,季節的なもので毎年4月下旬から9月上旬までの間に,ほとんど日本全土に,ヘリコプターが動員され,この時期には供給が需要に追いつかない状態を呈する。これに反し,写真撮影には,そのほとんどに飛行機が利用され,そのうちでも垂直写真は安定のよい双発機を使用しており,小型機は斜写真撮影に利用されている。垂直写真は地図作成のための測量,林相調査,地籍調査,ダム,港湾,鉄道,工場などの建設計画及び都市計画などのために空中から垂直に撮影するもので,今後の国土開発,治山,治水,建設など社会資本の充実に関連する産業活動とあいまつて益々その需要が増加するものと予想される。斜写真は,映画,宣伝,観光などの自的で小型飛行機または,小型ヘリコプターを利用して撮影を行なうものである。広告宣伝飛行はビラ散布,ネット曳行,空中放送などの方法による商品,催物,観光地などの宣伝に利用されているが,ビラ散布については,しばしば交通事故を誘発することとなるので,最近においては,その散布地域の制限を強化する措置が採られ,広告宣伝の分野からビラ散分はじよじよに姿を消して行く傾向にある。その他,特に目立つものとして,操縦訓練が産業航空界で注目をあびつつある。これは近時とくに,飛行機の操縦を修得しようとする傾向が盛んになつたためであり,これにこたえて操縦訓練を専門に行なう飛行クラブが設立され,そのクラブ員を対象に操縦訓練が実施されている。これに従事する航空機は,そのほとんどが小型機であり,これによつて航空機の稼動時間が増加し,経営の健全化に貢献している。将来この部門は産業航空のうちでかなり有望なものになるものと予想される。以上のごとく,産業航空における航空機の利用は年々盛んになるものと期待されるが,航空機の利用を季節別にみると,5〜8月の4カ月間と,そのほかの8カ月間とを比較すると約半々という実績であり,オフシーズンには,機材の稼動がいちじるしく低下する傾向は否めない。航空機のアイドル・アワーの解消は,そのまま事業者の経営改善につながるものであり,企業合理化方策の第一着手として,オフ・シーズンの克服,作業需要の通年平均化,そのための新規事業分野の開拓,新機種採用の研究等は,この事業界のさし当つての課題であると思われる。


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