第4節 利用航空運送事業
現在,航空法により,利用航空運送事業の経営について免許を受けているものは,日本人国際線事業者5社,同国内線事業者12社(このうち1社は,国際線を兼営している)許可を受けているものは,外国人国際線事業者6社をかぞえ,それぞれの特色をもつて営業活動を行なつている。
これら事業者の39年度の貨物輸送実績をみると,まず,国際線利用航空運送事業者の取り扱つた貨物(いわゆる混載貨物)は,重量において約3,041トンを示し,38年度に比較し31%の増加となつた。
これは,わが国発の総航空貨物重量の25%に当る。また,これの混載仕立をみると,荷主より受託した1件当り平均重量は約17kg,これを仕立てた1件当り平均重量は200kgとなつている。
この国際線混載貨物実績のうち,73%は北米向貨物であるので,これについてみると,重量において2,232トンであつて,38年度に比較し約15%の増加となつた。
これは北米向総航空貨物重量の約40%に当る。また,この方面の貨物の荷主より受託した1件当り平均重量は約23kg,混載として仕立てた平均重量は約402kgとなつており,これら1件当り平均重量も38年度に比べ若干の増加となつている。
つぎに,38年度の国内線利用航空運送事業者の取り扱つた混載貨物実績をみると,重量において約11.180トンであつて,38年度に比較し約35%の増加を示した。
これは国内線総航空貨物重量の47%に当る。
この国内線混載貨物の約92%に当る幹線混載貨物は38年度に比較し,約31%の増加を示し,ローカル混載貨物は約216%と相当の伸びを示した。また,国内混載貨物の荷主より受託した1件当り平均重量は約9kg,混載貨物として仕立てた,1件当り平均重量は約162kgとなつている。
以上が39年度の混載貨物輸送実績の概況であるが,これからみて次のようなことがうかがわれる。
まず,国際線についてみると総航空貨物重量の伸びに対応して混載貨物総重量も順調な伸びを示したのであるが,方面別の内容は,北米向が総航空貨物重量の増加ほど混載貨物の伸びがなかつたため,混載貨物の総貨物量に占めるシェアーは,38年度の50%から40%に低下したのに対し,これ以外のヨーロッパその他方面の混載貨物のシェアーが38年度の9%から12%に上昇した。この北米向混載貨物のシェアーの低下の大きな原因は,39年5月より航空会社が実施したラジオ,テレビ等の電気製品,ミシン及び製靴機械,光学製品等の3品目の特定品目賃率の導入によるものと考えられる。
この特定品目賃率は,航空会社としては貨物スペースの増加に対応し,代表的出荷貨物の新規需要の開発策の一環として考えたものであるが,一方この種賃率適用の最低重量が200kgであり,またこれ以上の割引段階のない賃率の設定により,これら貨物が混載市場から航空会社直送市場に移行する,と利用航空運送事業者から異論の出たものであつたが輸出促進の見地から実施されるに至つたものである。この結果は前にも述べたとおり混載貨物のシェアーの若干の低下を招いたものであるが,これを上回る混載貨物の増加があり,混載貨物量は全体として15%の増となつたのである。
つぎに国内線貨物についてその特色をみると,総貨物重量は39年度も対前年比約30%の増加を続け,航空運送が旅客の交通機関としてのみならず,貨物の輸送機関として公衆にその利用価値を認識されてきていることがうかがわれる。特に混載貨物についても総貨物量を上回る増加をみせ,そのシェアーも次第に高まつてきており,更に40年2月より一部航空会社の国内貨物空港集中化により市内の受付は,利用航空運送事業者の取り扱うことになり,今後も混載貨物の増加は続くものと考えられる。
今後の問題として,国際航空貨物の増加は,なお相当のものと考えられるがこれを上回る貨物スペースの増加も予想され,いかにして積極的に航空貨物の開発に努めるかが大きな課題であり,特にこれにからむ運賃体系等の問題において,荷主,航空会社,利用航空運送事業者3者の調和のとれた方策について充分な検討が必要であると考える。
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