第1部 昭和40年度の運輸経済

  昭和40年度のわが国の経済は,40年1月,つづいて同年2月,6月と3回にわたり公定歩合引下げが行なわれ,金融緩和期にあったにもかかわらず 〔1−1−1図〕の景気動向指数でみるとおり,低調のまま推移し,40年末にいたってようやく回復を示しはじめるという状況であった。
  運輸経済についても同様で,37年秋から上昇をつづけていた輸送活動指数は,39年7月を山として停滞し,40年に入ってからも横ばいの状態がつづいた。40年後半から上昇に転じたが,40年度前半の停滞がひびいて40年度における輸送活動指数は223.7で39年度に比べて11.1%の伸びにとどまった。この伸び率は, 〔1−1−2図〕に示すとおり,32,33年度とならぶ低い水準にある。

  輸送活動を 〔1−1−3図〕に示す各分野に分けてみると,世界貿易の発展,国際交流の活発化に対応したわが国外航商船隊の拡充,国際航空網の整備を反映して,国際輸送活動指数は,このところ毎年十数パーセントの伸びをつづけており,40年度も19.9%の伸びがあったのに対して,国内輸送活動指数は,30年度以降では,33年度につぐ低い伸び率である10.5%にとどまるという結果に終った。国内でも旅客輸送活動指数は39年度に比べて16,5%の伸びを示したが,貨物輸送活動指数の方は国内の生産活動の停滞を反映して1.8%の伸びというこれまでにみられない沈滞ぶりであった。

  最近における不況の年である33年度と37年度には,鉱工業生産指数の伸び率の大幅な低下に対して,国内貨物輸送活動指数の伸び率は低下したとはいえ,かなり高い水準を維持していた。ところが今回の不況期(40年度)には鉱工業生産活動の停滞に対応して国内貨物輸送活動も,大きく伸び率を低下させている。
  今回の不況期における国内貨物輸送の特色は,自動車輸送,とくに自家用自動車輸送が,他の輸送機関とならんではじめて後退を経験したことである。これまで不況期においても,自動車輸送が停滞しなかったのは,自動軍がわが国においてもようやく普及しはじめた時期にあたっていたためであり,自動車の保有状態がかなり高い水準に達していた今回の不況期には,自動車輸送についても他の輸送機関と同様,景気の影響がはっきりみられるようになった。