第3章 船舶の自動化に伴う海上労働

  技術革新の導入は船内労働に質および量ともに大きな変化を与えている。すなわち,船舶の自動化は乗組員の労働の軽減と,運航の安全化とともに、乗組員数を減少させて船員の需給問題の緩和と船員費の節減による運航経済に貢献するものであり,当然船内労働に変化を与えるものである。
  40年度においても新造船の外航船および大型内航船には自動化装置が積極的に取り入れられた。これらの変化に対応した海技行政を促進するため,38年以来海技資格制度,船員教育制度および,海技従事者国家試験制度等,海技制度のあり方について総合的な検討が行なわれているが,40年度も海技審議会において,審議が進められた。
  運輸大臣の諮問第1号「船舶の自動化および近代化に対応する今後の海技に関する制度について」については,40年6月,「今後の海技資格制度の基本構想」として中間答申が行なわれた。この答申は,将来のビジョンにつき第1案として,「船長及び船舶士の2種類の海技資格」,第2案として「船長,船舶士及び機関管理士の3種類の海技資格」の両案を併記し、周辺の開発事項として,@舶用機器の信頼性向上,A陸上サービス機構の確立,B港湾及び航路補助施設の整備,C責任の所在及び船員の責任範囲の明確化,D人間工学的検討の促進,E安全,疲労,衛生などの労働科学的検討の促進,F労働及び生活条件の改善,G既成船員に不安を与え)ない移行対策の実施を要望している。船橋総括制御方式の実現に対応するこの答申の示す海技制度の方向づけが実現されるためには,自働化の開発促進とこれに対応する船内就労体制の実証実験が必要である。そのため,運輸省に,40年8月実験船調査委員会が設けられ,実験船の基本構想の検討が行なわれた。さし当り,練習船と実験船を兼ね,機器信頼性,人間工学的及び労働科学的検討の実証,実験を中心とし,5,000総トン級,定員180名の新船の建造を推進することとなった。
  諮問第1号と同時に諮問第2号「現行の船員教育制度につき,早急にとるべき措置について」に関しては,海員学校教育,再教育,商船高校教育,内航船員教育等について,審議されてきた。これらのうち,海員学校についてば,門司海員学校に引きつづき,40年度には溝水海員学校に2年制の高等科を設置した。41年度には児島海員学校にも高等科を設置することとなつており,43年までには全海員学校の本科を高等科に切りかえることとなつている。
  商船高校については,これを高等専門学校に準拠させるのが妥当であると答申され,文部大臣にすでに建議されている。これに基き同省は初等中等教育局に研究会を設け検討した結果,商船高校教育の速やかな改善を認め,40年6月「商船高等専門学校の基準の調査研究に関する会議」を設け検討中である。