2 自動車の排気ガス


  自動車の激増及びその大都市集中による交通渋滞の結果,加速,減速の繰り返しにより多量に排出される有害ガスが大気汚染源となり,大きな社会問題としてとりあげられ,道路の改善――立体交叉――等により交通の円滑化による交通渋滞の解消及び排気有害ガス排出量の規制が要望されている。すでに規制を実施している米国のカリフォルニアにおいては,排気ガス中に含まれている炭化水素が太陽照射により光化学反応をおこし,スモッグを形成して,目を刺激する等の障害があるため炭化水素が規制されているが,わが国においては,炭化水素によるこのような現象はなく,交通渋滞に伴なう一酸化炭素による人体影響があらわれており,これが対策として昭和41年9月からの新型車および42年秋からの新造車について,排気ガス中の一酸化炭素濃度を3%以下に規制することとしている。排気有害ガスの防止方法としては,エンジン設計によるものおよびアフターバーナー方式等の補助装置によるものがあり,米国において初期にアフターバーナー方式等の補助装置による防止方法が採用されていたが,耐久性等の点から実用に適しないため,最近にいたり抜本的方法としてエンジンの設計をまめる方法がとられており,わが国自動車メーカーに対しでも,新たに有害ガス測定装置等の研究施設を設置せしめ,エンジン設計による方法で解決をはかつている。
  また,現在使用されている自動車について,点検整備上の基礎資料を得るため,41年度に東京,大阪において,一般道路を走行している自動車の排気ガス中の有害成分を測定し,定期点検整備の具体的基準を定め,その実施について強力な指導を行ない大気汚染の防止に努める。
  しかしながら,適切な点検整備を実施するためには,排気ガス中の有害成分を容易に測定できる安価な測定装置が必要である。そのため,40年度において排気カス中の未燃焼ガス量を測定する装置を開発したが,さらに41年度において,一酸化炭素のみを連続測定できる測定器の開発を促進する。自動車の排気有害ガス対策は全く新らしい技術分野であり,未解決な点が多く,測定方法,基準等について,諸外国の情勢を十分把握し,当省研究所の充実強化をはかり,民間における研究開発体制を督励促進し,もつて,自動車の排気ガスによる大気汚染の防止をはかる考えである。


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