2 わが国の海外旅行収支
昭和40年のわが国の受取は,来訪外客の対前年伸び率が4%と比較的低位にとどまつたにもかかわらず,対前年比15%,933万ドル増の7,132万ドルと順調に増加した。また,来訪外客1人当りの平均消費額は195ドルと39年より19ドル増加した。これは1人当り消費額の多いアメリカ人が14%増と順調に増加したこと等による。一方,支払は,出国日本人の対前年伸び率が20%と大幅に増加したが,香港,台湾等の近距離旅行が著しく増加したため,1人当り平均消費額が330ドルと39年より23ドル減少し,総額で,12%,964万ドル増の8,778万ドルとなつた。この結果,収支尻は, 〔IV−14表〕のとおり,赤字幅が前年より31万ドル増加して1,646万ドルとなつた。このように38年以来旅行収支が赤字となつているのは,38年4月の業務渡航の自由化および39年4月の観光渡航の自由化による海外渡航制限の緩和と,国民所得の上昇によつて国民の海外旅行が著しく増加したためである。OECDに加盟したわが国にとつて,渡航制限を強化することは困難であり,また国際交流を増進して国民が国際的視野を高めるうえからも,国民の健全な海外旅行を推進することが望ましいので,観光渡航における年1回500ドルの制限は41年1月1日をもつて年1回の制限がはずされ,1回につき500ドルの制限のみとなり今後も漸次緩和されることとなろう。そこで,国民の海外渡航は今後も増加すると予想され,旅行収支の赤字幅を増大させる要因になると思われる。したがつて旅行収支の改善を図るためには外客の来訪を促進するための海外観光宣伝その他の外客誘致方策のいつそうの強化を図る必要があろう。
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つぎに39年の受取を地域別にみると, 〔IV−15表〕のとおり,アメリカおよびカナダ(その大部分はアメリカ)からの受取が,71%を占め,ヨーロッパのOECD加盟国からの受取13%を大きく引き離している。しかし,39年は38年に比しアメリカおよびカナダからの入国外客数の割合が減少したのに伴い,アメリカおよびカナダからの受取外貨の割合が減少している。また,1人当り消費額を地域別にみると,アメリカおよびカナダの消費額が他の地域の2倍以上となつている。
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