2 自動車の排気ガス


  自動車の激増およびその大都市集中による交通渋滞の結果,加速減速の繰り返しにより多量に排出される有害ガスが大気汚染源になり,大きな社会問題となつている。
  交通がふくそうし,渋滞を起こすところでは, 〔I−(II)−33図〕のようにその付近の大気中の一酸化炭素の濃度が大きくなつている。このことは,発進加速時に有害ガスの濃度が大きく,また,量も多いことを示している。
  ガソリン自動車の排気ガス中の有害成分は 〔I−(II)−34図〕のようになつており,主な有害ガス成分として酸化炭素,炭化水素,窒素化合物があげられる。
  このうち,わが国では,昭和41年9月から新型自動車について人体に最も有害な成分である一酸化炭素の濃度を3%以下に規制している。
  排気有害ガスの防止方法としては,エンジン設計によるものおよびアフターバーナー方式等の補助装置によるものがあるが,後者の場合,耐久性等の点から実用に適しないため,最近では,前者による方法で解決を図られつつあるが,自動車メーカーに対して有害ガス測定装置等の研究施設を充実して,排気ガス防止方式が早急に確立されるように指導している。使用車両に対しては,適切な点検整備を実施することによつて汚染防止を図られねばならないが,具体的な整備基準を作成するため,一般道路走行車の排気ガスの実態調査及び走行キロによる排気ガス状況の変化の追跡調査を実施している。
  また,適切な点検整備を実施するためには,排気ガス中の有害成分を容易に測定できる安価な測定装置が必要である。そのため,40年度には排気ガス中の未燃焼ガス量を測定する装置を,さらに41年度には一酸化炭素のみを連続測定できる測定器を開発した。
  自動車の排気有害ガス対策は全く新らしい技術分野であり,未解決な点が多く,測定方法,基準等について,諸外国の情勢を把握する必要がある。
  このため,昭和42年度に本省に公害関係の増員が2名,東京陸運局に事故公害課の新設が認められ,公害防止行政を強化するとともに当省付属研究所の公害防止研究体制の拡充強化を図つた。さらに,民間における研究開発体制を督励促進し,もつて,自動車の排気ガスによる大気汚染の防止を図る考えである。


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