3 経営状況
過去3年間の経営状況の推移をみるため,95の主要な定期航路事業者の航路損益を集計したものが 〔II−(I)−21表〕である。これによれば,収益/費用の比率は38年度1.054,39年度0.992,40年度1.039と40年度において若干収支率の改善をみたことがわかる。
運賃改訂は,40年に入つてから必要やむをえない理由のあるものについて認められることとなつたが,40年および41年中においても依然として諸物価の高騰が続いたこと,とくに船員,陸員の人件費は41年春に大幅な引上げをみたこと,船舶の安全運航を確保するため老朽船の代替建造が進み減価償却費,利子などの固定費が増大したこと,船客傷害保険金額が41年に100万円から150万円に,さらに42年には300万円に引きあげられ,旅客費が増加したこと等を勘案すると,40年および41年中の運賃改訂による増収分はほとんど人件費等諸物価の高騰に吸収されたものとみられる。
まず収入の面では,39年から始まつた景気下降が40年に入つて一段と厳しくなり,旅客航路事業に対する需要は軟調を示し,一方,フェリーボートの便利さとその航路網の整備から,フェリーボートへ転移する傾向がみられ,一部の航路で運賃の改訂が行なわれたにもかかわらず旅客運賃収入は,39年度に比較して0.3%の減少,手小荷物運賃収入は,22.1%の大幅な減少となつている。
貨物運賃収入については,40年度には28.3%の増加をみ,一方,航送運賃収入を含むその他収入は,フェリー需要の大幅な伸びを反映して,17.2%の伸びを示している。
しかしながら,貨物運賃収入および航送運賃収入の総収入に占める割合はまだそれほど高くないため,総体としての収入の伸びは3.4%にとどまつた。
これに対して支出面では,営業費用の伸び(40年/38年=1.134)よりも運航費用の伸び(40年/38年=1.138)が大きく,なかでも船員費の伸び(40年/38年=1.205)が著しい。常業費用では,船舶の代替建造の進展を反映して利子および減価償却費が,また,陸員人件費が増大を反映して店費が伸びていることが目立つている。
つぎに,国内旅客航路の損益を就航船の種類あるいは需要の質の相違によつて,一般航路,フェリー航路,水中翼船航路,通船,遊覧の5種に分けてその収支率をみると 〔II−(I)−22表〕のとおりである。
すなわち,一般航路は,39年度のそれとほとんど変らず,わずかに0.003の改善をみているにすぎない。フェリー航路は,1.033と39年の1.087に比較して低下しているが,それでも他の業種に比較して収益性が高いといえる。これは需要の堅調により需給比率運航効率が高いことがその理由である。水中翼船航路は,0.495ともつとも悪い状態にあるが,瀬戸内海地域の航路において,在来船と併用して欠航時の旅客の利便を図つているところでは,高い経済性を発揮している例もある。
通船は,6大港以外においては,港湾整備の進展によつて本船の接岸比率が高まり,その結果経営の悪化に苦しんでいる事業者も多い。
国内旅客航路事業を経営主体によつて分類すると,株式会社等42.2%,個人経営42.9%,公共団体10.4%,協同組合等3.5%,日本道路公団その他1.0%と依然として個人経営の占める比率が高い。また,株式会社等であつても資本金5,000万円以上の大企業はわずか39社にすぎず,大部分資本金10万〜万500万円程度の零細企業である。
旅客輸送の安全を確保し旅客サービスの向上を図るためには,経営の安定が必要であるが,このためまず個人事業者,または,小資本の法人といつた零細企業の近代化について指導を強化し,さらに競合航路における調整,事業の集約統合を推進し,経費の節減,経営の合理化を促進し,企業基盤の強化を図ることが必要である。
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