第1部 昭和42年度の運輸経済

  昭和42年度のわが国経済は,41年度に引き続き国内経済の成長が続くなかで,国際収支の悪化した年であつた。このため,7月末から9月へかけて,国債発行額の減額公定歩合の引き上げ,公共事業費を中心とする財政支出の繰延べ等の景気調整策があいついで行なわれた。その結果,世界景気の回復と景気調整効果の浸透により,国際収支は43年に入つて著しく改善された。一方国内経済は景気調整後その増勢がわずかに鈍化の傾向を示したものの民間の設備投資の意欲が引き続き強く,生産
  42年度運輸経済は,このような情勢のなかで順調な伸びを示し,総合輸送活動指数は346.8(昭和35年=100)と前年度に比べて24.7%の増加となつた。このうち国内輸送は前年度と同様,貨物輸送22.7%増,旅客輸送26.9%増と大幅に増加活動も予想以上の高水準に推移した。し,これには特に自動車輸送の増加が著しく貢献している。また,国際輸送活動指数は前年度に比べて20.2%の伸びで,41年度の19.0%の伸びよりわずかに上回つた。
  昭和42年9月に始まつた景気引き締めの影響を前回調整期,いわゆる40年不況(引き締め開始時39年3月),前々回調整期(同36年7月)と比較してみると,引き締め開始後の景気動向は,前回,前々回とも約半年後には下向きに転じているが,今回はその時期に転換のきざしがみられなかつた。輸送活動は,景気動向と同様,前回,前々回とも,引き締め開始後やや増勢鈍化の傾向がみられたが,今回は依然,引き締め開始前の増勢を保ち続けた。