第1章 世界の観光

  1967年,世界各国が観光客からえた外貨収入の総額は, 〔IV−1表〕に示すとおり,前年を8%上回る141億ドルに達した。

  世界の観光往来は,同表にみられるように年々目覚ましい発展を続けており,今日では,先進国,後進国を問わず,一国の国際収支に重要な影響を及ぼす要素の一つとなつている。特に,後進国においては観光事業を外貨獲得の有効かつ最も手つ取り早い方法として重視しており,また一方,米英を始めとする先進諸国は,その観光収支の経常的な赤字状態を改善するため,種々の努力を尽くしている。
  昨年の特筆すべき事項としては,国際連合による「国際観光年-1967年」の指定である。これは観光が教育,文化,経済,社会の各分野で果たしている重要な役割および世界平和の達成への寄与を重視して指定されたものであるが,その際,国際連合から出された勧告を受けて,世界各国でさまざまな行事および施策が実施された。特に東欧諸国および後進国を中心に査証の廃止,通関手続の簡素化等入出国手続の容易化が推進された。
  つぎに,1966年における世界各地の観光客の受入れ状況を見ると, 〔IV−2表〕の示すとおり,各地域とも平均した伸びを示している。主要国の観光収支の状況は 〔IV−3表〕に示すとおりで,ポルトガル,ギリシアの観光収入の増加が顕著である。差引観光収支面では,米国の赤字の増加率が2%と低率に止まつたこと,西ドイツ,スエーデン,オランダおよびわが国の赤字の増大が目立つている。

  太平洋地域への観光客の来訪状況は, 〔IV−4表〕に示すとおり,年率約15%の伸びを続けており,他地域と比較するときわめて順調に発展を続けている。しかし,その絶対数においては,地域的悪条件と域内往来が少ないため,全世界の観光客の2%を受入れているにすぎない。本地域への主要観光送出し市場は,北米と英国,それにわが国であるが,1966年11月の英国の旅行用外貨割当制限の実施および本年実施が予定されている米国の国外行き航空券への5%の課税措置およびみやげ品免税点の引下げ措置により,本地域への来訪外客数および観光収入の面にある程度の影響があらわれることは避けられない情勢にある。しかしながら,世界の航空旅客は急速に増大しており,かつ,1970年頃に予定されいるジャンボ・ジェット機の就航に備えて各国とも空港諸施設の改善,宿泊施設の増強に力を入れているほか,他地域に比較して遅れている出入国手続の容易化のための努力を続けている。