1 鉄道車両工業


  鉄道車両工業は,鉄道車両製造業,同部分品製造業及び鉄道車両修理業に分かれている。これらのうち,鉄道車両製造業は他の2種を兼ねているものが多い。鉄道車両製造業者は総数20社,うち専業メーカー(社内生産額50%以上)4社,兼業メーカー(社内生産額50%未満)16社からなり,その車両関係の総従業員数は,約27,000人に及んでいる。しかし専業メーカーとはいえ,現在,鉄道車両のみを生産している工場は一つもなく,多かれ少なかれ他機種の生産を行なつている。そのおもな機種は,鉄骨橋梁,ボイラー,建設機械,建築用サッシドア,特殊自動車などで,車両生産と関連の深い分野が多く,また,一部には海外企業との技術提携により進出しているものもある。
  鉄道車両製造業は,従来から国鉄が総需要量の大半を占めており,国鉄の財政状況が業界に与える影響は大きい。このため鉄道車両製造業は,積極的に輸出の方向へ努力を行なつているが,輸出先が発展途上国の政府がほとんどで,これらの国は,過大な開発計画の強行などのために慢性的な外貨不足に悩んでおり,またその購入方法についても技術面よりむしろ価格や支払条件などの問題が多い。
  このような情勢の下に過剩設備に悩む鉄道車両メーカーはきそつて兼業部門への強化拡充に取組み,これまでの国鉄依存の姿から脱皮しようとしている。これを象徴するように昭和42年度に東急車両と帝国車両の合併が決定し,抜本的な生産体制の合理化をはかると同時に,特殊部門を拡大して企業の体質を強化する方針を打ち出した。
  すでに鉄道車両は,資本の自画化の第1ラウンドで,42年度,50%業種に指定され,国際化時代に対処するため,日本鉄道車両工業協会に資本自由化対策委員会を結成し,企業の体質改善,業界の体制整備を推進している。
  また,42年6月の閣議で,第3次機械工業振興臨時措置法に基づく基本計画の再検討と強化が必要であることが決定され,鉄道車両製造業は,45年度目標に企業の合併,品種の専門化等を推進することに決定した。
  以上のような環境にある鉄道車両工業界は,重要な転換期にさしかかつてきたといえよう。


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