3 新東京国際空港の建設


  新東京国際空港は,羽田の現東京国際空港が将来における航空輸送需要の急激な増大や超音速旅客機の就航に象徴されるような航空機の進歩発展に対処できないことにかんがみ,その建設が計画されたものである。欧米主要国においては,航空機の進歩発展に対処して,着々と新空港の建設あるいは既存空港の拡張を行なつたり,計画を立てている状勢であり,わが国においても新空港の建設の時機を失すれば,世界の国際幹線の要衝である地位を失い,わが国の政治,経済,文化は大きな影響をうけるおそれがあるので,新空港のすみやかな建設がどうしても必要となつたのである。
  新空港の建設にあたり,第一の問題はその位置の決定である。このため政府では,数年間にわたつて多数の候補地について詳細な調査検討を行なつたが,昭和41年7月4日の閣議決定をもつて,千葉県成田市三里塚地区にその位置を決定した。
  次に,新空港の規模および能力についてみると,新空港の敷地総面積は約1,065ヘクタールで,現東京国際空港の約3倍に及んでいる。これを世界の主要空港の敷地面積と比較してみると 〔III−22図〕にみられるように,ぼう大な国内航空輸送需要を有するアメリカ合衆国の主要空港にははるかに及ばないが,ヨーロッパの主要空港とはほぼ同程度の面積を有している。日本においては,アメリカのようにぼう大な国内航空輸送需要は予想されないから現在わが国で計画すべき国際空港の規模としては適切なものといえよう。また,新空港の滑走路としては4,000メートルおよび2,500メートルの長さの平行滑走路並びにこれらと交差する3,200メートルの長さの横風用滑走路が計画されている。4,000メートルの長さの滑走路は,現在の世界の主要空港の滑走路あるいは現在計画されている滑走路と比較してそん色なく,また,近い将来就航の予想される超大型旅客機(ジャンボ・ジェット)や超音速旅客機(SST)にも十分対処でき,世界の大勢に遅れをとらないものと言える。また,この新空港は昭和60年以降に予想される国際旅客年間1,600万人以上,国際貨物年間120万トン以上の航空輸送需要に対処できるよう計画されている。

  ところで,新空港の建設は,新東京国際空港公団が実施することとなつているが,現在の最大の問題は,用地の取得である。新空港の用地は, 〔III−23図〕にみられるように,国有地243ヘクタール(23%),公有地152ヘクタール(14%),民有地670ヘクタール(63%から成つているが,このうち特に問題となるのは,民有地の買収である。民有地内の地権者は,同じく 〔III−23図〕にみられるように,大部分が4つの条件賛成派の団体のいずれかに属しており,これらの団体との用地買収交渉を成立させることが用地買収のヤマ場と考えられた。このため空港公団は,条件賛成派4団体との交渉に全力をそそぎ,43年4月6日には4団体と土地売渡しに関する覚え書を結ぶに至つた。これによれば,土地の買収価格は,畑反当り140万円となつている。その結果民有地の約88%の面積を買収できる見とおしとなつた。一方反対派は,約80ヘクタール(民有地の12%)を占めているにすぎないが,航空機騒音問題等から空港設置に反対する周辺住民と共同で一里塚芝山連合新国際空港設置反対同盟を結成して反対運動を行なつている。本年に入つてからは,これに三派系全学連が加つて暴力を伴つた激しい実力行使が行なわれ,しばしば世論の批判をあびた。しかし,現在なお空港用地内における実力行使は行なわれており,空港公団の測量調査はしばしばはげしい妨害をうけている。これに対し,政府は反対派に対して話合いを呼びかける一方,敷地内住民に対しては代替地を提供し,離職者対策を行なうとともに,帯地周辺に対し手厚い騒音対策を実施するなどの地元対策を十分に行なうこととしている。このため,政府は4年7月4日位置決定の際,道路,鉄道,用排水,新都市計画その地地元住民対策について閣議決定を行なつたが,さらにその実施を推進するため,42年7月運輸大臣を本部長とする新東京国際空港建設実施本部を設けた。その後同本部を中心に地元対策の具体化,すなわち新空港関連事業の事業計画および事業費の決定をはかつてきた。その結果,同年12月には事業計画を確定し,本年2月および8月には,事業費の確定を行ない,さらにその実施を実際上可能とするため,地方財政の実情に応じ必要ならば地方負担軽減のための特例法の制定を行なうよう検討をすすめている。このような一連の政策により,新空港の用地問題については,明るい見とおしをえており,今後は1日も早く工事に着手するよう一層の努力を払うつもりである。


表紙へ戻る 次へ進む