第2節 最近5か年のわが国の気象状況


  この5か年間で,特筆すべきは昭和38年に北陸地方を襲つた“昭和38年1月豪雪"であろう。これは欧州や北米にもおしよせた北半球規模の大寒波であつた。
  戦後は,日本の気象現象も,大気大循環の一環としてみられるのが一つの特色である。
  38年は,豪雪につづいて太平洋岸の前線が例年より早く活溌化し,梅雨期の異常な長雨として西日本を中心に農作物に大きな被害も与えた。
  39年は,太陽黒点活動の極小期で,夏季には北冷西暑の天候となり,北海道は8年ぶりの凶冷に見舞われた。夏のこの様な傾向ば,昭和41年まで3か年もつづいた。
  42年は,ここ数年来の全国的な寒冬にはじまり,低湿を懸念されていた北海道の夏の気温は,平年並にちかく,全国的に米収高は史上最高であつた。
  近年の特徴で,夏から秋にかけて中国大陸から東にのびる強い高圧帯はしばしば,西日本に干ばつをもたらし,42年の西日本の水不足は,まことに深刻であつた。
  さらに,最近の傾向として,梅雨末期や夏の豪雨は,日本海側に集中し41年,42年と復旧を待たずに2年つづきで決壊した新潟県加治川の悲惨な例がある。また,台風は四国から関東にかけて上陸する頑固が多い。
  この5か年間には,戦後につづいた暖冬傾向は弱まり,変わわつつある気候変動期の中で,多様な異常気象がひん発し,日本各地で高温の記録や豪雪,干ばつなど気象の新記録値を観測したことは大きな特徴であろう。

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