1 収支の概況


  昭和43年度の国鉄の営業成績は 〔I−(I)−21表〕のとおり,事業純損失1,344億円を計上し,これで39年度以降5年連続の赤字決算となり,その累計は4,416億円となつた。この原因としては,生産性と無関係に人件費が急増したこと,貨物収入が予想外に少なかつたこと,並びに債務の累積に伴う利子及び債務取扱諸費の増大が考えられる。

(1) 収入

  旅客収入は,普通運賃収入が新幹線をはじめとする幹線輸送の好成績を反映して前年度にひきつづき好調であつたのに加え,4月の定期運賃改訂により,定期運賃収入も大幅に増加したため,9%の増収となり,営業収入の増加に対する寄与率は86%であつた。
  これに対して,貨物収入は,コンテナの普及により小口扱運賃収入が急増し続けているにもかかわらず,車扱運賃収入が不調であつたため,前年度の伸びを維持することができず,1%の増収にとどまつた。

(2) 経費

  動力費,減価償却費といつた物件費の増加は低率となつてきているが,人件費,業務費,利子及債務取扱諸費の増加が著るしい。特に,人件費は,前年度にくらべて12%の増加となり,営業経費の増加に対する人件費の寄与率は47%であつた。人件費総額は,全営業経費の41%,営業収入の47%に達することとなつた。また,債務の増大に伴い,利子及債務取扱諸費も,前年度より18%も増加し,総額1,195億円と,営業経費の11%を占めるに至つた。

(3) 東海道新幹線の営業収支

  43年度における東海道新幹線の営業収入は1,270億円であり,国鉄の全営業収入の14%を占めているにもかかわらず,その営業経費(利子及債務取扱諸費,減価償却費等も含む。)は764億円であり,全営業経費の7%にすぎず,506億円の利益を計上した。特に,人件費はわずか60億円にすぎなかつた。


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